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2022/04/15

Web3.0時代の到来で何が変わる?デジタル社会の変革で生まれる新たなビジネススタイルとは

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近ごろ、時代を表すキーワードとして熱い注目を集めている「Web3.0」。デジタル社会のみならず、さまざまな分野で地殻変動をもたらす可能性を秘めているといわれています。ブロックチェーン技術を基盤とした、分散型のインターネット時代が到来すれば、マーケティング分野でも今までにない発想が求められるようになるはず。この記事では、「Web3.0は、マーケティングの世界にパラダイムシフトをもたらすのか?」という問いを立て、Web3.0の本質やビジネスに与える影響について探っていきます。

今、「Web3.0」という変化の大波が押し寄せている

「時代はWeb3.0!」と盛んにいわれていますが、今までとどう変わるのか、自分の仕事にどう関係するのか、いまひとつピンとこないという方も多いかもしれません。そこで、まずはインターネットの歴史を振り返り、Web1.0からWeb3.0へ至る変遷をたどってみましょう。

Web1.0:一方向の発信
Web1.0と呼ばれているのは、インターネットの普及が急速に進んだ1990年代後半ごろ。1992年、日本で初めてのインターネットサービスプロバイダがサービスを開始。日本においても、誰もがインターネット上の情報にアクセスできる環境が整備されるようになりました。
ただしWeb1.0においては、ユーザーは情報を閲覧するのみで、自由に編集したり自ら発信したりすることはできませんでした。つまりWeb1.0は一方通行の発信で、ユーザーの用途は受動的に情報を収集することに限られていたと言えます。

Web2.0:双方向のコニュニケーション
2000年代以降は、より幅広い場面でインターネットが活用されるように。特に大きな変化はブログやSNSの登場です。インターネットの用途が「見る」から「参加する」へと移行し、発信者と受信者の双方向のコミュニケーションが可能になりました。
その一方で、世界的な検索エンジンや通信販売サイトなどを有する巨大プラットフォーム企業の影響力が強まり、インターネット環境が中央集権化された時代とも言えます。

Web3.0:分散型管理の時代へ
Web2.0の中央集権的な構造から脱却し、インターネットの在り方を再構築することを目指すのが、Web3.0です。ブロックチェーンなどの新しい技術によって、プラットフォームを介さずにユーザー同士が直接つながり、経済圏を作り出していくムーブメントとされています。

Web2.0にあたる現在は、「プラットフォーム依存」が懸念されています。ユーザーが情報を発信したり受け取ったりするためには、何かしらのプラットフォームを経由する必要があり、個人のデータやコンテンツは常にその管理下に置かれます。

このような構造の下では、サイバー攻撃による個人情報の流出、データの不正利用によるプライバシーの侵害など、さまざまなリスクや不安が付きまといます。特定企業に情報が集中すればするほど、根幹となるデータの書き換えや消失が起こったとき、ユーザーは大きな不利益を被るでしょう。この記事をお読みいただいている方の中にも、実際に身につまされる経験をした方がいるかもしれません。こうした状況から、Web2.0には限界が見え始めているとも言われています。

「パワーの源は個人にあり」。それが、Web3.0の核心


Web2.0が抱える問題が表面化してきたことで、そのアンチテーゼとして生まれたのがWeb3.0という新たな潮流です。Web3.0においては、巨大プラットフォームに依存することなく、1人ひとりがデータやコンテンツを所有・管理し、中央管理者などの仲介なしに、ユーザー同士で直接、情報やお金のやりとりをすることができます。

これらを可能にするのが、ブロックチェーン技術。「分散型台帳技術」とも呼ばれるこの仕組みは、仮想通貨「ビットコイン」を実現するための技術として生まれました。ブロックチェーンでは、暗号化された情報を「ブロック」と呼ばれる単位に小分けにし、「チェーン(鎖)」のように連結させながら複数の場所に分散させています。運営管理の中心となるサーバーは存在せず、ネットワーク上の全ユーザーがデータを共有・管理することで、システム障害などのトラブルからデータを保護したり、データのコピーや改ざんを防いでセキュリティを維持したりすることができるのです。

もう1つ、Web3.0において重要なのは、「価値証明」や「透明性の保証」です。例えば、ブロックチェーン技術を活用した仕組みとして最近注目されているNFT(Non Fungible Token:非代替性トークン)は、個人のデジタルデータに固有のIDを割り当てることで、データの唯一性や希少性を証明します。これにより、本物と偽物の区別がつきにくいという従来のデジタルデータの課題がクリアされ、ユーザーはデジタルデータを資産として所有できるようになりました。

さらに、ブロックチェーン上では、過去のやり取りの履歴が全て記録されるため、ユーザーはそれを追跡・閲覧できます。Web3.0では、こうした仕組みによってデータの価値や透明性が保証されるため、一定の安心感を持って個人間で情報や資産のやり取りをすることができるのです。

