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2022/07/05

協調フィルタリングによる商品レコメンドのメリットとは。「ユーザーの好み」をベースにした商品との出会いはZ世代と好相性?

INDEX

インターネットショッピングをしている時、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」と他の商品を薦められた経験のある人は多いでしょう。ECサイトがこうしたお薦めのアルゴリズムを取り入れることは一般的になりましたが、中でも近年特に注目されているのが「協調フィルタリング」という方法です。これは、従来のレコメンド機能とはどのような違いがあるのでしょうか。また、こうした手法はこれからの消費の中心となる若い世代にもマッチするのでしょうか。本記事では、協調フィルタリングの基礎を解説しつつ、「協調フィルタリングによる商品レコメンドはZ世代の心をつかむか?」という問いを立て、協調フィルタリングがこれからの消費トレンドのカギを握るZ世代に与える影響を探ります。

商品との意外な出会いを演出する「協調フィルタリング」

かつてのECサイトでは、「コンテンツベース」と呼ばれるアルゴリズムが主流でした。コンテンツベースレコメンドは、個人の検索履歴や購入履歴に基づいて、類似性の高い商品をレコメンドします。例えば、ブランドAの商品を購入した人に同じブランドの他の商品をレコメンドしたり、「夏物」「低価格」「男性向け」といったキーワードで検索して洋服Aを購入した人に同じ特徴を持つ洋服Bをレコメンドしたりする、といった具合です。

この手法のデメリットの1つは、類似するカテゴリの商品ばかりが表示されてしまい、ユーザーにとって面白みに欠ける面があることです。また、個人の購入履歴だけをもとにするとあまり多様な商品が上がってこず、「既に知っている、見たことがある」と感じる商品ばかりが並ぶことも。そうした弱点をカバーできるのが、個人ではなく複数のユーザーの履歴を利用してレコメンドする「協調フィルタリング」です。

大まかに分ければ、協調フィルタリングには「ユーザーベース」と「アイテムベース」の2種類の考え方があります。

・ユーザーベース
「あなたに似たユーザーは〇〇も購入しています」など、特定のユーザーが好むと思われるアイテムをレコメンド。例えば、商品A・B・Cを買ったユーザーaと、商品A・Bを買ったユーザーbがいたら、両者は購買情報が似ているので好みも近いと考え、ユーザーbに対しても商品Cをお薦め商品として表示させます。

・アイテムベース
「この商品を買った人はこんな商品も買っています」など、同じ商品を購入・評価したユーザーが好んでいる他のアイテムをレコメンドします。ユーザーa、b、cが3人とも商品AとBを買ったなら、商品AとBは類似性が高いと考えられるので、商品Aを購入した別のユーザーdに対しても、商品Bをお薦め商品として表示させます。

このような協調フィルタリングの仕組みを用いると、ユーザーにお薦めできる商品の幅が広がり、過去に購入したものとは全く異なるカテゴリの商品や、今まで知らなかった意外な商品との出会いを演出することもできます。セレンディピティのあるレコメンドができることが大きな魅力だと言えるでしょう。

協調フィルタリングで、検索の手間が省ける?

では協調フィルタリングによるレコメンドは実際にはどのように使われ、どのような効果を発揮しているのでしょうか。

・ECプラットフォーム
例えば、某ECプラットフォームの売り上げは、レコメンド機能によるものが35%を超えているといわれています。それだけでなく、蓄えたノウハウを映画の配信サービスなど他分野にも活用。「この作品を見たユーザーはこんな作品も見ています」といった具合に、データを蓄積することで個人アカウントのパーソナライズを強化させているのです。

・音楽ストリーミングサービス
協調フィルタリングにディープラーニングを組み合わせることでより高度なレコメンドを実現した音楽ストリーミングサービスもあります。行動履歴に現れないユーザーの好みを学習させ、これまでの自分の履歴にはなかったジャンルやアーティストの曲をお薦めし、ユーザーと音楽・アーティストとの新しい接点を作り出しています。

・動画配信サービス
大手動画配信サービスでは、協調フィルタリングに5つ星評価(レビュー)やさまざまな機械学習の技術などを組み合わせ、独自にレコメンド機能を強化。その結果、実際にユーザーの4人のうち3人がレコメンドされた映画を選択し、総試聴時間の実に80%がレコメンド経由によるものだといわれています。このサービスを提供する企業では、CEO自らがアルゴリズムの改良に積極的に取り組んだり、多額の賞金を懸けたアルゴリズムコンテストを開催したりしており、レコメンドシステムをビジネスの核として捉えていることがうかがえます。

このように、協調フィルタリングの活用は多くの企業にとって売り上げに寄与することが明らかになっています。またユーザーにとっても、思いがけない商品に出会える上に、自分でキーワードや条件を入力して何度も検索をかけなくても好みの商品にたどり着く可能性が高くなるので、双方にとってメリットの大きいアルゴリズムだと言えるでしょう。

検索せずとも自分好みの商品にたどり着く、という観点から考えると、1つの仮説が立ち上がります。それは「検索エンジンの利用度が低いといわれているZ世代の消費者にとって、協調フィルタリングは特に有効なアプローチになり得るのではないか?」というもの。次の章では、協調フィルタリングがZ世代の消費行動にどのような影響を与え得るかについて考察していきます。

自分と好みやタイプが似た人の意見を参考にするZ世代。彼らの心に刺さる商品レコメンドとは?

