RPAやノーコード開発などのツール・サービスを活用すれば、プログラミングなどのスキルがなくても、DXを進めやすくなります。この記事では、RPAやノーコード開発の基本を解説しながら、それらを使うメリットや自社に合ったツールの選び方など、IT人材が不足する中でも、DXを推進するために必要なポイントを紹介します。
RPAやノーコード開発とは? 働き方改革やDX実現を可能にする注目のツール
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、PC上で人間が行う操作を模倣し、自動化するツールです。手動で行っていた操作を記録・再現することができ、人間が作業するよりも迅速かつ正確に処理します。データ入力や見積書の作成、メール送信、情報の比較や照合など、PC上で行うさまざまな作業の自動化が可能です。また、複数のアプリケーションやシステムを横断した操作にも対応します。
一方、ノーコード(NoCode)開発とは、プログラミング言語を使ってソースコードを記述しなくてもWebサービスやアプリを開発できるサービス、ツールです。ドラッグ&ドロップなど画面上の操作と簡単な入力だけで開発が行えるため、プログラミングスキルがなくても、簡単でスピーディーにWebサービスやアプリを開発することが可能。なお、ソースコードを全く記述しない場合は「ノーコード」ですが、ソースコードの記述を極力減らしていても一部は記述する必要がある場合は「ローコード」と呼びます。代表的なノーコード開発ツールには、ホームページ制作に特化した「Wix」や、アプリの開発に特化した「AppSheet」などがあります。
RPAやノーコード開発が注目されるようになった背景としては、近年多くの企業でDXが進められてきたことがあるでしょう。少子高齢化により、日本の生産年齢人口は減少傾向にあります。その一方で、日本の一人当たりの労働生産性は諸外国に比べて低く、OECD加盟38カ国中28位(公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」)です。こうした状況を踏まえると、業務にデジタルを積極的に活用し、生産性を向上させることは多くの企業にとって重要な課題と言えるのではないでしょうか。そのため、今までは人の手で行われてきた作業をITの力で自動化・効率化することによって、業務改善や働き方改革を図ろうとする動きが強まっているのです。
しかし、DXを実現するためのWebアプリやシステムを構築するには、プログラミングなどのITスキルを持つ人材が必要ですが、現在日本ではIT人材が圧倒的に不足していると言われています。経済産業省は2019年に発表した「IT人材需給に関する調査」で、2030年にIT人材が最大で約79万人不足すると試算。今後はIT人材の獲得や、社内での人材育成に積極的に取り組む企業が増えてくると予想されますが、それと同時に、RPAやノーコード開発を活用することで、スキル不足を補い、時間やコストを抑えた上でDXを進めていこうという流れも生まれていくでしょう。
例えば、アプリやWebサービスを制作する際に、ノーコード開発を用いれば、簡単なものであれば数時間程度で完成させることも可能です。また、RPAで日々の単純業務を自動化すれば、人的リソースを必要な場所に使うことができ、多様な働き方へのより柔軟な対応が期待できます。
RPAやノーコード開発の導入がもたらすメリット

先述の通り、RPAやノーコード開発を活用することは、DX推進の一助となるでしょう。それでは、具体的にどのようなメリット、効果が期待できるのでしょうか。
RPAはヒューマンエラーの削減や業務の効率化に役立つ
RPAを導入することで、以下のようなメリットが考えられます。
- 人件費を削減できる
- ヒューマンエラーを防止できる
- 24時間、365日稼働できる
- 単純作業の効率化で、人的リソースを人間にしか行えない作業に集中できる
請求書作成、メールやDMの配信、在庫管理、小売店舗のPOSなどのデータをダウンロードし形式を統一するなど、これまで手作業で行っていたことを、RPAで業務を自動化・効率化すれば、時間や手間を大幅に減らすことができ、人件費の削減が実現できます。また、単純作業をRPAに任せることで、人的リソースを人間にしか行えない創造的な業務や、顧客とのコミュニケーションなどに集中させることもできるでしょう。さらに、RPAであればヒューマンエラーを防止でき、品質の向上も期待できます。経費のチェックや、情報の転記作業など見落としや漏れなどが発生しやすい作業でも、RPAであれば確実に実行できます。加えて、人間のように疲れたり、集中力を切らしたりしてしまうことがないため、24時間365日の対応が可能。従業員が終業した後でも、RPAは自動で作業を続けるので、残業の削減などにもつながると考えられます。
