サントリーホールディングス株式会社と電通グループの協業で生まれた、ミスト状のサプリメント「IN MIST(インミスト)」。ローンチ後たちまち評判を呼び、「2023年度グッドデザイン賞」を受賞しました。
ミストタイプという新しい形のサプリメント「IN MIST」について、前編に引き続き、サントリーホールディングス株式会社の長田知也氏、株式会社電通コンサルティングの八木薫郎氏、プロダクトのアートディレクターを務めた株式会社 電通の深沢夏菜氏に、お話を伺います。進行役は、電通コンサルティングの加形拓也氏。グッドデザイン賞受賞の経緯やプロダクトを開発する中での苦労、そして今後の展開について語ります。
製品化を実現させたプロダクトへの「愛」
加形:「IN MIST」は、サプリメントが錠剤であるが故の「飲みづらい」とか「飲み忘れてしまう」というペインを、ミスト状に置き換えたことで解消したことへの価値が大きいですよね。こうした点も評価の要因となって、「2023年グッドデザイン賞」の受賞となったわけですが、そもそも応募してみようと思ったのはなぜですか?
八木:開発時は賞を狙う気持ちは全くありませんでした。でもローンチ後に思ったのが、「IN MIST」というまだ知名度のない、しかも「ミスト状のサプリメント」という特殊な商材を購入するのは勇気がいる、ということ。やはり公正な第三者からの分かりやすい評価があった方が安心感につながるだろうと考えました。それに、クラウドファンディングで応援してくれた方々へ何かお返ししたいなと思い、応募することにしたのです。
加形:受賞にあたって、どの辺りが評価されたとお考えですか?
深沢:これまでにない、ミスト状のサプリメントがもたらす価値が一番のキーだったと思います。パッケージデザインが良いとかそういうことではなく、新しい価値観、機能、提案といったところが評価されたのではないかと。どういう飲み方、使い方をするのかが一発で分かる伝え方をしたのが、ポイントだったと思いますね。
加形:元々は八木さんが、個人的な思いからオープンな新規事業コンテストに応募したものが、こうして日の目を見たわけですが、アイデアを形にするまで、どんなご苦労がありましたか?
八木:私がこの企画に携わり始めたのは、もう5年ほど前のこと。当時は入社2、3年目でしたが、ミストが出そうな噴射機をインターネットでたくさん買って、社内でハンマーで叩いて壊して中を観察したり、中の部品で電子回路を作ってミストを噴出する実験をしたりしていました。そんな私のことを、周りの先輩たちは「若い変な奴が、何かやっている」という感じで見ていたと思います。
長田さんと一緒に試行錯誤する中で、プロジェクトが何度も頓挫しかけました。コロナ禍を挟んでいたので、中々コミュニケーションが取れない時期もあったり、長田さんの人事異動などにより中断せざるを得ないタイミングもありました。「ミストを飲む」というコンセプトは、なかなかなじみのないものですし、どうしても人は新しいものに対して否定的になってしまうもの。やはり、スタートアップ的な取り組みは、否定されることの連続でした。
でも、長田さんも私もこのプロダクトをとにかく愛していて、どうやったら世の中に出せるだろうかとずっと模索し続けていました。自分たちが生み出した絶対に価値のあるプロダクトを、責任を持って世に出そうととにかく必死に駆け回っていたんです。だから、ローンチ後、当時の私を見ていた人たちから「買ったよ!」と言ってもらえたときは、喜びもひとしおでしたね。
長田さんと一緒に試行錯誤する中で、プロジェクトが何度も頓挫しかけました。コロナ禍を挟んでいたので、中々コミュニケーションが取れない時期もあったり、長田さんの人事異動などにより中断せざるを得ないタイミングもありました。「ミストを飲む」というコンセプトは、なかなかなじみのないものですし、どうしても人は新しいものに対して否定的になってしまうもの。やはり、スタートアップ的な取り組みは、否定されることの連続でした。
でも、長田さんも私もこのプロダクトをとにかく愛していて、どうやったら世の中に出せるだろうかとずっと模索し続けていました。自分たちが生み出した絶対に価値のあるプロダクトを、責任を持って世に出そうととにかく必死に駆け回っていたんです。だから、ローンチ後、当時の私を見ていた人たちから「買ったよ!」と言ってもらえたときは、喜びもひとしおでしたね。
長田:現在私は、サントリーホールディングスからゼロワンブースターに出向していますが、サントリーの社内ベンチャープログラムの1期生でもあります。なので、社外で頑張っている姿を見せることがとても大切だと思っていました。だから、このようなユニークなプロダクトを世に出せたことも、グッドデザイン賞を受賞できたことも、大きな意味のあることだと思っています。
深沢:私も、デザイナーとして自分のキャリアを象徴するようなプロジェクトに携わることができてとてもうれしいですし、今後もっとこうした取り組みをやっていきたいですね。
「右脳×左脳×異能」でクライアントの課題を解決
加形:今回、2者の協業プロジェクトのような形になりましたが、一緒に組んで仕事をしてみていかがでしたか?
