毎日のお買い物を通して社会課題解決のための取り組みができるプロジェクト「お買いいもの~It's Shopping for Good.~」。メーカー、決済サービス会社、小売業各社の連携による共同プロジェクトの第2弾が、2023年9月1日(金)から9月30日(土)まで実施されています。
昨年の第1弾では、約30万人の消費者が参加し、約1,150万円の社会貢献団体への寄付を実現するなど好評を博した本プロジェクト。そこで本記事では、初年度からプロジェクトに参画している花王グループカスタマーマーケティング株式会社の牧野真也氏、足立絢香氏、株式会社NTTドコモの原壮一氏、そして運営を担う株式会社 電通の川畑茉衣氏に、プロジェクト発足の背景や今後の目指す姿を聞きました。進行役は、サステナビリティ視点での企業経営をサポートする電通サステナビリティコンサルティング室の竹嶋理恵氏。前後編の2回に分けてお届けします。
ハードルが高い「サステナビリティ」を、もっと身近なものへ
竹嶋:最近はさまざまな企業がSDGsやESG経営に取り組み、消費者にも社会課題に取り組むことが大切だという認識は広まっていると思います。とはいえ、実際行動に移そうとしたときに、ハードルが高いというのも現実的な問題としてありますよね。そんな中で、このような日々のお買い物を通してサステナブルな行動ができるというキャンペーンは、素晴らしい取り組みだと思います。あらためてキャンペーンの概要や発足した経緯を教えていただけますか?
川畑:キャンペーンは、対象期間中に対象店舗で「d払い」もしくは「PayPay」で対象商品を購入すると、お買い物額の1%が購入者が選ぶ社会貢献団体に寄付され、購入者にも最大10%のポイントが付与されるというものです。参画メーカーさまも、本プロジェクトを通じて、対象売り上げの1%を社会貢献団体に寄付する仕組みになっています。今年参画いただいたのは、花王さま、アサヒ飲料株式会社さま、ホーメルフーズコーポレーションさまの3社。対象店舗は小売業17社55チェーンのスーパーマーケットやドラッグストアなどです。
「お買いいもの~It's Shopping for Good.~」プロジェクトの仕組み牧野:キャンペーン発足の背景の1つとして、花王グループ全体でさらなる「質・絆」を重んじたモノづくりへのチャレンジをするという意識の変化がありました。しかし、1社単独でできることに限りもあります。そして「さらに大きなうねりをつくりたい」「生活者の皆さまの意識や行動を変えるきっかけになるような取り組みがしたい」と思い、電通さんと共にプロジェクトを立ち上げました。売り上げだけを追っていくようなプロモーションではなく、小売業の皆さまと一緒に消費者とのエンゲージメントを高めて、お客さまとの「絆」を構築していきたいと考えていたのです。
原:社会インフラの1つである通信を提供しているドコモとしても、国や地域、世代を超えて、人々がよりあんしん・安全かつ快適で豊かに暮らすことができる社会を目指し、日頃からカーボンニュートラルをはじめとした、さまざまな社会貢献活動に取り組んでいます。プロジェクトの話を聞いた時、生活に欠かせないお買い物という行為が社会貢献につながるというのは、とても良いことだなと思いました。きちっと経済を回しながらもサステナビリティに貢献できるというのは、われわれが掲げている企業理念とも合致しています。
自ら寄付先を選べる、透明性のある社会貢献を意識
川畑:昨年実施した第1弾では、約30万人の方に参加していただき、1,000万円を超える寄付を行うことができました。SNSなどで消費者の反応を見てみると、「気軽にできるのがいいよね」「日常の延長線上で社会貢献できるのがいいよね」という声が多く、総じてポジティブな印象を抱いていただけたようです。
足立:実際、店舗で対象商品を販売する小売業の皆さまからも、良い反応をいただいています。社会貢献活動に気軽に参加できることに加えて「企業として既にSDGsに取り組んではいるものの、お客さまにうまくアプローチできていないので、そのきっかけとなったのがありがたい」との声もありましたね。
