市場調査などを通じマーケティング戦略を提案する、株式会社 電通マクロミルインサイト(以下、DMI)。同社では、独自の視点で分析・解釈したマーケティングコンテンツや、自主調査レポートを発信しています。
2022年12月には、Z世代よりもさらに下の世代であるα世代(アルファ世代/ジェネレーションα)の行動・価値観に注目した『「α世代に関する調査」レポート』を発表。調査の結果見えてきたα世代の特徴や、今なぜα世代に目を向けるべきかについて、DMIの今泉直史氏と阿部駿氏に聞きました。
豊富なデータとマーケティングノウハウがDMIの強み
Q.まずはお2人のキャリアと、現在どのような仕事をしているかについて教えてください。
今泉:前職はマーケティング系の企業で、クライアント向けのリサーチや生活者研究を行っていました。その後、転職をしてDMIに入り、最初は大阪支社配属になりましたが、2020年1月から東京へ異動となり、現在に至ります。最近は、エンドクライアントに近いところのリサーチをメインに行っていて、特に金融や外食、IT系のクライアント企業さまに関わることが多いですね。
株式会社 電通マクロミルインサイト 今泉 直史氏阿部:私は新卒から長くマーケティング領域で働いてきて、2022年の5月、DMIに入社しました。現在は、株式会社電通デジタルのメンバーと一緒に、クライアント企業さまの課題解決に向き合っています。具体的には、商材開発そのものよりも「ブランド認知をどう上げていくか」「世の中にどうやって知ってもらうか」といった課題に対して、調査手法を提案するような取り組みをしています。また、特定のターゲットに対して広告を打ち、きちんと効果を発揮しているかといった検証を行うこともありますね。
Q.阿部さんは、転職先としてDMIを選んだのはなぜでしょうか?
阿部:前職では、コミュニケーションプランナーに近い役職に就いていたのですが、企画を考えてそれを実現していくよりも、「今の世の中の流れは?」「人って何を考えているんだろう?」といったことを突き詰めていく方が好きだし、興味があると気付いたんです。世の中には数多くの調査会社がありますが、調査だけでなくマーケティング課題に向き合っているところがDMIの強み。今までのキャリアを生かしつつ、興味のある分野も深掘りできると思い、DMIを選びました。
α世代の子どもと親の行動はリンクしている
Q.DMIでは、2022年12月に「α世代に関する調査」のレポートを発表しました。どのような目的の下で調査を行ったのか教えてください。
今泉:本調査の一番の目的は、α世代の基本的な行動や思考を理解すること。さらに、α世代の親の行動や思考を理解することで、新しい世帯の中で生まれる行動や思考の兆しを見つけることでした。ちなみに、α世代というのは2010年から2024年頃までに生まれた人たちのことであり、2023年現在で言えば小学生世代がコア層です。
実際の調査では、10歳から79歳までの回答者(約2800名)を世代ごとに分け、行動や価値観の違いを見ていきました。α世代の親は、ミレニアル世代(25〜34歳)、ジェネレーションY世代(35〜44歳)に当たります。この世代の人たちは割と柔軟性があり、オンオフを分けたり、プライベートも大事にしたりするなど、「自分」を強く持っているといった特徴があります。そこで「このような親の価値観が、α世代の価値観にも影響するのではないか」といった仮説を立て、親世代もしっかり分析できるようサンプルを確保しました。
Q.調査を通じてどのようなことが分かりましたか?
阿部:α世代の子どもと親の関係が、非常にフラットなものであるという現状が見えてきました。例えば、YouTubeをはじめとするさまざまな動画サービスをスマートフォンやタブレット、ゲーム端末で視聴するような行動は、α世代で大きな割合を占めていますが、実は親世代、特に父親も同じようにパーセンテージが高いという結果が出ました。

阿部:子どもと親の行動がリンクする理由は、恐らく「ゲームやコンテンツを一緒に楽しんでいる」から。ここが、今回の調査の大きなファインディングスだったと思います。そこで、調査レポートにおいても、「親とα世代の子が相互に楽しさを共有する“巻き込み消費”が今まで以上に顕著になっている」と言及しています。
相互に影響し合う「横並び」でフラットな親子関係
Q.α世代の子どもと親との関係は、それ以外の世代と違うということでしょうか?
今泉:調査データを見ると、そう感じるところが多いですね。簡単に言うと、α世代の親は、家族と一緒に何かをしたいという思いが強く、故に子どもとの接点が多くなっています。そこが上の世代と異なるところです。
阿部:私が小学生の頃は、「ゲームは視力が落ちるかもしれないからほどほどにしなさい」「テレビ画面をずっと見ていたらいけない」としゃくし定規に注意されることがありました。ところが、今は子どもから「こういうテレビの使い方があるんだよ」と教えてもらったり、ゲームのやり方を教えてもらったりして、一緒に楽しむ親も多いそうです。
株式会社 電通マクロミルインサイト 阿部 駿氏今泉:親子関係が「縦」から「横」になってきているんですよね。α世代が親から影響を受けているのと同時に、親もα世代から影響を受けていて、それが行動に現れているように感じます。これを裏付けるものとして、30代後半から40代で、子どもがいる人といない人を比べた調査データがあり、子どもがいる人の方が、α世代に近い行動をしていることが分かっています。
Q.マーケティングに近い領域ではどのような発見がありましたか?
今泉:α世代やZ世代は、テレビのリアルタイム視聴が他の世代と比べて少ない一方で、タイムシフト視聴は多くなっています。つまり、地上波の番組からYouTubeなどの動画視聴サービスに至るまで、全て同じ「コンテンツ」として扱い、その中から自分の好みに合うものを選んで視聴する、というスタイルが普通のものになりつつあります。このようなメディア視聴の変化は、消費行動にも大きく影響すると思いますね。
阿部:消費行動的な話で言うと、ミレニアル以下の世代は、上の世代と比べて、年の重ね方が変わってくるのではないかと思っています。端的に言うと「今の子どもは……」みたいな話をしなくなる。年を重ねても、最新の情報をキャッチして取り入れ続けていくことが予測できますし、そのような消費者に合わせてマーケティングもアップデートし続けていくことになるでしょう。
調査データから見えてきた、α世代の特徴や親子関係の変化。2人のお話から、多様性と自分らしさを重視するZ世代とはまた違う「α世代ならでは」の価値観が育ってきていることが伺えました。続く後編では、α世代の思考や消費行動について深掘りしていきます。
DMIでは、専門性の高いリサーチャーやアナリストが豊富なデータ活用と独自メソッドを生かし、クライアントビジネスの成功をサポートしています。α世代やZ世代など、消費の中心として市場を引っ張っていくと考えられる若者世代のインサイトについて詳しく知りたい方は、ぜひCONTACTよりお問い合わせください。
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