ここまでは、協調フィルタリングを取り入れることによって生まれるメリットについてお伝えしてきました。ユーザーにとって、協調フィルタリングの魅力の1つは検索の手間を省けることにあると考えられます。そうであるならば、検索エンジンの利用度が低いといわれているZ世代は協調フィルタリングとの相性が良いと言えるかもしれません。

そもそも「Z世代は検索エンジンの利用度が低い」というのは本当なのでしょうか。確かにZ世代のユーザーは、気になることがあったら検索エンジンで調べるのではなく、SNSでハッシュタグなどを使って情報収集をすることが多いといわれています。ところが、Z世代を対象にした調査によれば、情報収集の際に最も頻繁に使用されるツールはGoogle、Yahoo!などの検索エンジン(日本インフォメーション株式会社とTrend Catch Projectによる共同調査、2021年)であることが明らかになっています。また、新しく知ったブランドや商品について情報収集する際、女性はInstagramを使用する割合が高いものの、男性は検索エンジンに商品名を入れて検索するユーザーも多い(SHIBUYA109lab.「Z世代のSNSによる消費行動に関する意識調査」2022年)といったデータもあり、一概に「検索エンジンの利用度が低い」とは言えないようです。

さらに興味深いのはツールの利用方法で、ハッシュタグなどで気軽に検索できてビジュアルイメージが伝わりやすいInstagramで商品と出会い、今世の中で起きている社会的なトレンドをTwitterでおさえ、はやりの音楽やダンスをTikTokで知り、その深堀り・補足のために検索エンジンを利用する、といったように、目的に応じて複数のツールを行き来しながら情報収集していることも明らかになっています。しかもその際、信頼できるインフルエンサーや自分と好みが似たユーザーなど、「信頼できる第三者のお墨付き」を得てから商品購入に至っているようなのです。

以上により、「検索エンジンの利用度が低い」とは必ずしも言えませんが、一方で「信頼できる第三者のお墨付きを参考に購買に至る」ことを考えれば、Z世代の行動原理は、協調フィルタリングの考えと好相性だと推測することができるでしょう。なぜなら、「信頼できる第三者のお薦め」とは、ユーザーベースの協調フィルタリングの考え方に近しいと考えられるからです。

Z世代は、SNSで共感できるインフルエンサーをフォローしたり、口コミサイトで自分と好みが似ている人からのコメントを見たりして、そこから得た情報をもとに、商品・サービスの購入を決めることも多い。これは、ある意味では自ら商品・サービスとの出会い方をカスタマイズ/パーソナライズしていることになります。つまり、普段から無意識のうちに、価値観ベースの協調フィルタリング的なアルゴリズムを実践していると言えるかもしれません。

だとすれば、協調フィルタリングがZ世代の消費行動にマッチしているのはもちろん、既に彼らの消費行動の中心は協調フィルタリングによるものであるかもしれません。仮に、協調フィルタリングを活用した奨励・推奨ベースのコミュニティを構築し、マーケティングに活用できれば、それはZ世代の消費行動を促進する有効なアプローチになる可能性があるのではないでしょうか。

また、協調フィルタリングがZ世代にとって有効であるならば、その親にあたるX/Y世代のデータも観測・分析することで、世帯属性ごとの消費動向を予測することもできるかもしれません。協調フィルタリングは、新しいマーケティングアプローチの可能性も秘めていると言えるでしょう。

 

「協調フィルタリングによる商品レコメンドはZ世代の心をつかむか?」という問いを立て、協調フィルタリングの基礎とZ世代の消費動向について解説してきました。問いに対する答えは「イエス」と言えそうです。むしろ「Z世代は協調フィルタリング的なロジックに基づいた消費行動を自然に実践している」と言った方が正確なのかもしれません。つまり、Z世代に商品・サービスを購入してもらうためには、いかに彼らの価値観と親和性があるか、共感できるポイントがあるかを訴求することが、強い後押しになるのではないでしょうか。こうした考え方を、今後の消費を担うZ世代へのアプローチを検討する上で参考にしてみてはいかがでしょうか。

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