花王グループカスタマーマーケティング株式会社 足立 絢香氏川畑:また、このプロジェクトで特徴的なのが、寄付先を消費者が自分で選べる点。「何かを買うと寄付されます」という取り組みは多いですが、それが何に使われたのかが分からなかったり、決められたところに自動的に寄付されたりというケースもあるのに対し、「お買いいもの」プロジェクトは、消費者が「実現したい社会」というテーマから寄付先を選ぶことができます。選ばなければ全ての団体に均等に寄付される仕組みなのですが、前回は30万人中、約5万人が自ら寄付先を選択していました。わざわざサイトへ訪れて、能動的なアクションを起こしてくださった方がそれだけいたというのは、大きな価値だと考えています。お買い物を通してより良い社会について考える、プチ政治参加のような機会にできたらと思っています。
第2弾では、6つのテーマから寄付先を選択できる原:ドコモにも「寄付先の活動内容を知りたい」「実際、寄付はどのように使われるの?」という問い合わせをいただいていて、消費者の関心の高さを実感しています。
川畑:寄付先の各団体には、寄付されたお金をどのように使ったのか具体的に報告いただいて、それをサイトに掲載したり、ドコモさんにご協力いただき、昨年ご参加いただいた方にメッセージでご報告をするなど、寄付いただいたお金がどういう社会貢献活動につながっているのかを可視化することには、特に力を入れています。
竹嶋:自分が起こしたアクションが「何のためのものか」「どんな成果を生んでいるのか」といった情報を消費者に共有することは、サステナブルな活動を続けていくためのヒントになるかもしれないですね。
1社だけではできない、消費者が参加しやすい仕組み
川畑:昨年の実績をお話しすると、メーカーでは花王さまのほかに食品系1社にご参画いただいたのですが、この2社の併買率が高かったのも大きな特徴でした。1社によるキャンペーンではなく、企業や業種を横断しているというのも消費者が参加しやすい仕組みになっているのかもしれません。昨年のキャンペーンではポイント付与や寄付をするために、1度の決済で税込1,000円以上を購入する必要がありましたが、今年は1カ月ある期間の累計で税込1,500円以上が対象になりました。参加メーカーさまも昨年から1社増、決済プラットホームも1つ増えたので、第2弾は消費者がより参加しやすいキャンペーンにアップデートできたと思っています。
株式会社 電通 川畑 茉衣氏原:売り場の方も、今年は総合スーパーさんの参加も増えたので、キャンペーンに参加する消費者の層も広がるのではないかと考えています。サステナビリティへの視点を持ちつつも、会社の維持という点では売り上げといった数字の部分も重要です。バランスをうまく取って、参加者を増やしていく仕組みをつくっていくのが大切ですよね。
竹嶋:メーカーや流通、そしてペイメントを支える通信会社という異なる業種の皆さんが同じ志を持って、それぞれの強みを持ち寄って連携している点も素晴らしいですよね。プロジェクトの立ち上げはもちろん、社内のさまざまな部署を巻き込んだり、お客さまに賛同していただいて形にしたりしていくのはとても苦労があったと思いますが、社会課題に対するアプローチの1つとして、とても参考になる取り組みだと思います。
一見ハードルが高そうに見える社会貢献活動に、日常の延長線上で参加できる仕組みをつくった「お買いいもの」プロジェクト。昨年は約30万人もの消費者が参加して一定の成果を上げました。プロジェクトを一過性のものではなく、継続的な取り組みにしていくために、これからどのような展開を考えているのでしょうか。後編では、キャンペーンを通して目指す世界観や今後の展望などについて語っていただきます。
販促活動を通じての社会貢献活動に興味がある企業の方やプロジェクトの理念に共感し、参画を希望する方は、ぜひ一度電通グループにお問い合わせください。まずはCONTACTから。
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※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。