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2023/01/17

SNSユーザーを共通の趣味嗜好単位で分析するTribe Driven Marketingを使うと、何ができるのか?

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株式会社電通デジタルは、2022年9月8日、SNSマーケティングを高度化する統合フレームワーク「Tribe Driven Marketing(トライブドリブンマーケティング)」の提供を開始しました(※)。本稿では、「トライブ」の概念を考案し、Tribe Driven Marketingを開発した電通デジタル吉田初、小谷天兵に、開発背景と特長を聞きました。

データドリブンなコンサルティングを発展させ、SNSマーケティングの課題感を克服したい

Q.Tribe Driven Marketingを開発した背景を教えてください。

吉田:Cookie(行動データ)フリー時代に、ユーザーの興味関心からマーケティングを行っていくことの価値が相対的に上がってきていると感じていました。

また興味関心が特に顕著に表れるのはSNSであるというところから、私たちソーシャルメディア事業部で重視しているデータドリブンなコンサルティングをより発展させ、今までのSNSマーケティングの課題感も同時に克服していきたいと考えました。

Q.これまでのSNSマーケティングには、どのような課題がありましたか?

吉田:SNS上の施策を行い、「フォロワー数が増えた」「エンゲージメントが多かった」というような結果が出た場合、さらに精緻な分析はあまり行われない印象がありました。また、SNSにおけるオーガニック施策と広告施策の評価が分断されていると感じていました。

SNSマーケティングの目的は、自社製品の認知獲得や企業への好意形成など多岐にわたりますが、それを一義的な「フォロワー数」や「エンゲージメント数」を中心に評価することにも見直すべき部分があると思っていました。

施策の結果が全体的にどうだったかということではなく、ターゲットとする顧客に対してどれくらいの反響を獲得していたか、なぜその結果になったのかということまで分析できるようになることが理想的だと考えています。

Q.SNSマーケティングが精緻に行えなかったことに、何か技術的な理由はありますか?

吉田:1つ目は、総量的な数字(獲得フォロワー数やエンゲージメント数)をさらに深掘りする手段がなかったこと、2つ目は、広告接触者とオーガニック接触者を統合して評価する手段がなかったこと、この2つが挙げられます。

ソーシャルメディアの価値が増大している今だからこそ、こうした課題を克服しつつ、より高度なアプローチが必要であると考えており、そうした背景から開発したのが、Tribe Driven Marketingというフレームワークです。
株式会社電通デジタル 吉田 初氏

トライブ基点でSNSマーケティング手法を高度化した統合フレームワーク

Q.Tribe Driven Marketingとは、ひと言で言うと、どういうものですか?

小谷:SNSのユーザーを共通の興味関心やライフスタイルを持つ集団「トライブ」という単位にグルーピングし、トライブ基点でSNSマーケティング手法を高度化した統合フレームワークです。

Q.「トライブ」にはどういった区分があるのでしょうか?

小谷:ユーザーの趣味嗜好によって区分します。主な分け方は2つあります。

①一般的な趣味嗜好から区分する方法
例えば「キャンプ」「子育て」「テクノロジー」「SDGs」など

②サービス/製品に関する嗜好性から区分する方法
例えば「自社サービス/製品ファン」「競合サービス/製品ファン」「関連サービス/製品の愛用者」「関連サービス/製品のインフルエンサー」など
小谷:基本的に、トライブはクライアント企業の与件に合わせて柔軟に作成するので、定型の作り方はありません。

例えば、ベビー用品の顧客からトライブを考えると、広義の「育児」トライブから、さらに「知育」「育児関連のテレビ番組」「ベビー服」「おでかけ」への関心という単位のトライブのほか、「自社製品を愛好してくれている」「自社製品に関心を寄せている」「競合製品を利用している」というトライブも並行して作ることができます。各トライブの規模に制限はなく、柔軟に形成できます。またトライブの掛け合わせも行えます。

Q.Tribe Driven Marketingの特長は?

吉田:特長は、さまざまな粒度・規模のトライブを目的に応じて柔軟に形成し、そのトライブに対して各種施策を企画~実行し、結果を分析することまで一気通貫でできることです。広告媒体の配信セグメントや、デモグラフィック属性、ジオグラフィック属性ではない、顧客のより深いインサイトを捉えたマーケティング活動の高度化を実現できます。また、それを支える基盤としてトライブデータベースというものも開発しました。

Q.「トライブデータベース」とは何ですか?

