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2022/12/15

DIで進化するB2Cグロース戦略を、コロナ禍の「鉄道業界」を例に考える(後編)

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株式会社電通コンサルティングと株式会社ギックスは業務提携し、さまざまな企業のデータに基づいた成長戦略を支援しています。前編では一例として鉄道業界を取り上げ、そこに関わるトピックを基に、データ活用の意義や可能性について、電通コンサルティング専務執行役員の杉本将隆氏とギックス執行役員 Data-Informed事業副本部長の山田洋氏が議論しました。

議論の過程で、鉄道グループが持つ多様なデータを組み合わせることで、生活者に寄り添った新規事業やサービスが生まれる可能性が見えてきました。後編ではさらに具体的に、鉄道会社グループが実現し得る街づくりや地域活性化、DI(データインフォームド)で進化するグロース戦略について考えていきます。

鉄道グループが持つデータとタイムリーなローカル情報を組み合わせ、新たな移動と消費需要を創出

杉本:前編でも少し触れましたが、鉄道会社にとって、これからのWell-being時代に魅力的な街をいかにつくるかは、ますます大きなミッションになってくるでしょうし、また周りからの期待も高まってくると思います。多くの時間を過ごす沿線での生活を、いかに多様な意味と豊かさをもたらす “私たちの街”にするか。従来のような個社やグループとしての市場シェア競争から脱却し、「この沿線に住んで良かった」というマインドシェアをいかに高めていくか。それこそが今後、鉄道グループの経営の根幹になってくるのではないでしょうか。
山田:そのためには、やはり個人情報の保護には徹底的に配慮した上で、生活者のデータを取得・活用しながら、いかに生活者に寄り添った存在になれるか、がポイントになりますね。
杉本:それは当然のことですね。この点に関しては、IC乗車券と鉄道グループによるクレジットカードなどが融合したことのメリットはとても大きいと思います。沿線内での商業や観光などの目的と、鉄道やバスなどの移動手段をシームレスにCX設計することで、生活者の移動と消費の需要を喚起し、地域の経済活性化に大きく寄与することができるようになったからです。
山田:特に今はスマートフォンが普及したことで、交通の利用データを即座にスマートフォンと連携させることができますよね。交通データに基づくロケーションベースの情報をタイムリーに配信できるようになったわけです。それにより、その時々、ユーザーがいる場所で、その人に最適な情報を自然なかたちで届けることも可能になっています。
株式会社ギックス 執行役員 Data-Informed事業副本部長 兼 Design & Science Div. Leader 山田 洋氏
杉本:つまり、スマートフォンに情報が集約されるようになったので、レコメンデーションによる新たな行動の誘発、購買促進による消費の拡大ができるわけですね。沿線の中でさまざまなサービス、お客さまとの接点を持っていた鉄道会社グループに加え、ローカルコミュニティやメディアで生成され流通している情報をタイムリーに1人ひとりに伝えることで、ハイパーローカル情報による移動や消費需要を喚起することができるようになると考えています。

このような地域の中でのデータを起点としたCXデザインが可能な鉄道会社グループが、地域のさまざまな団体やコミュニティと連携し、地域生活者と地域事業者をつないでいく。大手鉄道会社グループが今年3月にメタバース上で開催した音楽祭の取り組みもコロナ禍に登場してきた先進事例として、今後どのように生活者とのエンゲージメントを深化させていくのか注目しています。鉄道会社グループがこれまで培ってきたリアルアセットとデジタル先端技術を活用し新たな移動と消費需要を創出するビジネス機会が今、まさに出現しているのです。

観光キャンペーンで収集した情報を次の施策に活かし、PDCAを回す

山田:ここまで鉄道会社にフォーカスして議論してきましたが、多様なデータを統合して街づくりや地域活性化につなげる取り組み自体は既に日本全国で行われています。電通コンサルティングさんでも各地でさまざまな支援をされていますよね。
杉本:私が近年、関わってきたものとしては、2024年春北陸新幹線の延伸を見据えた福井県のプロジェクトがあります。福井銀行と福井新聞社が地域のDXを進めるために「株式会社ふくいのデジタル」という会社を設立し、地域ニュースや観光情報、防災情報の配信や地域通貨・クーポン等を提供する「ふくアプリ」を運営しています。そのアプリに地域生活者や観光客に寄り添ったさまざまな機能も搭載し、地域の街づくり・商工・観光などの各種団体や交通・商業事業者とも連携し、新しいサービスを展開していく計画となっています。
株式会社電通コンサルティング 専務執行役員 シニアパートナー 杉本 将隆氏
山田:このようなDXを進める場合、既存のデータを組み合わせて分析できれば一番楽なのですが、現実には既存のデータを組み合わせることは簡単なことではないですよね。そこでむしろ、取り組みを進めながら一緒にデータをためて、活用していくという視点も重要だと思います。

