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2023/03/30

“人に寄り添うAI”がクリエーティブをさらに先に進める。クリエーターの発想や能力を拡張する「∞AI(ムゲンエーアイ)」

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クリエーターの発想や能力を拡張するAIソリューション「∞AI(ムゲンエーアイ)」とは?今回はクライアントのビジネスを無限にグロースさせる「∞AI(ムゲンエーアイ)」開発プロジェクトに関わった、株式会社電通デジタル エクスペリエンステクノロジー部門 部門長の和田純一氏と、電通グループでAI開発をリードしてきたデータアーティスト株式会社(※) 代表取締役社長 山本覚氏に同プロジェクトについて話を聞きました。

クライアントのビジネスやクリエーターの力を“無限”に拡張するAI

Q.今回新たに開発された「∞AI(ムゲンエーアイ)」について教えてください。

山本:「∞ AI(ムゲンエーアイ)」は、お客さまのビジネスを無限にグロースさせるためのAIソリューションです。AIがテキストを読み込み、訴求ワードの抽出と訴求軸への割り振りを自動で行ってくれます。クリエーターの発想や能力を拡張する「人に寄り添うAI」をコンセプトに開発しました。

今までのクリエーティブ系AIは、テキストを入れるとその予測値が返ってくることに終始していたように思います。それはわれわれのクリエーティブに少なからず寄与するものではありましたが、ずっと続けていくとより良い予測値を返させるためにAIに寄せた発想になっていくんですよね。カラオケで例えると、カラオケの機械採点で良い点を取るには音程を合わせれば良いですが、本当の意味での歌唱力や表現力とは異なることと似ているかもしれません。
山本:「∞ AI(ムゲンエーアイ)」はそうではなく、プランニング観点で訴求軸を抽出、その中で3C分析などを行いながら市場ではどういうものが求められるか、競合他社はどのような訴求を出しているかを可視化してくれます。そのデータを基にクリエーターがどのような打ち手を考えればいいかの手助けをしてくれるわけです。
和田:「∞ AI(ムゲンエーアイ)」はクリエーティブ制作プロセス全般をカバーしていることも大きな特徴です。訴求軸の分析からコピー・デザイン生成、効果改善サジェストまで全てのサイクルを回すところをポイントとして開発しています。「∞ AI(ムゲンエーアイ)」というネーミングには、クライアントのビジネスやクリエーターの力を“無限”に拡張するという意味合いを込めています。

Q.効果予測をするだけではなく、制作プロセス一連をサポートし、人の発想を支援するAIなのですね。実際に「∞ AI(ムゲンエーアイ)」を使って制作したクリエーティブの事例を教えてください。

和田:本格提供前にいくつか先行事例を進めている途中ですが、「∞ AI(ムゲンエーアイ)」を使って社内セミナーの集客用バナーの改善を3週間にわたり実施しました。効果予測とサジェスト、そこから実際に制作するまでのPDCAをAIで回しています。
和田:このようにオリジナルバナーを改善AIにかけることで、効果の高いクリエーティブのサジェストを行ってくれます。「コピーの位置を下にする」「背景の彩度を上げる」といったところまでAIが見てくれるのです。
和田:制作したバナーの中で信頼度が高いものほど多くのユーザーにリーチし、インプレッションも増加しました。獲得CPA(Cost Per Action)も大幅に抑制でき、AIがサジェストしたものがナンバーワンクリエーティブになるなど優れた結果が出ています。まだ本格提供の前段階ではありますが、クライアント事例も進めている最中ですので今後も良いニュースをご報告できるのではないかと思っています。

統計の延長ではなく、クリエーターと向き合いながら良いクリエーティブを創るAIの可能性

Q.なぜ今、こうしたAIソリューションサービスの開発に力を入れられているのでしょうか。

和田:昨今のデジタルクリエーティブ制作ではAI活用がかなり盛んに推し進められています。デジタルクリエーティブにおいては訴求軸の開発、ターゲットに応じた膨大なクリエーティブ制作、そして結果を見て迅速な改善が肝要です。しかし人の力だけではどうしても限界があるため、現場ではAI活用が主流になっているのです。今回のプロジェクト開発にもそうした背景があります。

かつて広告主が特定の広告媒体と広告枠を買って掲載していた「純広告」から、複数の広告主の入札によって1impごとにオークションが行われる「運用型広告」が主流になっていることも、大きな理由に挙げられます。

Q.広告の仕組みが変わってきたことも要因なのですね。

和田:運用型広告を改善するレバーは「入札」「ターゲティング」「クリエーティブ」の3つです。旧来では「入札」と「ターゲティング」を人が調整し競合他社との差別化をしていましたが、現在ではプラットフォーマーの自動化(AI化)が進んで差別化が難しくなり、「クリエーティブ」が効果改善を左右する重要要素になってきました。だからこそ「∞ AI(ムゲンエーアイ)」の活用で自動化できる点を自動化し、クリエーターに寄り添いより良いクリエーティブを突き詰めることが重要だと考えています。

