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2023/11/01

非財務活動は、企業価値にどのような影響を与えるのか。ビッグデータ分析による「非財務価値サーベイ」で、ESG経営の正しい舵取りを(前編)

INDEX

これまで、企業の価値は主に業績や財務状況などの「財務指標」で見ることが中心的でした。しかし昨今では、環境問題・社会問題への取り組みやガバナンスが企業の持続的な成長につながるとされ、ESG経営の重要性が認識されています。

こうした中、株式会社 電通株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)、株式会社アイティアイディ(以下、ITID)は、ESG活動や企業イメージ構築などの「非財務活動」が、財務指標や就職意向なども含めた企業価値に与える影響をビッグデータから分析する「非財務価値サーベイ」の提供を始めました。このサービスでは、財務データ、ESG評価データ、イメージデータなどのさまざまな実数データと意識データを統合的に分析して、企業の業績と非財務活動との関係や、自社にとって有望なESGテーマを見いだすことなどが可能です。

本記事では、同サービスに携わる電通の上西美甫氏と蟹江淳氏、ISIDの松山普一氏にインタビュー。前編では、「非財務価値サーベイ」の他にはない独自性、このサーベイによって見えてくる企業価値について話を聞きました。

企業イメージを左右する、非財務活動を独自に分析

Q.近年、ESG活動をはじめ、企業の非財務活動に対する注目が高まっています。そういった背景の中で、「非財務価値サーベイ」がリリースされました。このサービスは、どのような特徴を持っていますか?

株式会社 電通 上西 美甫氏
上西:企業の財務データ、ESG評価データ、イメージデータという3種類のビッグデータを掛け合わせ、どういったESG活動が企業の財務状況や就職意向に影響を及ぼしているのか、どのようなイメージが企業価値に影響を与えているのか、をロジカルに分析・可視化できるサービスです。特に、財務やESG評価だけでなく、企業イメージも交えて分析している点が電通ならではのポイントとなっています。

Q.ESG活動や非財務情報が重要視されている一方で、それがどれだけ企業の成長につながっているのか可視化されにくい、という課題をお持ちの企業は多いのではないでしょうか。そういった企業にとっては価値のあるサービスだと思いますが、このソリューションはどのような経緯でスタートしたのでしょうか?

松山:私は、ISIDのオープンイノベーションに関わる部署で、主に研究開発を行っています。当初はESG活動と財務の関係性について研究していましたが、電通の上西さんにこの活動を共有した際に、ESG活動が就職意向に及ぼす影響や、企業イメージを含めた分析をすると面白いのではないかという話になりました。確かに、就職先を検討する際、私たちは「PBR(株価純資産倍率)がいいから」という理由ではなく、企業が持つイメージで「この会社に勤めたい」と選びますよね。また、BtoCの企業であれば、サステナビリティ活動と製品のイメージがひも付いていた方が消費者に選んでいただきやすくなります。そこで、非財務活動と企業イメージの関係性も含めて可視化しようと、研究開発を進めていきました。
株式会社電通国際情報サービス 松山 普一
上西:私がこのプロジェクトに加わったきっかけは、ISIDがESG活動と財務の関係性を研究し始めたという記事を読んだことです。そこに、企業のレピュテーションやイメージデータを掛け合わせたら、電通グループとしての特徴を打ち出せますし、面白いサービスが生まれるのではないかと思い、記事内で取材されていた松山さんに連絡しました。
蟹江:私はITIDという会社のメンバーで、現在は電通のサステナビリティコンサルティング室に出向しています。ITIDは製造業向けのコンサルティングに強みのある企業ですが、ビジネスを展開する中で、製造業の開発部門で用いているコンサルティング手法が幅広く応用でき、社会全体の価値創造に貢献できることに気付き、現在では幅広い業種や領域のコンサルティングを行っています。ESGは今後の企業経営で非常に重要になるテーマだと思って注目していたのですが、ISIDの松山さんが取り組んでいることを知り、相談して一緒に研究を始めました。現在は、その時の経験を生かし、電通に出向してサステナビリティを企業の成長へつなげる取り組みに携わることになりました。

非財務活動の現状、今後の課題を的確に分析

Q.このサービスでは、企業が今取り組んでいる非財務活動の評価が分かるのでしょうか。それとも、企業が今後力を入れるべきESGテーマが見えてくるのでしょうか?

蟹江:両方です。まず現在取り組んでいるESG活動については、どのような評価を得ているのか、そして競合他社と比べて優れているかどうかの2点が分かります。

今後力を入れるべきテーマを導くという点については、過去3年間で就職意向や消費者の購買意向を高めた企業が、どのようなESG活動に取り組んできたのか、あるいはどのような企業イメージを高めてきたのかという分析がベースとなっています。例えば過去3年間でトレンドになっているESG活動があれば、まだ取り組みが不十分な企業に対して「こういうテーマでESG活動を行えば、今後成果が生まれるのではないか」といった仮説を示しています。一方、先進的な取り組みを行う企業に対しては、まだどこも手を付けていない領域を見つけ出し、新たな可能性を提示することもしています。

現状を踏まえた上で、今までにない新しい取り組みに挑戦したいという企業に対しては、電通 サステナビリティコンサルティング室で、また違ったソリューションも用意しています。今後2030年までに課題になりそうな25のテーマを提示して問題解決に取り組んだり、サステナビリティ領域におけるロードマップを用意し、業界別のサステナブルイベントを提示したりすることで、これまでにない取り組みを発想し、活動の幅を広げていただいています。
株式会社 電通 蟹江 淳氏
上西:このサーベイを導入していただいたクライアント企業さまには、その状況に応じてワークショップも実施しています。サーベイの結果をもとに、企業として今どのような状態にあるのか図にプロットし、市場や競合他社の状況を踏まえ、どのような活動をすればいいのか話し合いながら検討できます。定型のサーベイレポートとワークショップの組み合わせで、クライアント企業さまをサポートする仕組みです。

Q.このサーベイでは、ステークホルダー別、市場別に効果的な非財務活動、ESGテーマを抽出できるそうですが、この場合のステークホルダーとはどのような相手を指すのでしょうか。

蟹江:投資家、就職希望者、生活者・消費者の3者を指しています。どのようなESG活動によって企業イメージが上がり、ステークホルダーの評価が高まって、財務状況が良くなるのか。その流れを分かりやすく示すことができます。

これまでには、特定のステークホルダーに集中してマネジメントする顧客至上主義や株主資本主義の時代がありましたが、今後サステナブルに事業を進めるには多くのステークホルダーからの評価を高めることが重要です。ステークホルダー資本主義の実現に向け、「非財務価値サーベイ」を活用していただけたらと思います。

 


 

ESG活動の重要性を理解しつつも、どのような取り組みが財務や採用に効果的なのか、把握しかねている企業も多いのではないでしょうか。自社のESG活動の強みと弱み、これから力を入れるべきESGテーマなどを明確にするためにも、非財務活動が企業価値に与える影響を今一度見直してはいかがでしょうか。インタビュー後編では、企業がESG活動に対して抱える課題について、さらに掘り下げていきます。

電通では、ビッグデータの活用・分析・コンサルティングを通じて、企業のサステナブル経営の実現に貢献しています。ぜひCONTACTからお問い合わせください。

 

※ 2024年1月1日に電通国際情報サービス(ISID)・アイティアイディは統合し、社名を電通総研に変更します。

この記事の企業サイトを見る
株式会社 電通 株式会社電通総研

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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