株式会社 電通グループ は、株式会社VARKとの事業共創により、メタバースを活用したマーケティングや事業展開を支援しています。その一環として共同開発したのが、メタバース空間上のバーチャルフェス会場「VARK ARENA(バークアリーナ)」。2022年11月には、この会場を利用したイベント「テレ東バーチャル音楽フェス」が開催されました。
今回は、株式会社VARK 執行役員 杉本豊氏、株式会社 電通 ラジオテレビビジネスプロデュース局 伊藤弘和氏、株式会社 電通グループ イノベーションイニシアティブ 小山祐樹氏に、「VARK ARENA」の可能性についてインタビュー。前編では、「VARK ARENA」の開発経緯、イベントの反響について聞きました。
バーチャルライブ会場を共通基盤化し、イベント開催コストを削減 Q.はじめに、VARKがどのような事業を展開しているのか、杉本さんからご紹介いただけますか。
杉本: VARKは、もともとバーチャルライブのプラットフォームを制作・運営する企業でした。特徴は、他社のプラットフォームよりもライブへの没入感が高いこと。かつ、いくつかの特許技術により、VARK独自の体験を提供してきました。そこから発展し、近年はカラオケなども楽しめる、バーチャルライブに特化したメタバース空間を運営しています。
株式会社VARK 杉本 豊氏 Q.あらためて「VARK ARENA」の概要、その特徴を教えてください。
小山: 「VARK ARENA」は、メタバース空間上でさまざまなアーティストのオンラインライブに参加できるバーチャルフェス会場です。VARKがこれまでに開発した「VARK」アプリには、魅力的な施設や機能がたくさんありました。一方、電通グループにおいては、放送局・映画会社・出版社などの幅広いコンテンツホルダーに対応できるバーチャル空間を作れないかと課題を感じているところでした。そこで、バーチャルイベント会場の設計、ライブ制作に必要な機能を共通基盤化し、ハイクオリティーでありながら素早く、コストもコントロールしながらイベントを開催できる「VARK ARENA」を共同開発したのです。
杉本: 会場のデザインや機能は、クライアントさまのご要望に応じてカスタマイズも可能です。1から会場を作るよりも、コスト、期間ともに大幅に削減できます。
Q.伊藤さんは「VARK ARENA」とコンテンツホルダーの橋渡しをする立場でいらっしゃいますよね。どのようなテーマや課題意識のもとで、このプロジェクトに参加しているのでしょう。
伊藤: 私は、Cross MC Transformation プロジェクト(MCx)というバーチャル組織で、「コンテンツ×テクノロジー」を軸に、メディアコンテンツ企業とユーザーの接点をつくり、ユニークな体験を提供することで、メディアとデバイスのボーダレス化をテーマに活動しています。これまでは個別に取り組むことも多かったのですが、「VARK ARENA」のようなアセットを持つことで、バーチャルエンターテインメント事業へのさらなる拡張を目指せると考えています。
ライブはファン同士、ファンと出演者の交流の場に Q.2022年11月には、「VARK ARENA」を会場にしたイベント「テレ東バーチャル音楽フェス」が開催されました。その経緯をお聞かせください。
伊藤: 開催の約半年前から、テレビ東京のプロデューサーと「視聴者へ新しい形でコンテンツを届けることができないか」と議論を重ねていました。そんな中、さまざまなアーティストが出演し、世代を問わず幅広いファンに届けるバーチャル音楽イベントの企画が立ち上がったんです。
株式会社 電通 伊藤 弘和氏 Q.プラットフォームを構築した杉本さんは、「テレ東バーチャル音楽フェス」の開催によってどんな発見がありましたか?
杉本: テレビ東京の皆さんがフットワーク軽く動いてくださり、アーティストのブッキングやテレビ番組での告知など、マーケティング領域も含めてさまざまなご支援を頂きました。制作期間の問題から、情報発信にもっと力を入れられれば良かったという反省はありますが、私たちだけでは実現できないような大きなイベントを作り上げることができましたね。
Q.ユーザー視点で捉えたときに、「VARK ARENA」はどのような体験を提供できたと思いますか?
伊藤: 「テレ東バーチャル音楽フェス」では、リアルアーティストの360度映像、VTuber、アニメIP、覆面アーティスト、テレビ東京の森香澄アナウンサーのアバターという複数の軸でコンテンツをお届けしました。今までこれらが並列で見られる場はなかったので、いろいろな体験を詰め込めたことは1つの成果だと思います。それぞれファン層も違いますし、見たいライブも違うので、コンテンツのカスタマイズやタイムテーブルの作り方も勉強になりました。 また、ARENA内に実装したカラオケ施設も今後に期待しております。見るだけでなく、ファンと出演者が身近に交流できるというのはメタバース空間だからこそ提供できる楽しさですし、今後の発展の余地を感じました。
杉本: 事前施策としてフェスへの出演権を懸けたVTuberの総選挙を実施したのも、面白い取り組みでした。応援したい候補者のアバターTシャツを購入した上で投票していただいたのですが、バーチャルライブ会場ではTシャツを着たファンが集まり、スクリーンショットを撮影して楽しむ姿も。バーチャル空間でも、ファン同士のコミュニケーションも含めてイベントが成立するんだという手応えを感じました。
小山: いろいろな形でリアルとバーチャルが融合していましたよね。あるVTuberはバーチャル空間での「テレ東バーチャル音楽フェス」と、テレビ地上波の「テレ東音楽祭」の両方に出演するなど、リアルとメタバース空間を行き来するような体験を提供できました。今後、演出面をさらに詰めていくと、今までにないコンテンツを届けられるのではないでしょうか。
株式会社 電通グループ 小山 祐樹氏 Q.「テレ東バーチャル音楽フェス」開催後の反響はいかがですか? 例えば企業さまから「自社でも活用したい」というお問い合わせはありましたか?
伊藤: さまざまなメディアコンテンツ企業からお問い合わせをいただいています。これまで放送局をはじめとするメディアコンテンツ企業では、投資事業の1つとしてメタバース開発に取り組んでいました。ですが「VARK ARENA」を利用すれば、コンテンツ制作のバリューチェーンの中にインクルードすることで、今までよりも手軽に実施が可能になります。私たちが目指した形になりつつありますし、熱量の高いプロデューサーの皆さまがコンテンツを世に届ける空間になっていくのではないでしょうか。
バーチャルライブ会場を共通基盤化し、低コストで高クオリティーなオンラインイベントを開催できるようにした「VARK ARENA」。ユーザーへのコンテンツの届け方を模索するメディアコンテンツ企業からは早くも引き合いがあり、高い注目を集めていることが分かります。後編では、「VARK ARENA」がユーザー、メディアコンテンツ企業、広告クライアントのそれぞれにもたらす新たな価値について聞いていきます。
本記事をお読みになり、メタバース空間でのイベント開催に興味をお持ちになった方は、ぜひCONTACTからお気軽にお問い合わせください。
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