ノーコード開発はITスキルの不足を補う
一方、ノーコード開発を導入することでは、以下のようなメリットが考えられます。
- プログラミングなどのスキルがない人でも、Webサービスやアプリを開発できる
- Webサービスやアプリの開発、更新にかけるコストや時間を削減できる
- 外部エンジニアに発注する手間やコストを削減できる
ノーコード開発を導入すれば、プログラミング言語に関する知識やITスキルがない人でも、Webサービスやアプリを開発できます。例えば、全国各地の書店やブックカフェを検索できるサイトをノーコード開発ツールによって、エンジニアなしで制作した例も。また、飲食店に事前に注文をしておくと、お店に着いてすぐに食事ができるという「モバイルオーダーアプリ」も、ノーコード開発ツールによって誕生しました。このケースでは、ノーコード開発ツールだからこそ、必要な機能をスピーディーに組み込むことができたと言います。
加えて、開発にかける時間を短縮でき、更新も手軽に行うことが可能です。外部のエンジニアに発注する手間やコストを削減できるだけでなく、更新が必要な際に社内で対応できるのも、社内のIT人材が不足している企業にとっては大きなメリットです。
このように、RPAやノーコード開発を使うことで、プログラミングスキルのある人材が不足していても、DXを進めていくことができます。DXに興味があっても、社内にそれを担える人材がおらず、敷居が高いと感じている企業にとっては、RPAやノーコード開発を取り入れることは、現状を打破するきっかけとなるでしょう。DXを実現し、生産性や業務効率をアップすることができれば、業務時間や人件費といった各種リソースを解放できるため、新たな事業の開発や顧客のニーズに合わせたビジネスモデルの変革など、より前向きでチャレンジングな取り組みに力を注ぐことも可能となります。
RPAやノーコード開発ツールは、自社の現状やビジネスの特性に合ったものを選ぶ

RPAやノーコード開発ツールはさまざまなサービスが展開されています。ここからは、自社に適したRPAやノーコード開発ツールの選び方をご紹介します。
RPAツールの選定ポイント
RPAツールは、以下のようなポイントに注目して選ぶと良いでしょう。
- 自動化に対応している業務
- デスクトップ型、サーバー型、クラウド型など実行環境
- 操作性
- セキュリティ対策
RPAツールを選ぶ際に重要な点は、対応可能な業務がツールによって異なるため、社内でどのような業務を自動化したいかを考え、それに対応しているものを選ぶことでしょう。また、デスクトップ型・サーバー型・クラウド型など実行環境による違いもあります。デスクトップ型やクラウド型の方がコストもかからず、非IT人材でも導入しやすいものが多いと言われていますが、サーバー型は自社の環境に合わせてカスタマイズしやすいといったメリットがあります。
また、実際に運用する人にとって操作しやすいか、セキュリティ対策が十分になされているか、といった点も確認しましょう。
ノーコード開発ツールの選定ポイント
ノーコード開発ツールは、以下のようなポイントに注目して選びましょう。
- 開発したいサービス内容
- 対応するデバイス
- 操作性
- セキュリティ対策
ノーコード開発ツールは、ホームページ向け、アプリ向け、ECサイト向けなど、それぞれが利用目的に応じたツールになっているため、自社内でどのようなサービスを開発したいのかよく検討し、そのサービスに対応しているものを選びましょう。対応しているデバイスがパソコンのみか、スマートフォンやタブレットも含まれるかなども確認が必要です。
また、RPAにもノーコード開発ツールにも共通して言えることですが、これらのシステムはプラットフォームに依存するため、サービス停止や撤退などによってサービスやアプリが機能しなくなる可能性があります。そういう事態になった場合にサービス提供側はどのような対応をしてくれるのか、自社ではどのようなリスクヘッジができるのかも、併せて確認しておくと良いでしょう。
RPAやノーコード開発は、ITのスキルがなくてもWebサービスの開発や業務効率化に取り組むことができる、画期的なシステムです。これらのツールによって、DXを実現すれば、人件費や業務時間の削減などが可能になるだけでなく、リソースを確保して新たなビジネスを創造するといった野心的な取り組みにも挑戦できるでしょう。