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2022/03/17

サステナビリティ・ネイティブなZ世代。キーワードは「意味」と「透明性」

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1990年代後半から2000年代初頭にかけて生まれた世代は、「Z世代」とも呼ばれ、「新しい当たり前」を象徴する存在として注目を浴びています。いつの時代も、新しい感性や考え方を発信する若者たちは、半歩先の未来を象徴する存在です。「若者の○○離れ」といった論調も見られますが、それは、若者が離れていったと言うよりも、今の若者の価値観に合わなくなり、選ばれなくなったのではないでしょうか。若者のインサイトを捉え損ねると、あらゆる企業活動・ブランドは時代遅れになってしまうかもしれません。

本記事では、「Z世代」が注目を集めた背景をひもとき、彼らはどう新しいのか、そして企業はこれからどう活動していくべきなのかについて、電通若者研究部(※)による知見も踏まえながら、お話しします。

電通若者研究部は、高校生や大学生を中心とした10~20代の実態を調査し、企業や社会が若者とより良い関係を築くために、調査やプロジェクトの企画・実施までを一貫して行う電通内の特命異能ユニットです。クリエーティブ、ストラテジー、デジタルマーケティング、ビジネスデザイン領域など多様な専門性を持つメンバーが在籍しています。私たちが若者と向き合うのは、若者こそ「最初に新しくなる人」であり、社会が未来に向かうヒントを探るためです。

Z世代は、石の上に3年も待てない

Z世代を理解する上で重要なポイントの1つは、世の中に正解がなく、変化が激しいVUCA(Volatility:変動性、Uncertainry:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代であることが挙げられます。Z世代は、経済不安、テロや震災、次々と起こる未曾有の自然災害などをはじめ、急速に進むテクノロジーの進化と隣り合わせに育ってきました。

もう1つ大きな影響を与えたのは、情報大爆発。スマホとともに育ったデジタル・ネイティブなZ世代は、人の処理能力を超えるような膨大な情報量の中で育ちました。彼らにとっての情報とは、自ら探しに行くものではなく、選んで捨てるもの。同じ時間でどれだけ質の良い情報が得られるか、コストパフォーマンスならぬ「タイムパフォーマンス」を重視するようになっています。また、InstagramやTikTokをはじめとするSNSが象徴するように、情報はただ受け取るだけでなく、自ら発信することが当たり前に。Z世代の前の世代であるミレニアル世代(Y世代)を象徴するキーワードの1つだった「KY(=空気読めない)」は、今や過去のものとなったように感じます。

電通若者研究部が実施した「若者まるわかり調査2019」では、どの世代においても「頑張っている姿を人に見られることは、恥ずかしくない」と回答したポイントは、2017年の同調査より高くなっていますが、特に若い世代ほど高い傾向に。Z世代はSNSやYouTubeなどを活用し、自分の努力や個性を周りに発信することに積極的な人が多く、自分が好きなことを仕事にできる機会も増加。合理的な考え方をする一方で、自分の好きなことには全力で取り組む熱さを持っているという傾向も見られます。

また、今は、いわゆる「王道」という道がなくなった時代。その中で成長するZ世代にとっては、貧困や病気のみならず、孤独や不安が生きる上での大きな課題となっています。しかし、そんな孤独や不安が、自分らしい能力・スキルを獲得したいという意欲を増幅させ、一般化された正解よりも、自分だけの正解、すなわち「納得解」を求める機運に拍車を掛けています。だからこそ、「石の上に3年も待てない」と、非合理的な下積みは厭う傾向があります。

これまでの世代と比較すると、Z世代は上述のような特徴を持っています。

サステナビリティ・ネイティブなZ世代は「イミ消費」を重視

Z世代はデジタル・ネイティブであると同時に「サステナビリティ・ネイティブ」。上述の通り、未曾有の自然災害と隣り合わせに育ってきた彼らにとって、サステナビリティは決して「意識が高い」概念ではなく、学校でも習う概念であり、言わば「意識が深い」概念です。