Q.AIを活用することが当たり前になってきた世の中だからこそ、より良いクリエーティブの価値が高まってきている、と。

山本:今まで国内電通グループではAIコピーライター「AICO」やAI-VTuber「タミ子」など、さまざまなAIクリエーティブを開発してきました。AI開発者の視点から言うと、まだまだ本質的なインテリジェンスから遠いものではありました。

しかしAIが知性に近いような「コピーライティングとは何ぞや」という本質的なことを学習するようになってきて、とりあえず膨大なデータをインプットするところから、次のフェーズへ移っている印象があります。最適化や予測値を弾き出すだけではなく、インテリジェンスの本質に迫る場面までAIが来ているのではないかと。統計の延長ではなくクリエーターに向き合いながら良いクリエーティブを創っていく。そこが今回のプロジェクトの大きなチャレンジでした。

Q.今回のソリューションにはそうしたAIの本質的な強みが生かされているように感じました。

和田:今回の「∞ AI(ムゲンエーアイ)」開発プロジェクトのテーマは2つあると思っています。1つは先に言ったようにクリエーターの能力をいかに拡張できるか。2つ目はクリエーターやクリエーティブの民主化という点です。

Q.クリエーターやクリエーティブを民主化するとはどういうことでしょうか。

和田:今までクリエーターしかできなかったことを、もっと多くの人ができるようにするということですね。営業やメディア運営者などクリエーティブの仕事をされている方以外でも、AIを活用することでより良いクリエーティブを創ることができますし、そのための視点を持って仕事に取り組めます。今まで電通デジタルが培ってきたノウハウをフィードバックし、さらにクリエーティブを先に進めるという点は大きなポイントだなと思いますね。

AIと共にクリエーティブの本質を突き詰め、より良い未来を創っていく

Q.ここまでお話を伺いましたが、「∞ AI(ムゲンエーアイ)」の活用によってクリエーターの役割はこれからどう変化すると思われますか?

和田:今回の「∞ AI(ムゲンエーアイ)」はクリエーターの発想や能力を拡張するものですので、AIが人に取って代わってしまうということにはならないと思います。人間の脳には限界があって、大量に何かを考えることは苦手です。一方、AIは物量を出すのが得意なのでそこをうまく補助してくれるのではないかと。AIが大量に抽出した要素の中にすごいヒントが隠れていることもあって、普段だと捨ててしまうものをAIが可視化してくれるからこそ気付くことってあると思うんです。

Q.人間が無意識に淘汰していたアイデアをAIが可視化してくれるということですね。

和田:その通りです。AIがヒントを出し、人間がそのヒントをさらに拡張する。AIが全てやるのではなく、AIが出したものを次の段階に進めるのはクリエーターの役割になるので、これからうまく共存していけるのではないかと思います。
山本:私もクリエーターからAIが何かを奪うことは全くなく、むしろより良い関係を築いていけると思っています。AIは何かを調べて学習し、一般化することが得意です。人間がAIに働きかけて、良いものを吸い上げて、それを繰り返し行うことで双方に良い効果をもたらしてくれるのではないでしょうか。人間VS AIになるのではなく、2者がタッグを組むことでよりクリエーティブも進化していくのではないかと考えています。

Q.最後にお2人が考えている進化のビジョンや今後の展望について教えてください。

山本:これから取り組もうとしていることはたくさんあって、生成内容含めて「∞ AI(ムゲンエーアイ)」ができることを増やし、全体で使えるソリューションにしていきたいですね。クライアントのCDP (Customer Data Platform)をつないで、AIにペルソナや世の中のモーメントをインプットして連携させるなど将来的な課題は山積みです。

AIは「この広告は効果が高い」と出力しますが、AI自体がなぜこのコピーやバナーが面白いのか、ということは分かっていないと思うんです。長期的なAI活用の視点だと、どうユーザーの琴線に触れたのかまで分からないといけない。だからこそ、今後は「良いクリエーティブとは何か」という本質的なことに真正面から向き合う必要があるのではないかと考えています。
和田:山本さんのおっしゃる通り、クリエーティビティの本質を突き詰めることはプロジェクトで大きく掲げているビジョンです。そこを追求し続けることでひとえに数値の結果だけではなく、全てのクリエーターの可能性を拡張し、世の中のクリエーティビティをより加速させられると思っています。これからの「∞ AI(ムゲンエーアイ)」に期待いただきたいです。

今回はクリエーターの発想や能力を拡張する「∞ AI(ムゲンエーアイ)」の事例を紹介しました。デジタルクリエーティブ制作ではプラットフォーマーの自動化によって、クリエーティブの価値がさらに重要になってきています。その中で人に寄り添い、全ての人に無限のアイデアと創造性をもたらす「∞ AI(ムゲンエーアイ)」はこれからのクリエーティブに大きなヒントを与えてくれるはずです。

 


 

本文で取り扱った話題以外でも、下記のような疑問や課題、ニーズをお持ちであれば、お気軽に本サイトのCONTACTよりお問い合わせください。

 

※ 電通デジタルは、電通グループでAI開発をリードしてきたデータアーティストと2023年4月1日付で合併いたします。

この記事は、過去に 2023年1月17日電通・電通デジタル「CX Creative Studio」公式noteで公開された記事を一部編集し掲載しています
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株式会社電通デジタル

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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