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2022/05/23

DXの時代、ハイスキル・フリーランス人材の活用が企業課題を解決に導く(前編)

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昨今、雇用形態が多様化し、いわゆる一般的な正社員だけでなく、契約社員、パート・アルバイト、派遣社員など、さまざまな人たちが関わる会社が多くなっています。そんな中で注目されているのが「高度な専門性を持つフリーランス人材」です。単なる「外注」「発注」ではなく、自社のリソースでは対応し切れないような高度な業務をこなすことができるハイスキルなフリーランス人材を活用することが、既にアメリカなどでは当たり前になりつつあります。そしてその流れは、日本でも徐々に広がってきています。

今回は、DX領域において高度な専門性を持つフリーランス人材とのネットワークを構築し、顧客企業の課題に応じて最適な人材をアサイン、その解決をサポートしている株式会社GNUS(ヌース)の文分邦彦氏にインタビューを実施。前編では、GNUSが提供している「フリーランス人材」とはどういった人たちなのか、うまく活用することでどんなメリットが生まれるのかといった点について聞きました。

>>後編はこちら

アメリカでは、「企業勤め」と「フリーランス」を行き来する働き方が一般化

Q.特にDX領域において、「プロジェクトに適切なフリーランスメンバーをネットワークの中から選出、編成されたチームと共にクライアントへのアウトプットを定義し、提案する」というのが、GNUSが展開するビジネスの大きな枠組みとお聞きしましたが、この「フリーランス」人材とは、どういった人たちなのでしょうか?

文分:そもそも「DXにおいてフリーランス人材を活用する」ということはどういうことか、ということからお話ししますね。DXといっても領域は幅広く、「データ・サイエンス」や「システム開発」といった領域などがありますが、その中でも私たちは「プロダクト開発」の領域にフォーカスしています。例えば流通企業が、自社の顧客向けの「決済アプリ」を作るためには、エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーなどが必要になるわけですが、そういった人たちは実は既にフリーランスで活躍していて、スタートアップ企業にジョインしたり、自ら事業を立ち上げたりしています。そういった人材と私たちはネットワークがあり、フリーランスのメンバーでチームを作って、そのチームのアウトプットをクライアントにご提供しているというわけです。

彼らの働き方は本当に多種多様で、「個人事業主」として仕事をしている方もいれば、スタートアップ企業に所属してはいるけれど副業として夜は別の仕事をしているという方、自ら「経営者」として会社を運営している方もいます。フリーランスと言っても、「フルタイム」のフリーランスもいれば、「パートタイム」でいろんな仕事を受けてくれるフリーランスもいる。また、「フルタイム」と言っても、個人事業主もいれば経営者として活躍している人もいるんです。

Q.文分さんは、「フリーランス人材が活躍する」環境を、ニューヨーク駐在時に目の当たりにしたそうですね。そこには、日本とアメリカの労働環境の違いがあったのでしょうか。

文分:そうですね、よく言われますが、アメリカは「ジョブ型」で日本は「メンバーシップ型」ということと関係するところも多いと思います。アメリカはもともと「ジョブ型」の雇用形態が基本ですし、1社での雇用期間が短い。U.S. Department of Labor(アメリカ合衆国労働局)の調査では、18歳から48歳までの間に就く仕事の平均数は12という結果も出ているようで、まさに「転職大国」と言えます。そんな中では、ある一定期間、たまたまフリーランスとして働いているなんてことは、それほど珍しくないんです。3年間どこかの企業に勤めて、それからフリーランスになって、またどこかの企業に勤めて、なんてこともあります。日本では、「脱サラ」すると、だいたいその後は「一生脱サラ」ということになりますが、アメリカだと普通に「企業勤務」と「フリーランス」を行き来する。フリーランスで仕事をしていたけど、子どもが生まれたから企業に戻る、というパターンもありますよ。

また、「ジョブ型」ということで言えば、どの企業に勤めたとしても、1人ひとりが専門家としてのキャリアを積み上げていきます。ですから、フリーランスになったとしても職を得やすいですし、雇う側も、その人がフリーランスだろうが正社員だろうが、ジョブディスクリプション(職務記述書)を見る目は変わらない。違うのは雇用形態だけです。「フリーランスで活躍する」というのがフィットしやすい環境だな、と思いますね。

DX推進のカギは、採用市場には出てこない「ハイスキル・フリーランス」の活用

Q.雇用形態の点からすると、日本における「フリーランス人材の活用」は、まだまだ遅れているのでしょうか?