消費の在り方が「モノ消費からコト消費へ」と言われて久しいですが、消費の選択肢が増え、コモディティ化が進む中で、安くて良いものは当たり前になりました。かつて「リーズナブル」という言葉は、単に「価格が安い」という意味合いで使われてきましたが、Z世代にとってリーズナブルとは、ただ安いだけでなく、明確な選択理由(=reason)があるかどうかが重要に。つまり、「イミ消費」です。そのイミの中でも特に重要なのが、地球や環境に対する意思を持っているかどうかです。

アパレル業界では特にその傾向が顕著です。SNSを通じて企業と個人の情報の非対称性が小さくなったことや、ブロックチェーン技術などの活用によってトレーサビリティ(商品の生産から消費までの過程を追跡できること)が高まったことで、原価率や環境負荷、労働環境など、これまでは企業が隠せば見えてこなかった裏の部分まで見えるようになり、企業活動により透明性が求められるように。ファストファッションではなく、サステナブルなファクトがあるかどうかが判断基準の「ファクトファッション」の時代になっています。

「そこに、思想はあるか」が問われる時代へ

企業活動に透明性が求められる今、実態と反することを広告で語る企業や、身の丈を超えた理想を語るブランドは、支持されなくなっていきます。そこで求められるのは、地球や環境に対する意思をはじめ、その企業やブランドならではのユニークでオリジナルな思想です。それは昨今、「ブランドパーパス」とも呼ばれています。

電通では、Z世代へのインタビューなどから見えてくる未来仮説をもとに、企業やブランドの思想づくりをサポートする「フォーサイトプランニング」というメソッドを2021年より提供しています。

そして思想(ブランドパーパス)は、「SAY」するだけでなく、実際に「DO」することが重要です。だからこそ、我々は広告表現開発のみならず、企業の活動開発までお手伝いします。それは、学生に向けた採用アクションや、投資家に向けたIRアクション、生活者に向けたサービス・プロダクトの開発、従業員に向けたインナーアクションなどさまざまな形があります。

 「Z世代」なんて人は、いない。1人ひとりに目を向けるべき

2021年の流行語大賞には「Z世代」がノミネートしました。我々もメディアやクライアントの方々から“Z世代の特徴”を聞かれることが多々あります。私も本記事において、「Z世代」という言葉を便宜上、多用しました。

しかし、調査上のマジョリティを「Z世代」とひとまとめにくくって良いのでしょうか。「Z世代」とラベリングしてしまうのは容易ですが、「Z世代」という名前の人はいません。当然ですが、保守的なZ世代も、リベラルなZ世代もいます。前後の世代との比較や、どういった社会背景のもとで成長してきたのか考察することに意味はありますが、その際には、あくまでも便宜上「世代」で区切っていることに無自覚であってはいけないと思うのです。

マーケティングやクリエーティブに携わる者であれば、あらためて「Z世代」というラベルを剥がして、調査結果では見落とされがちなマイノリティや外れ値にも、1人ひとりの価値観や暮らしがあることを忘れないようにしたいものです。

Z世代の次は、「α(アルファ)世代」と呼ばれるそうです。おそらく遠くない未来、我々は「Z世代とα世代の違い」についても問われることになるでしょう。けれど、そこで無意味な分断を生まないよう、気をつけていかなければなりません。

 

私たちが若者と向き合い続けるのは、いつだって未来は若者から始まるからです。ブランドと若者がより良い関係性を築き、社会が未来に向かうためのヒントを、マイノリティや「n=1」の声にも配慮しながら、これからも注目し続けたいと思います。
もしかすると、これからは「消費」という概念すら旧時代のものになっていくかもしれません。企業が生活者を「消費者」として捉え、マーケティング活動を行うのではなく、サステナブルな未来を実現するための「パートナー」として、企業が生活者から選ばれるための思想や活動づくりをご一緒しませんか。

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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