DX
2023/02/02

デジタル社会を支える、日本のDX人材育成最前線(前編)

INDEX

新型コロナウイルスの感染拡大で非接触コミュニケーションが急速に広がった結果、これまでにないほど、世の中はDX化の波に乗っています。しかしながら、同時に日本ではそれを支えるエンジニア人材が不足していることをご存じでしょうか。世界から遅れをとらないために、またより便利で快適な世の中をつくるためにも、エンジニアの育成は急務です。

その課題に真っ向から立ち向かおうとしているのが、新卒エンジニア採用支援領域では国内トップシェアを誇る、株式会社サポーターズ。代表取締役CEOの楓博光氏に、エンジニア市場の現状や育成の課題、展望などについて聞きました。

エンジニアへのリスペクトが生んだサービスで躍進

Q.まず、サポーターズはどのような事業を展開しているのか、教えていただけますでしょうか。

楓:メインの事業は、情報系の学校で学んでいる人、ITエンジニアを目指す人たちに向けての就職支援と、ITエンジニア人材が欲しい企業への採用支援です。当社はエンジニアに特化したデータベースを構築しており、そこへプロフィールや就業における条件や希望事項などを添えて会員登録をすると、企業からスカウトが来てマッチングする仕組みです。個別にニーズを聞いて人材紹介をすることもありますし、スキルや属性に基づいて会員限定や非公開のマッチングイベントに招待するなど、さまざまな方法でエンジニアの就職・採用のサポートをしています。

おかげさまで2012年の創業以来、いわゆるメガベンチャーを中心としたIT領域で採用支援を行っており、エンジニアを目指す学生の3人に1人が使うサービスにまで発展しています。これまで7万人を超えるエンジニア学生の就活、約1,000社の新卒エンジニア採用を支援してきました。

Q.楓さんがサポーターズを立ち上げた経緯を教えてください。エンジニア人材支援事業に取り組まれているということは、楓さんもエンジニアご出身なのでしょうか?

楓:いえ、実は、私自身はエンジニアへの道を諦めた人間なんです。

私は大学卒業後、新卒で広告代理店に入り、その後メディア事業を手掛ける電通グループの会社に人事として転職しました。その頃、ちょうどiPhoneなどが普及し始め、TwitterやFacebookなどのSNSも拡大し、まさに「世界が変わっていく気配」を感じていて。私も世界を変える側に回りたい、とプログラミングを勉強したのですが、挫折してしまったんです。そんな中、私と同い年のマーク・ザッカーバーグ氏がFacebookを始めて世の中に影響を与えていることにも衝撃を受け、エンジニアやプログラマーをリスペクトするようになりました。

加えて、人事として働く中でも、情報系の学生には専門的なスキルを持ち、才能にあふれた人たちがたくさんいることを知ったんです。しかし、そんなすごい人たちが偏った情報しか得られないために、なんとなく就職先を決めてしまうことや、キャリアを狭い範囲の中で選んでしまうことがある、という事実も同時に知り、とてももったいないと感じました。それで、いち人事としてではなく、多くの企業の人事担当者と協力してこの課題を解決したいと考えて、社内起業制度を利用して提案したのが、サポーターズという事業です。

会社のビジョンとしては「カッコイイオトナを増やす」。夢や目標を持って、その実現に向けて努力する「カッコイイオトナ」が、日本や世界を変えていくと信じています。そんなカッコイイオトナを目指す若者たちの夢を叶えるための第一歩をサポートしたい、という思いで創業しました。
株式会社サポーターズ 楓 博光氏

10%ほどの優秀人材を奪い合う採用マーケット

Q.日本では、エンジニア人材が不足していると言われています。日本のデジタル化を支えるエンジニアを取り巻く状況は、どのように変化しているのでしょうか?

楓:ITエンジニアの職種全般でお話ししますと、求人倍率は10倍を超えています。1人の候補者を10社で取り合うような状況ですね。さらに、特定のプログラミング言語を扱える人に絞ると、求人倍率は50倍ともいわれています。この数字だけでも、どれだけ人材が不足しているかがお分かりいただけるのではないでしょうか。この状況はさらに悪化すると見込まれていて、何も手を施さなければ今の倍はエンジニアが足りなくなるとのこと。これは、もはや社会課題と言っても過言ではありませんよね。

これを解決するためには、採用活動のことだけを考えるのではなく、「エンジニアを育てる」という視点を持つことが重要だと考えています。農作物も、収穫だけを続けていたらいつかなくなってしまいますよね。まずは畑を耕して、種をまいて、水を与えて育てて、そこから収穫することが必要なんです。でも今までは、ごく一部の実をみんなで奪い合おうとしている状態だったので、エンジニア不足は起こるべくして起きているのです。

Q.特殊な専門職であるにもかかわらず、育てる仕組みがうまくできていないということですね。

楓:そうですね。もちろん、社内教育で人材育成に取り組まれている企業も多いと思いますが、エンジニアは1人ひとりのスキルの高さが非常に重要で、人材育成にもそれなりに時間がかかります。従来、日本では総合職として採用して、複数の部署で経験を積みながら力をつけていくというスタイルが多いですが、エンジニアは専門職なので、採用・育成の方法も総合職とは異なるべきだと考えています。なので、企業に対しては「エンジニアという職種の特性を捉えた上で、採用や育成の方針を考えましょう」というお話も力を入れて行っています。

最近はようやく給料や待遇の面でも配慮されるなど、エンジニアにとって働きやすい環境が整ってきてはいます。それでも、母数が少ないため、優秀な人材の取り合いになっているのです。そこに課題感を覚えて、現状を変えていこうというのが、われわれサポーターズの目指すところです。

 


 

DXを推進する人材を獲得するためには、エンジニアという職種の特性を知り、それに合った採用活動を行うことが必要。それと同時に、人材不足を根本的に解決するためには、「育てる」という視点も大切になってきています。

後編では、楓氏率いるサポーターズが、エンジニア不足の現状を変えるべく取り組む、「エンジニアを育てる」施策や今後の展望などについて、詳しく話を聞きます。

「エンジニア人材が不足している」「採用活動を強化したい」など、人材発掘に関連した課題意識をお持ちの方。電通グループには、さまざまな企業の人材課題を解決してきた豊富なソリューションがあります。ぜひ、CONTACTよりお問い合わせください。

この記事の企業サイトを見る
株式会社サポーターズ

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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