このようにWeb3.0は、ブロックチェーン技術を軸として「分散管理」「価値証明」「透明性」を特徴とする新たな世界を形成します。情報の所有権や管理権を、従来の巨大プラットフォームから個人へと移行・分散させるWeb3.0は、Web2.0と比べて「個人」の権利が尊重される時代になると言えるでしょう。そもそもインターネットがもともとフラットで民主的な世界を理想として誕生したことを思い起こせば、Web3.0はその黎明期の理想に立ち還ろうとしていると見ることもできるのではないでしょうか。

来る新時代には、ビジネス領域にも地殻変動の可能性が


では、「分散管理」「価値証明」「透明性」を大きな特徴とするWeb3.0時代が到来したら、マーケティングなどビジネスの領域にはどのようなパラダイムシフトが起きるのでしょうか。

Web3.0はまだ発展途上の概念で、「マーケティング上の標語に過ぎない」といった見方もあります。しかし、Web3.0が提示する非中央集権的な考え方は、既にさまざまな分野に波及し始めているという見方もできます。Web3.0の文脈につながる取り組みを、実際の事例で見ていきましょう。

事例1:DAppsによるブロックチェーンゲーム
DApps(分散型アプリ)とは、ブロックチェーン技術を活用し、中央サーバーを経由せずにサービスや機能を提供する、Web3.0文脈のアプリのこと。このDAppsによる日本発のブロックチェーンゲームが注目されています。プレイヤーは、NFT化されたキャラクターやアイテムを所有・コレクションすることができ、希少価値の高いものは高値で売り渡すことも可能です。

事例2:NFTアートの収集コミュニティ
Web3.0においては、DAO(自律型分散組織)と呼ばれる、新しい組織構造も生まれています。これは、中央集権的な上意下達の指揮系統を持たず、参加者全員による意思決定・共同管理によって成り立つコミュニティです。ブロックチェーン上に構築され、誰でも参加できるもので、DAOを活用した今までにないサービスも登場しています。

例えば、NFTアートの収集を目的とする有名なDAOでは、過去には数千万円におよぶ高額なNFTアートを落札。個人ではなく、DAOという集団が落札したことで、大きな話題を呼びました。入手したNFTを担保に資金調達をしたり、自らが制作したNFTアートを販売したりと、その活動は多岐にわたっており、今後もその動向が注目されます。

事例3:プライバシー保護と仮想通貨獲得機能を搭載したWebブラウザ
トラッキングによる個人情報の収集や広告の最適化は、企業によるプライバシーの侵害やセキュリティリスクにつながる問題として、近年ユーザーの関心を集めています。そうした中、プライバシー保護に配慮したWebブラウザが開発されました。

このWebブラウザでは、不要な広告の表示や、ユーザーの同意がない個人データの取得をブロックする機能を標準装備。広告表示に同意したユーザーは、広告を閲覧することで、独自のポイント(仮想通貨)を獲得できるなど、新たな経済圏の構築にもつながる仕組みです。

上記3つの事例は、「分散管理」「価値証明」「透明性」というWeb3.0の特徴を体現したサービスです。こうした既存のサービスをヒントにしながら、来る時代のデジタル施策の在り方を考えれば、革新的なアイデアがひらめくかもしれません。

例えば、自社ブランドのデジタルコンテンツをNFT化して新たなファン体験を創造したり、個性的な作品を作るクリエイターと仮想世界でコラボレーションしたりすることも可能でしょう。メタバースの中でゲームをプレイするごとに報酬を得られたり、NFTをインセンティブにしたりといった取り組みも既に行われています。さらに、デジタル世界における絶対的な価値証明が可能となる環境においては、クリエイターやブランドがプラットフォームに依存しない形で商品・サービスを取り引きする、本来の意味での「直販」へと移行していくことも予想されます。

かつてWeb1.0からWeb2.0時代に突入したとき、SNSによる情報発信、インフルエンサーやクチコミを活用した宣伝活動、ターゲティング広告など、Web1.0時代には想像すらしなかった変化がマーケティング分野に起こりました。それと同じように、Web3.0時代のデジタル施策においても、「巨大プラットフォームによる管理」から「個人の権利を重んじる時代」へと向かう潮流のもとで、既存の枠組みにとらわれることのない、大胆な発想の転換が求められるかもしれません。

 

テクノロジーの進歩とともに、インターネットは人々の生活を豊かにし、利便性を向上させてきました。さまざまなリスクや問題点が指摘されるWeb2.0が限界を迎えようとしている今、Web3.0にはインターネット環境を根本から作り替えるような思い切った変革が期待されています。プラットフォームによる中央管理から、個人の権利を重んじる分散管理へ。時代の変化を先取りしたデジタル施策が、この先のビジネス・マーケティングを考える上での核心となっていくのではないでしょうか。

電通ジャパンネットワークでは、Web3.0の流れを意識したビジネスのアイデアやソリューションを多数ご提供しています。自社のマーケティング施策をアップデートする足掛かり、まずはお気軽にページ下部「CONTACT」よりお問い合わせください。

 

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Transformation SHOWCASE 編集部

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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