文分:「ジョブ型」と「メンバーシップ型」のどっちがいいか、という二項対立的な話ではないと思います。ただ日本においては、今のところフリーランス人材を活用するとなると、それはルーティン化した仕事を割り当てるだけ、というケースが多いのではないでしょうか。そのため、「フリーランス=安い労働力」と思い込んでいる企業もいるでしょう。しかし、私たちが提供しているソリューションはそういうケースではなく、むしろ自社が抱えているような正社員よりもクオリティーの高いデザイナーやエンジニアをフリーランスという立場で活用する、ということです。ですから私たちは、あえて「ハイスキル・フリーランス」や「ハイレベル・フリーランス」という言葉を使うようにしています。

Q.そういった「ハイスキル」なフリーランス人材を活用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?

文分:今まさに、DXの現場にいる方なら実感されているのではないかと思うのですが、これからアプリを作ろうとしても、市場には人材が足りないという状況が続いていて、新しく雇うのは本当に大変になっています。では、そういった能力がある人材はどこにいるのか。その人たちは大企業に入ってDXという名の面倒な社内調整をやらされることを避けたいと思っています。そこで、フレキシブルに自分のやりたい仕事をやるためにフリーランスで働くということを選んでいる。ですから、こういう人たちは、通常の採用市場には出てこないんです。私たちはそういった優秀で多様な人材をDXソリューションのリソースとして提供できます。企業としてはこういった人材を社員としては採用しなくても、最適なプロジェクトに活用できるというのがメリットと言えるのではないでしょうか。

私がアメリカに駐在していたときには、Gigster社というスタートアップ企業と連携して、フリーランスで編成されたチームのメンバーと仕事をしていました。当時、アメリカでも、プロダクト開発ができる企業が不足していて、大手の開発会社と一緒に何かをやろうとすると、だいたい「リソース不足」と言われることも多かったんです。大企業なのにリソースが足りない、と。でも、Gigster社と組めば、例えば大手企業で活躍していたエンジニアとマッチングすることも可能など、良い人材をアサインしてもらえる。「なるほど、フリーランスの人材をうまく活用できれば、リソース不足という課題を解決できるのではないか」ということに気付いたんですね。

私がアメリカで働いていたころは、まだ世の中全体が現在の日本のようにDXという方向には向いていませんでした。ですが今、新型コロナウイルスの影響もあって、どこでもDXが重要なテーマになっている。そんな中では、あのころ以上にフリーランス人材を活用して、その「リソース不足」を補うことが求められているのではないかと思います。

 


 

「大病院のしがらみにとらわれず、高いスキルを持ったフリーランスの外科医が活躍する」という人気ドラマがありますが、そのような「高度なフリーランス人材」という存在は、まだ日本ではあまりなじみがないかもしれません。しかし、DX領域に限らず、「プロフェッショナルほど大企業に所属せずにフリーランスで活躍する」という流れは、今後あらゆるビジネス領域で加速する可能性があります。一方でそれは、労働人口の減少が続き慢性的な人材不足が想定される将来においては、限られた人材を柔軟にシェアすることで、さまざまな課題を効率的に解決していくための重要な道筋となるでしょう。後編では、フリーランス人材を活用する上での注意点や、フリーランス人材の特性を見極めることの重要性などを聞いていきます。

>>後編はこちら

 

「quiet quitting」を始めとしたトレンドワードを知るために、こちらもご参考ください

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株式会社GNUS

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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