長田:最終的にはゼロワンブースターの商品として発売するものの、電通グループのお二人とも自分ごととして「IN MIST」を考え、共同創業者のようにプロジェクトに取り組んでくださったのが、大変心強かったです。「これお願いします」「分かりました」という発注者と被発注者の関係ではなく、「これを良くするためにどうしましょうか」と一緒にやれたのは、お二人だったからこそだと思います。
八木:私はコンサルファームにいながらも、あまり自分のことをコンサルタントだと思って動いてはいません。インサイトや課題を発見していく探索的なフェーズを社内で任されることが多いのもあって、フレームワークやロジックを積み上げて計画的に進めるやり方はせず、大切にしているのは、できるだけクライアントさまと顔を合わせて、話し合って、声をたくさん聞きながら一緒に作っていくというスタイル。このプロジェクトでも、長田さんのオフィスにアポなしで急に行って、「今、大丈夫ですか?」と話しかけて、2人でブレストしながら進めていくといったことをずっとやっていました。
加形:電通コンサルティングでは、ロジカル思考とデザイン思考を掛け合わせ、さらに外部の異能人材とコラボレーションしてプロジェクトを推進する「右脳×左脳×異能」をコンセプトとして掲げています。八木さんは、まさにそれを体現するやり方ですね。
世界中に健康習慣を届けるブランドへ
加形:今後、「IN MIST」をどんなふうに展開したいと考えていますか?
長田:「世の中に新たな栄養補給の形を提案する」というミッションを本当の意味で成し遂げるためには、ラインナップを増やしていきたいですね。「IN MIST」を活用しながら健康的な生活を送る人をたくさん増やしていきたいです。海外にもこのタイプのサプリメントはないと思うので、世界中の人に手にしてもらえるブランドに育てていきたいです。
八木:健康習慣を届けるプロダクトであり続けたいですね。例えばジョギングを始めるとか、1つでも健康にまつわる習慣ができると、他の習慣にも踏み出しやすいと思うんです。「IN MIST」は極めてミニマムな方法で健康習慣を手に入れられますから、多くの人の健康的な生活の入口となれるような、そんなプロダクトになるとうれしいです。
加形:最後に、新規事業をやってみたい、新しいことにチャレンジしたいと思っている人へ、アドバイスをいただけますか?
長田:何事も、最初は「思い」から始まるのではないでしょうか。一歩を踏み出すのは「勇気」が必要だと思いますが、このような仕事は、失敗しても死ぬわけではないので、思いがあるんだったらやってみたらいい。「一度きりの人生なんだから、チャレンジしたらいいじゃないか」と思います。
多くの人に、新たな健康習慣の入り口をもたらす、ユニークなプロダクト「IN MIST」。人生100年時代と言われる中、健康寿命を延ばすことは社会的なテーマになっています。「IN MIST」はその一助となるかもしれません。
電通グループでは、クライアントに寄り添い、さまざまなソリューションを提供しています。新規事業立ち上げや商品開発で障壁に直面している方や、自社のビジネスに課題感をお持ちの方は、ぜひ一度、CONTACTからお問い合わせください。