「事業推進」と「社会課題解決」を両立し、「存続に値する企業」を目指す、「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」という考え方。前編では、目先の売り上げや話題づくりにとらわれず、中長期的な目線をもって責任を果たしていくことが企業に求められていることを、株式会社電通PRコンサルティング サステナブル・トランスフォーメーションセンターに所属する石井裕太氏と横川愛未氏が語りました。
続く後編では、SXを推進するためのアプローチ方法や、マインドセットの部分をより深く掘り下げていきます。
まず現在地を把握することがSX推進の出発点
Q.「SXを進めたいけれど、何をしたらいいか分からない」という企業に対して、共通のアドバイスはありますか?
その上で、社員や社長に対しての「N=1の対話」を重ねて、1人ひとりの具体的な「こうなっていきたい」をしっかりつかみ、データによる「客観的な視点」と、個々の社員が目指したい具体像とのギャップをどう埋めるかを考えます。そこから翻ってみることで、今のアクションを見つめ直したり、軌道修正したり、あるいは足りないと思われる領域があれば、それが新たなアクションを考える入口になります。

Q.「ソーシャルハンティング®︎」という説明がありましたが、「人々の不満をつかむ」というのはユニークなアプローチですね。
もちろんその企業がどんなパーパスを掲げているかはとても大事ですが、一方で具体的に「誰がどのような変化を求めているのか」ということを、私たちはPRマインドをもって見ています。
これからの時代は、企業こそ社会課題解決のメインプレーヤーであるべき
Q.石井さんは、サステナビリティ領域に携わって20年くらいのキャリアを持っています。ざっと振り返って、世の中の変化をどのようにお感じになりますか。横川さんには若い世代の視点から見たサステナビリティ領域のイメージをお聞かせいただけますでしょうか。

Q.前編で「ウオッシュではないかと批判されるリスクもある」というお話がありましたが、やはりこの領域で仕事をするのであれば、「SXの推進を手伝う、と公言したものの、実際のところ何ができているのか」という問いに答えることも必要ではないかとも思われますが、どのように考えていらっしゃるでしょうか。
特に「サステナビリティ」というビッグワードは、いろいろな文脈で語られていますが、いざNPOの人たちと現場に行くと、そこには「N=1」がはっきりと見えます。「こういう社会課題を解決している」のではなく、「この人を助けている」ということが分かる。これこそが、社会課題のど真ん中で頑張っている人たちの現場感なのではないかと思います。決して頭でっかちにならず、「この人がうれしい」という、小さいけれど明確なストーリーが重なることで、壮大なインパクトが生み出されていくのではないかと思います。困っているN=1の人の悩みを、現実的に解決することでしか始まらない、本気でそう思います。
極論ですが、SXのような言葉を使っている間は、漠然とした「誰かのための何か」という思考になってしまう。そうではなく、具体的な「誰の何を解決しているのか」が大事で、N=1の課題解決に企業が本気で取り組むことが全てのスタートラインなのではないかと思います。その「1人の起点」から生み出されたものが、数年後には新しい当たり前になっている、そんな世の中になっていくといいと願っています。

「サステナビリティ」「ダイバーシティ」「SDGs」というと、とても大きなテーマに向き合って、スケールの大きいことをやらなければいけない、と思っている人もいるのではないでしょうか。しかし、今回SXセンターの二人が強調していたのは、「N=1に向き合う」ことの重要さ。「この人を助けている」「この人に喜んでもらえている」という明確なアクションこそ、企業の本気感なのではないか、という話は非常に示唆に富んでいます。
「SXを進めたいけれど、何から手をつけたらいいか分からない」という人は、まずあなたの隣の困っている人をどうしたら助けられるかを考えてみてはいかがでしょうか。そして、もしあなたがその人を助けることができたら、同じ方法でもっと多くの人を助けられるかもしれません。そんな、1つひとつの小さなアクションが、大きなうねりとなって、いずれ社会を変えていく。それこそがSXの本質的な姿なのかもしれません。
今回話を聞いた石井氏と横川氏は、SX関連はもちろん、そのほかにもそれぞれ得意な分野、関心のある領域があります。スポーツや演劇と長く関わってきた石井氏はそれを新たな街づくりやコミュニティデザインの文脈で生かしたいと。また、横川氏は自身もZ世代であることから、Z世代を巻き込んだプロジェクト、Z世代に向けた取り組みなどにも携わっていきたいということです。こうした分野に関心のある方も、まずは本サイトのCONTACTからお問い合わせください。