CX
2022/11/16

自然栽培ではなく、意思を持ってファンを育む。「Fan Farming CX」で築くファンとの幸せな関係(後編)

INDEX

従来のファンマーケティングは、どちらかと言えば既存のファンをとことん重視するという考え方でした。しかし、既存のファンだけでは、将来的な裾野の広がりは、なかなか望みにくいかもしれません。「Fan Farming CX」というソリューションでは、熱量の高いファンについて調査することで、どのようにしてファンが生まれるのか、その傾向を分析し、既存ファンのみならず、ポテンシャルファンを育てることにつなげていきます。そして、ポテンシャルファンを企業やブランドを支える“パートナー”になり得る熱量の高いパワーファンへと育んでいくことで、企業やブランドもともに成長していくことができるのです。

株式会社電通デジタル CX戦略プランニング事業部 シニアプランナー 廣田明子氏に「Fan Farming CX」についてインタビューした後編では、「Fan Farming CX」が与えるブランドや企業への影響についても話を聞きました。

ファンと向き合うことで、ブランドの価値規定も変わる

Q.「Fan Farming CX」が今のような形になっていったのはどういう経緯があったのでしょうか。これを推進していくにあたり、手応えを感じたのはどんなケースでしょう。

廣田:例えば、あるロングセラーブランドの食品のケースでは、ファンマーケティングの重要性はご認識いただいていたものの、具体的に何をすべきか見えていない状態でした。そこで、ブランドのファンと向き合うことで、顧客体験全体の考え方、ブランドの在り方をもう一度考え直すところからプロジェクトに着手しました。

こうしてファンと向き合うことで、ブランドの価値規定も変わり、それによってカスタマージャーニーの出発点と終点、必要な顧客体験も変わります。また、ファンとの関係性を育む目線で考えると、投資すべきターゲットも変わってきます。「今まで重要視していなかったけれど、実はこの人たちに手を掛けなければいけなかったんだ」という層が見えてきて、マーケティング戦略も変わりました。こうした手応えを得て、「Fan Farming CX」をフレーム化していきました。

Q.ただ「ファンを大事にしましょう」というのではなく、ファン目線を捉えることで商品の価値規定から見直していくんですね。ロングセラー商品だからこそ、それは刺激的なのかもしれません。その時は、実際にどのようなマーケティングの転換があったのでしょうか。

廣田:前述したブランドは、ファンを「ライフで育む」という視点が重要でした。幼少期の原体験にそのブランドにまつわる幸せな記憶があると、大人になってからもそのブランドの商品を特別な愛着を持って購入し、ファンになりやすいことが分かったのです。そこで、通常の販促活動に加えて、ファンを育むための原体験デザインにも取り組むことにしました。また、大人になってから再度その商品を手に取るタイミングも大切なターゲットだと考え、こうした人たちにどんな体験が有効かを考えていきました。

Q.現状では、どのような商品、どのようなクライアントからの引き合いが多いのでしょうか。

廣田:このソリューションを提供し始めたころは、これまでファンマーケティングに取り組んでこなかったブランド、日用消費財のような商品にファンを作りたいというお問い合わせが多かったですね。顧客データをしっかり把握しているデジタル商材に比べ、日用消費財はファンが生まれにくく、ファンマーケティングに課題意識を抱いているところが多いように思います。いざ取り組もうとしても着手の仕方が分からない、かと言ってCRM(顧客関係管理)とも距離がありすぎるといった企業やブランドにとって、「Fan Farming CX」は自分ごと化しやすかったのかもしれません。中でも多いのが、「ファンコミュニティを創造したい」「顧客との共創活動に取り組みたい」というクライアントからの相談でした。現状ではBtoC企業からのご相談がメインですが、BtoB企業にも応用できると考えています。

Q.相談を受ける際は、「ファンマーケティングに初めて挑戦したい」というケースと、「一度はチャレンジしたけれどうまくいかなかった」というケースでは、どちらが多いのでしょうか。

