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2023/02/14

脱炭素社会実現のために。ラーニングツール「Day Tree」で1人ひとりの「行動変容」を促す(前編)

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地球温暖化の原因となる、温室効果ガスの排出量をゼロにしようとする「脱炭素」。日本でも、2020年10月に政府が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指す」と宣言したことを皮切りに、さまざまな業界で脱炭素社会に向けた動きが加速しています。こうした中で、「自社でも脱炭素の取り組みを始めたい」と考える企業も増えてきたのではないでしょうか。一方で、その思いはあっても、「何から始めたらいいか分からない」「取り組んでも、その効果がなかなか見えない」という課題を感じている、という声も多く聞かれるようになりました。

株式会社電通国際情報サービス(以下:ISID)では、企業の脱炭素に向けた施策を支援するため、脱炭素ラーニングツール「Day Tree(デイ・ツリー)」を開発。このツールが生まれた背景や、ISIDによる社会課題への挑戦について、同社内の共創型ラボ「INNOLAB(イノラボ)」に所属する、藤木隆司氏、小林賢太朗氏にインタビューしました。

脱炭素アクションを促す、ラーニングツール

Q .まずは藤木さんと小林さんのご経歴や、今のお仕事についてご紹介いただけますか。

藤木:私は大学時代からAI画像処理について研究していまして、卒業後は、メーカーでAIを使った機能開発、商品開発などに携わってきました。その後、2017年ごろにAIブームが起きたこともあり、さらにこの専門性を極めたいと感じるようになっていたタイミングで、ISIDの「INNOLAB(イノラボ)」に出会いました。

イノラボは先端テクノロジーを活用して、大学や自治体、外部の研究者などさまざまな人・組織と連携しながら、研究および社会実装に取り組む、ISIDの中にある共創型ラボです。研究開発はもちろん、それがどう世の中に浸透するのか、事業成長につながるのか、というところまで検証する場だと聞いて「面白そうだな」と感じたのが、入社の決め手でした。入社後は、AI画像処理を中心に、ブロックチェーンなど新しい技術に触れながら、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。

加えて、2021年からは、イノラボの中でSDGsのプロジェクトに注力しています。SDGsに関する課題を、テクノロジーを活用して解決することを目指し、新しいソリューションの開発を進めているところです。
株式会社電通国際情報サービス 藤木 隆司氏
小林:私は、印刷会社やスタートアップなどを経て、ISIDに入社しました。キャリアの特徴としては、一貫して新規事業や新規サービスの立ち上げに従事してきたことです。

ISIDに入ってからは、主に金融業界のお客さまに対して、新規事業の立ち上げを支援していましたが、今はイノラボと兼務し、「Day Tree」の企画、プロデュースも担当しています。
株式会社電通国際情報サービス 小林 賢太朗氏

Q .では次に、お二人が携わっている「Day Tree」について、教えてください。2022年10月27日にβ版がリリースされたところですよね。

小林:はい。「Day Tree」は、企業の従業員に対して、脱炭素化に向けた学びやアクションを促す社内参加型ラーニングツールです。形態としてはスマートフォンアプリで、主な機能は3つ。

1つ目は教育コンテンツの配信機能です。地球温暖化や脱炭素に関する社会動向やニュース、企業独自のエコガイドラインなどを配信できます。ここで、脱炭素に関する知識をインプットしていただきます。

2つ目は、エコアクション投稿機能。これは、社内限定のクローズドSNSです。TwitterやInstagramのように、自分で投稿したり、他の人の投稿に対していいねやコメントでリアクションしたりすることができますが、大きな特徴は「ゼロカーボンアクションに関連した投稿に限定されている」ということ。例えば「夏にクーラーの設定温度を上げた」とか、「テレビの使用時間を短くした」「自宅で使っていない電気を消した」など、脱炭素に貢献するアクションを実践したら、写真を撮って投稿していただく。投稿するごとにポイントが付与され、実際にそのアクションによってどれくらいの炭素量が削減できたのか、も確認することができます。

3つ目は「チャレンジランキング機能」といって、企業の中で特に重点的に取り組みたいテーマについて、対象となるエコアクションを設定。設定期間の中で、誰が多くポイントを獲得できたか、ランキングを競うことができます。さらに盛り上げるために、部署対抗とか、企業対抗でイベントを設定するということも可能です。
Day Tree
小林:こうした機能を備えた「Day Tree」ですが、その目的は「1人ひとりの意識をアップデートする」ことにあります。自分の行動が脱炭素に貢献できていることを実感したり、他の人の投稿を見て刺激を受けたりしながら、脱炭素アクションを楽しく生活の中に取り入れていただくためのツールです。

気軽に始められ、楽しみながら使ってもらうことを重視

Q .SNSのような形で気軽にエコアクションを投稿するというのは面白いツールですね。開発にはどのようなきっかけがあったのでしょうか?

