マーケティング活動を展開していく上では、オンライン(デジタル広告)とオフライン(テレビやラジオ、新聞、雑誌、交通広告など)の両方を活用することが大切です。しかも、それぞれを個別に展開していくのではなく、複数のチャネルを掛け合わせることが肝。それによって施策同士の関係性が見えてきたり、どの施策にどのくらいの予算を配分するのが最適であるかを考えやすくなったりと、さまざまな効果が期待できます。しかし一方で「言うは易く行うは難し」。実際にやり切って効果を最大化するにはさまざまな課題があり、それぞれの施策が「個別最適」で行われているのが実態だ、という企業も多いのではないでしょうか。
今回は、電通グループとの協業を通じて多くの企業を支援してきた、Septeni Japan株式会社(以下:セプテーニ)の甲斐拓人氏、神蔵麻鈴氏、松浦みづき氏に、オンラインとオフラインの「統合マーケティング」の実践力を引き上げるフレームワーク「5Cモデル」について聞きました。
オンライン領域からフルファネル戦略へ、選択肢を広げてきた
Q.セプテーニは、デジタル広告をはじめ、データやAIを活用したソリューションを提供されていますが、まずは、その中でお三方それぞれがどのような業務に携わっていらっしゃるのか教えてください。
Septeni Japan株式会社 神蔵 麻鈴氏神蔵:まず、セプテーニは“広告の運用を行う会社”というイメージが強いかもしれませんが、実は他にも幅広い業務を手掛けています。過去には、広告やDMによって商品・サービスを告知し、見込み客からの反応を直接受け取る、いわゆる「ダイレクトレスポンス」を中心とした運用型広告をメインにしていた時期がありますし、その領域は今も大きな柱です。一方で、近年はデジタルに携わるなら、認知からCRM(顧客関係管理)までアプローチしていくべきだとの考えの下、フルファネル戦略をご提案できるよう、スキル開発や組織づくりにも力を入れています。
その中で、私はマーケティング戦略本部という、ストラテジーからメディア・コミュニケーション・クリエーティブのプランニングまで担う組織に在籍していて、企業さまのニーズに合わせて幅広い提案を行っています。
Septeni Japan株式会社 松浦 みづき氏松浦:私がいる統合プランニング部もマーケティングユニットの1つで、メディアの戦略やオンオフ統合のプランニングの全体像を描いていくことを主軸に業務を行っています。
セプテーニはデジタルメディアの知識や運用戦術に強く、私が所属するチームでは、デジタルメディア戦略を軸にしながら、オンオフ統合での戦略立案や戦術の深掘りを手掛けています。
Septeni Japan株式会社 甲斐 拓人氏甲斐:私はデジタルのメディアさま向き合いのチームを統括しておりますが、ミッションとして、“メディアの方々と一緒にオンオフ統合のケイパビリティを高めていくこと”、“社内に対してオンオフ統合や統合マーケティングを推進する体制を支援すること”を掲げ取り組んでおります。神蔵、松浦がプランニングセクションであるのに対して、私は環境整備を行いながらオンオフ統合を推進していくことが役割です。
Q.セプテーニは電通グループの一員となっていますが、グループ内の企業同士で連携して仕事を進めることも多いのでしょうか。
神蔵:そのケースがとても増えてきました。近年、お付き合いのある企業さまから、「オンオフ統合をやってみたい」とご相談いただくことが増えてきたのですが、当社があまり優位性のないオフラインメディアについては、バイイングやスキル、企業さまとの関係など電通グループのリソースをうまく組み合わせることで、企業さまにとっても大きなメリットになります。ご相談くださる企業さまは、私たちのデジタルに対する知見や広い対応領域に期待してくださっていると思うので、都度より良いご提案ができるよう、「電通×セプテーニ」「電通×電通デジタル×セプテーニ」など、グループ内企業やチームの最適な組み合わせで、企業さまにさまざまな選択肢も提示しております。
オンオフ統合マーケティングを進化させる「5Cモデル」とは?
Q.企業さまから「オンオフ統合マーケティングをやってみたい」と伝えられたとき、具体的にどのようなご提案をされているのですか?
神蔵:まず、オンオフ統合マーケティングを実行するにあたっては、幾つか乗り越えるべき「壁」があるように感じています。例えば、チームや立場の異なる人たちの中で「壁」があり、課題意識や目的の共有ができていないとか、ファネルが異なることが「壁」となり、全体俯瞰で課題を見ることができていない、といったケースです。

神蔵:そうした「壁」を乗り越えるためにご提案しているのが、当社が開発した「5Cモデル」という実行力を上げるためのフレームワークです。今まで携わってきた案件を見返して、どういう場合にうまくいかなかったのか、どうすればもっと企業さまへの事業貢献ができたのかを考えながら整理していったところ、徐々に5Cのフレームワークが見えてきました。具体的には、オンオフ統合においては、Core、Co Creation、Communication、Cost Control、Connectの5つの“C”が重要で、この5つが全てうまくいっていれば、統合マーケティングの実行がスムーズにいきやすいというものです。
5Cモデルの5つの要素
- Core:戦略・配信・指標の連携
- Co Creation:組織的なオンオフ共創体制
- Communication:総合コミュニケーション設計
- Cost Control:オンオフ予算配分最適化
- Connect:オンオフデータ統合
神蔵:5つのCはどれも重要なことですし、この5つが全てうまくいけば、本質的な統合マーケティングが実現できると考えています。
松浦:さらに、統合マーケティングをフェーズ1~フェーズ3の3つのステップに分けることで、それぞれのステップごとに5つのCの目標達成を目指すモデルを構築しました。大まかに説明すると、まずはフェーズ1でチャネル統合の基礎を築き、フェーズ2でマスとデジタルで戦略や出稿データを共有して、フェーズ3で統合マーケティングを実践していきましょう、といった具合です。いきなりゴールを目指すのは難しいけれど、1つひとつ階段を上っていくことで、着実にオンオフ統合実現に近づけるといったイメージです。

オンラインとオフラインをよりスムーズに、より高い次元で統合するために、過去の成功事例をあらためて見返して知見を集約させ、体系化してきたセプテーニ。後編では、完成したフレームワーク「5Cモデル」を基にオンオフ統合を進める中、新たに見えてきた課題や今後の展望を聞きます。
多くの企業がオンオフ統合の重要性に着目するようになる中、自社のマーケティング施策をあらためて練り直したいと考えている企業は多いはず。しかし一方で、何から始めたらいいのか分かからないという企業も少なくないのではないでしょうか。まずは自社の課題を知るためにも、専門家に話を聞いてみたいという方は、お気軽にCONTACTよりお問い合わせください。
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