廣田:両ケースあります。「初めて挑戦するけれど、うまく行かないケースも多いと聞いている。どうすればいいでしょう」と相談をいただくこともあれば、「一度挑戦したときにはつまずいてしまったけれど、もう一度立て直したい」というクライアントも。他には、「何かやりたいけれど、何をすればいいか分からない」という漠然とした段階からご相談いただくこともあります。

また、現状ではどちらかと言うと長くブランドを続けてこられた企業や、既に多くの顧客を持っている企業からのお話が多いですが、最近ではブランド歴の浅い企業からご相談をいただくケースもあります。まだ新しいブランドを支持してくれそうなファンを“ファン心発展途上層”と呼び、その人たちをいかにブランドと一緒に成長させていくパートナーにしていくのかという観点で、ご支援をさせていただいています。

羅針盤となる基本戦略の策定が、ファンを育む第一歩

Q.一度ファンマーケティングにチャレンジしたけれどうまくいかなかったというケースでは、どんなところでつまずくことが多かったのでしょう。

株式会社電通デジタル 廣田 明子氏
廣田:つまずきの石ころは、大きく2つあります。まず、コミュニティを創出するための羅針盤となる基本方針がしっかり策定されていないこと。ファン育成戦略を規定するためには、ファンをじっくり見て深くリサーチする必要があります。でも、ふたを開けてみると、そこまでよく見ていない企業が多いようです。そこをおろそかにしたまま、何か施策に取り組んでも、運用コストやリソースばかりかかり、中途半端な結果に終わってしまいます。

また、ファンを育むのは泥臭い作業です。コミュニティの運用には多大なリソースがかかりますし、ファンミーティングを開催するにも手間暇がかかる上、プロジェクトにファンと同じくらいの熱量を持って接してくれる社員を見つけて、協力を仰がなければなりません。社員側のブランド愛、ファンと触れ合うときのファシリテート技術が備わっていないと、社内リソースが足りず、ファンの育み活動がうまく回っていかないようです。

Q.つまり、ファンを育むには、社員側の熱量も必要ということですか?

廣田:その通りです。私たちは、社員の熱量を高めることを“インターナルファンファーミング”という造語で呼んでいます。羅針盤となる方針を決めるときにも、今後ファンの育成に関わる立場の人たちを巻き込んで一緒に作り上げないと、形骸化した方針書になってしまいます。その企業・ブランドの社員の気持ちを奮い立たせることも重要です。

ある企業の案件に携わったとき、社員の皆さんは「自分たちにファンなんているわけがない」というコンプレックスを抱えていました。でも、ふたを開けてみたら、その企業の魅力を深く理解してくれるコアなファンがいたんです。

表層的なファンではなく、フィルターを掛けてよりコアなファンをよりすぐって見ていくと、いろいろな発見があります。こうしたファンが、潜在的に分かってはいたけれど言語化されていなかったその企業の魅力を見いだしてくれると、社員の自社肯定意識が高まる契機になります。その企業では経営会議でファンの声を共有した結果、大きな反響があり、社員に対してもファンの愛を伝え、社員の愛を着火しようというプロジェクトに発展していきました。

ですから今後は、ファンの声を社内に還元し、社員の愛を深める“インターナルファンファーミング”の支援にも力を入れていきたいと考えています。ファン育成に関わるメンバーのモチベーションが高まれば、ファンを育む自発的なアクションにもつながるはず。まずはクライアントの社内からファンを育んでいけたらと思います。

 


 

新規ファンを増やすだけでなく、社員のエンゲージメント向上にもつながる「Fan Farming CX」。ファンの醸成、コミュニティの創出に課題を抱える企業にとっては、さまざまなヒントが見つかるソリューションです。ファンを育む顧客体験を設計すれば、新たなファンと幸せな関係を築けるのではないでしょうか。

ブランド価値の再規定や企業ファンのコミュニティ構築などのファン育成戦略を支援してきた「Fan Farming CX」のソリューションは、現在も多くの引き合いをいただいています。また、それに限らず、廣田氏は新商品開発支援や統合コミュニケーション戦略の策定支援などを広く手掛けてきました。「Fan Farming CX」はもちろん、ファン育成やコミュニケーション戦略に課題感をお持ちの方はCONTACTよりお気軽にお問い合わせください。

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株式会社電通デジタル

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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