小谷:Tribeという集団を蓄積し、広告の配信に利用することや、成果分析をするための基盤です。運用や施策を行う中でも随時データが蓄積されていきます。
株式会社電通デジタル 小谷 天兵氏
小谷:施策により獲得したユーザーやエンゲージメントしたユーザーが、その後、企業や製品/サービスのファンになったか、SNSに投稿するなどの好意(または離反)を示したか、好意はどのように変化したか、それらの推移をトライブ単位で参照・分析することができます。

施策データをトライブデータベースと突合することで、クイックに施策結果を確認することができます。また、分析したい内容に即して、トライブの変更や調整も柔軟にできます。

SNSマーケティングで求められる課題・KPIに対して広く活用できる

Q.Tribe Driven Marketingはどのような課題の解決に適していますか?

吉田:基本的には、SNSマーケティングで求められる課題・KPIに対して広く活用できます。

「フォロワーを増やしたい」という依頼に対しては、そのSNSアカウントの現在のフォロワーにおけるトライブ構成を調べることができます。親和性の高い、相性の良いトライブが分かると、該当トライブのユーザーに興味関心をより持ってもらえるようなSNS投稿やキャンペーンを考えるほか、広告を用いてピンポイントにリーチすることも可能になります。

同様に、「エンゲージメントを増やしたい」「自社製品に関するSNS投稿を増やしたい」といったKPI達成に向けても活用できます。

Q.これまでに行った具体的な事例があれば教えてください。

吉田:映画のプロモーションに活用しました。一般的な広告配信における映画ファンのセグメントと、Tribe Driven Marketingによって規定した“コアな映画ファン”をトライブとして作成し、両方に広告配信しました。結果、エンゲージメントに関して“コアな映画ファン”の方が良い結果が出ました。濃い映画ファンにリーチできたためと考えています。

また実施後の分析にて、“コアな映画ファン”のトライブでは、公開日当日以降より公開前のタイミングで最も自発的な投稿をしていたこと、また特にフォロワーの多い人によるものだということが分かりました。

そのため、「コアな映画ファン」×「フォロワーが多い人たち」の独自トライブに向けて、「公開前の話題化」の推進が今後のプロモーション設計で重要であるという学びがありました。
小谷:分析起点の事例では、ある製品のターゲット攻略への糸口が見つかりました。企業側の想定ターゲット以外に、興味を持ってもらえる可能性の高い潜在層にあたる複数のトライブが発見できました。それぞれのトライブにおける固有の興味関心ポイント、トライブごとの「ツボ」を見つけられたので、理にかなったクリエーティブ開発につながりました。コピーライティングやバナーのバリエーションを豊富に作れたことと、それを広告で各トライブに配信するという一連の活動に至りました。

Q.Tribe Driven Marketingに興味があるマーケティング担当者に向けて、最後に一言お願いします。

小谷:トライブを規定し、分析することで、単なる個人の感想や振る舞いと思われていた情報からインサイトが見えてきます。インサイトを踏まえて施策を打ち、反応を蓄積し、PDCAを回していくと、どんどん解像度が高くなり、マーケティングが高度化していく。それを実現できるのはTribe Driven Marketingならではだと思います。
吉田:現状のSNSマーケティングは、どうしてもフォロワー獲得至上主義なところがありますが、ビジネスへの貢献で考えると、より人にフォーカスしていく必要があると考えています。Tribe Driven Marketingを活用することで、SNS上のデータの解像度を高め、企業やブランド、製品、サービスのファンを増やす助けにしてほしいと思っています。与件や課題に対して、最適なトライブアプローチをご提案します。まずは気軽にご相談ください。

 

※ “SNSユーザーを趣味嗜好で区分した”トライブ”基点の独自分析を行う統合フレームワーク「Tribe Driven Marketing」を提供開始”電通デジタル.(2022年9月8日)2022年9月13日閲覧

 


 

電通グループでは、他にもSNSを活用したユーザー分析や、マーケティング施策に関する豊富な知見・ソリューションを用意しています。ご興味のある方はCONTACTよりお問い合わせください。

この記事は、過去に 2022年10月17日電通デジタル「KNOWLEDGE CHARGE」で公開された記事を一部編集し掲載しています
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株式会社電通デジタル

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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