小林:今、「脱炭素」は、多くの企業・組織にとって重要なキーワードになってきていますよね。欧米を中心に、自社だけではなく取引先やサプライチェーンも含めてCO2の排出量削減を目指す傾向が強まっています。また、日本政府も2050年に向けてカーボンニュートラル実現を宣言しましたし、今後ますます、社会全体で一丸となって取り組まなければいけないものとして意識していく必要があるでしょう。

そうした状況の中で、「うちでも脱炭素に関連したサービスをやりたい」と考える企業は多いのですが、実際には何から手をつけていいか分からなかったり、予算も限られていたりして、なかなか取り組めないというところもあるのではないでしょうか。

また、業界によっても取り組み状況には差があります。製造業などは、エネルギー利用が大きいという非常に分かりやすい状況にあることが多いので、既に脱炭素に向けた取り組みを始めているところが多く、エネルギー消費を抑えられるように、製造工程の見直しや、省エネ機器の導入、素材の再利用などさまざまな努力がなされています。ですが他の業界の場合は、製造業とは異なり、脱炭素に向けた施策として、具体的に発信できるアクションが限られています。その一方で、政府やクライアント企業、株主からは何らかの取り組みを求められるという状況が広がってきており、私が担当していた金融業界の企業からも、対応策が分からず苦慮している、という声を聞くようになりました。そういった顧客企業さまに、ISIDだからご提供できるソリューションがあるのではないか、と考え、あらゆる業界で気軽に導入してもらいやすいツールとして、「Day Tree」を開発したんです。

Q .確かに、導入しやすいというのは非常に重要ですね。脱炭素に関しては、他にもさまざまなソリューションが出ていますが、このような「社員1人ひとりの意識・行動を変える」というアプローチにたどり着いたのには、どのような経緯があったのでしょうか。

藤木:脱炭素向けのソリューションを開発することになって、何度もリサーチ、検討を重ねました。中でも私たちが重視したのは「続けられること」です。まずは、「生活の中で炭素をどのくらい排出しているのか可視化しよう」というアイデアがありましたが、「可視化だけでは続かないのではないか?」という話になり、部署ごとや企業ごとに競いあう、といった機能が生まれました。さらに、先ほど小林が話していたような非製造業界のニーズについても知ることができたので、どんな業界でも気軽に取り組めるものにする、という方向性が固まっていったんです。

また、イノラボとしては、「行動変容」というテーマに以前から取り組んできました。先端テクノロジーの力で社会にアプローチすることで、人々の行動をどう変えることができるのか。それも、無理やりやらせるのではなく、いかに楽しみながら行動してもらえるか、という部分を大事にしてきたと思います。今回の「Day Tree」でも、アクションを社内で共有することで、他者に共感したり、何か気付きを得たりするうちに、「自分もやってみようか」というマインドに自然に変わっていく、楽しみながら実行していくというところを軸として開発を進めています。

 


 

脱炭素に向けた取り組みが社会的に求められる中で、どんな企業でも気軽に始められるツールとして誕生した、「Day Tree」。1人が起こすアクションは小さくても、それが結集したときには、社会を変える大きな力となるはずです。後編では、「Day Tree」を利用した企業からの反応や、藤木氏、小林氏の今後のチャレンジについても聞いていきます。

脱炭素アクションは、小さな一歩から始めることができます。「自社でできるゼロカーボンアクションを考えたい」「全社一丸となって脱炭素に取り組むため、社内教育を充実させたい」「自社の取り組み状況を客観的に評価したい」といったご希望をお持ちの方は、ぜひお気軽にCONTACTよりお問い合わせください。

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株式会社電通総研

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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