例えばギックスが提供する「マイグル」は、1人ひとりの趣味・嗜好に合わせたデジタルスタンプラリーを実施するためのアプリですが、キャンペーン実施後に次の施策に生かすためのデータを分析・活用する機能も持っています。DXやデータ活用においては、このような仕組みで施策のPDCAを回すことが大事です。
杉本:ギックスさんが大手鉄道会社と自治体とで行ったスタンプラリーは、まさにその好例ですよね。
山田:はい。あの取り組みは自治体にとっては、スタンプラリーによる観光促進を行うとともに、今後の施策検討に向けたデータやノウハウを得ることが目的でした。大手鉄道会社にとっては、移動目的を創出することで、結果的に交通事業の拡大につながります。同じような取り組みは観光に限らず、日常的な分野でも可能だと考えています。
杉本:今まで鉄道会社が提供する交通サービスは、あくまで目的地へ着くための手段でしたが、これからは生活者起点の発想を前提として、鉄道グループと観光施設や個店が融合し、データを起点に新しい目的、行動を作り上げていくことができるわけですね。そもそも「マイグル」は、移動すること自体を目的としたサービスです。さらにそれによって新たな施策につなげていく、広げていくというのは、まさに発想の転換で、非常にユニークなアプローチだと思っています。
山田:ありがとうございます。スタンプラリーなどで実際に街を巡った人の「あのお店はめちゃくちゃ並んでいる」「平日の昼間、この曜日は空いているから、行くならこのタイミングに行くのがお勧め」といった情報は、オンラインにはない非常に有益な情報です。このような情報を観光客だけではなく、地元の人も日常的に使えるようにすれば、さらに街全体の活性化につながるのではないかと考えています。
杉本:そうですね。それはすぐにでも実現できそうな気がします。
山田:はい。いずれにしろB2Cビジネスにおいては、データから即、答えが分かるようなことはまずありません。「マイグル」のような仕組みでデータを集めては施策の結果を検証し、試行錯誤のサイクルを回していくことが大事です。またそれ以上に重要なのはデータからどのような気付きを得るかです。

まさにこの部分を、マーケティングやクリエーティブのプロフェッショナルである電通コンサルティングさんに期待しています。第1回目の対談でも出た「価値の創造」と「支持の獲得」のサイクルを電通コンサルティングさんとともに回すことが、B2Cビジネスに対して私たちギックスが最も大きく貢献できるかたちだと考えています。
杉本:当社は「右脳×左脳×異能」という、グロース特化型総合コンサルティングファームとして、生活者起点での事業モデルの変革や新事業創造をメインに支援してきました。そんな弊社のグロース領域のノウハウと、ギックスさんのデータインフォームドの知見、スキルを掛け算することで、新しい輪を創造し、新しいサービスを生み出す。データに基づくPDCAを回して、ビジネスを成功へ導いていく。こうした取り組みを多様なステークホルダーの衆知を集めながら、ともに持続可能かつWell-beingな地域社会づくりになるよう進めていきたいと考えています。

 


 

今回は鉄道業界にフォーカスし、DIで進化するB2Cグロース戦略について議論しました。適切な視点を持つことができれば、データは移動、施設、個店、エリア、時間など、さまざまな次元、領域のものを統合的に分析することで、今までにない気付きが得られます。そして、それによって目指すのは、多様化する生活者1人ひとりに寄り添ったUX、CX、そして、Well-beingな社会の実現です。電通コンサルティングとギックスは、そのための最適な支援、仕組み作りのお手伝いをさせていただきます。

コロナ禍を打開して今後のグロース戦略を成功させるには、生活者と生活者を取り巻く環境を総合的に把握した上での新規事業やサービスの創出が重要です。「グロースコンサルティング」を行う電通コンサルティングの杉本氏は、大手鉄道会社やグローバルコンサルティングファームでの勤務経験を通して数多くの新規事業の立ち上げに携わってきました。そんな電通コンサルティングの「グロースコンサルティング」とギックスの「DI」を掛け合わせることで、より大きな価値を提供していきます。

データを活用した新規事業・サービスを検討している方は、まずはCONTACTよりお気軽にお問い合わせください。

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株式会社電通コンサルティング

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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