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2023/06/12

ビジョンドリブンで未来をつくる。「Future Vision Studio」と共創する予測不能時代の未来事業(前編)

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先行き不透明で予測不可能な時代。過去の常識が通用しなくなり、従来型のマーケティング手法に限界を感じている企業も多いのではないでしょうか。そんな中、ビジョンドリブン型の事業開発を提唱するのが「Future Vision Studio」です。今の延長線上で未来を予測するのではなく、目指す未来を先に決める。描いたビジョンから逆算して、今なすべきことを具現化する。そんなメソッドにより、立ち上げから約2年半で多くの企業と未来事業やその構想を共創してきました。

Transformation SHOWCASEでは、「Future Vision Studio」を設立した株式会社 電通 榊良祐氏と、榊氏のビジョンに共鳴しメンバーとして参画している佐藤香織氏、市川大介氏にインタビュー。前編では、同プロジェクトが提供する未来構想支援プログラムの全貌に迫ります。

飛躍的なアイデアで未来を描き、可視化・具現化する

株式会社 電通 榊 良祐氏

Q.はじめに榊さんのご経歴と、「Future Vision Studio」の設立経緯をご説明いただけますか?

榊:私は電通に入社後、アートディレクターとして広告に携わってきました。そのうち、デザインにとどまらず、ブランディングや企業との事業構想、街づくりなど広い領域に仕事が拡張していきました。

これまで関わってきたプロジェクトの中で、「Future Vision Studio」の前身となったのがフードテックプロジェクト「OPEN MEALS(オープンミールズ)」です。「食をデータ化する」という食産業の未来構想をビジュアライズするプロジェクトで、寿司をデータ化して遠隔地に転送するなど飛躍的なアイデアに基づく取り組みをいろいろと実践していました。

「OPEN MEALS」では、ただアイデアをそのまま提案するだけでなく、ファクト情報を積み上げ、研究機関やスタートアップ企業とディスカッションし、一見ブッ飛んでいるように感じられるけれど、実はそこにリアリティーがある未来をビジュアライズして発信していきました。すると、世界中から「そのビジョンを一緒に実現したい」という声がたくさん届くようになりました。

今は予測不能な時代だと思います。1社だけでは新しいものは作れず、産業の垣根を越えて1つのチームで事業を推進しなければなりません。そうなるとステークホルダーが増えるため、より強固なビジョンが必要になります。これからはビジョンドリブン型で事業開発を行う時代になっていく。そう感じたのが2018年頃でした。

そこから、ビジョンドリブン型の事業開発をフレームワーク化し、幅広いクライアント企業さまのニーズに応えられるよう体制を整えていきました。こうして2020年8月に立ち上げたのが「Future Vision Studio」です。

Q.「Future Vision Studio」はどのようなメンバーで構成されているのでしょうか。

榊:これからは、飛躍的なアイデアで描き出した未来の事業構想を魅力的に可視化し、そこからバックキャストして事業をつくるやり方がスタンダードになっていくと思います。そこで生きてくるのが、飛躍的なアイデアを考える広告クリエーターのスキル、ビジュアライズにより人を引きつけるアートディレクターの力です。

そのため、飛躍的なアイデアを出すクリエーター、ビジョンを可視化するイラストレーター、未来予測を行うデータアナリスト、そしてプロトタイプの開発や実装を行うテクノロジストの4チームが必要だと思いました。連携する企業・スタッフは変わりつつも、この4機能を担うメンバーと共にプロジェクトを推進しています。

Q.佐藤さん、市川さんの役割を教えてください。

佐藤:私はアートディレクターですが、クライアント企業さまと一緒にプロダクトを作ったり、イベントの企画を考えたりするような業務も多く取り組んでいます。また、個人的には好奇心の幅も広く、大学教授などにお話を伺って未来技術をインプットし、イメージを膨らませてイラストを描く、というようなこともしていました。そんな中、榊さんに声を掛けていただき、このプロジェクトに加わりました。プログラムを一緒に作りつつ、ワークショップではファシリテーションしながら、その場でイラストレーションを描くこともしています。
株式会社 電通 佐藤 香織氏
市川:私はプロデューサー兼ファシリテーターという立場で、このプロジェクトに参加しております。プロデューサーの役回りとしては、クライアント企業さまの課題をヒアリング・整理し、クリエーティブチームと共有してプログラムのトータルプロデュースをしています。また、ビジネス戦略、協力会社との連携、対外的な窓口対応も行っています。
株式会社 電通 市川 大介氏

ワクワクする未来をビジュアライズできるアウトプットの強さ

Q.企業からは、どのような相談が持ち込まれていますか?

榊:今は「VUCA」(「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」の頭文字を並べた造語)と言われ、技術や社会の急速な変化により、過去の常識が通用しない時代に突入しています。にもかかわらず、馴染みのある領域で短期的な収益を追うことに終始してしまっている企業も少なくありません。しかし、いつか有益になるかもしれない未知の領域まで満遍なく投資しなければ、これからの時代には対応できないのではないでしょうか。そのような中で、「ビジョンや妄想の力を駆使し、根拠・常識・固定観念を取り払い、新たな未来をつくりたい」という思いを持った企業さまからのご相談をいただくことが多くなっています。

具体的には、「未来が複雑で進むべき方向が決められない」「従来のマーケティング手法では、変化の激しい時代に対応できない」「漠然と構想があるものの、説得力や魅力に欠けるため、周囲の共感を得られず進められない」「過去の成功体験やバイアスにとらわれて、自社だけでは飛躍的なアイデアが出ない」「イベント出展は決まっているものの、そこで発信するようなワクワクする未来を描けない」といった課題意識をお持ちのケースが多いですね。

Q.具体的には、どのようなプログラムを提供しているのでしょうか。プログラムの特徴も教えてください。

榊:企業の飛躍可能性をデザインする未来構想支援プログラムです。プログラムは、構想フェーズと実装フェーズの2つに分かれています。構想フェーズでは、まずクライアント企業さまの要望を聞き、プログラムを開発します。そして大量に未来情報をインプットし、アイデアを発散・収束してから1つのビジョンをまとめます。実装フェーズでは、共感を高めワクワクさせるような未来のビジョンムービー開発や、体験イベント・未来発信のエキシビジョン企画・実施、さらには、プロトタイプ開発、事業化支援まで、描いたビジョンの実装に向けた支援をさせていただきます。

特徴的なのは、クリエーターとイラストレーターも一緒にテーブルに着き、その場で議論しながらどんどんビジュアライズしていく点です。その手法も、クライアント企業さまの課題や事業フェーズによっていろいろあり、「まだ未来の構想がぼんやりしているので、とりあえずアイデアを発散したい」というクライアント企業さまに対しては、独自のフレームワークにより1日で200~300の飛躍的なアイデアを生み出し、ビジュアライズしています。一方「つくりたい未来のビジョンがある程度決まっている」というクライアント企業さまに対しては、どんどん解像度を上げていき、「考えるべきはこれだ」「この技術者が足りない」などと課題を明確化していきます。

さらに、ただ妄想からアイデアを発散するだけでなく、信頼に足る情報と掛け算していくことが大事なので、電通の未来事業創研やデータによる未来予測を得意とするコンサルティング企業と連携してワークショップのツールを作っています。

 


 

過去のデータを地道に積み上げるだけでは、未来は予測できない時代になっています。そんな中で役立つのが、常識や固定観念に縛られない型破りな未来を思い描く妄想力。それをビジュアライズし、現実に引き戻しながら具現化するところまで引き受けるのが「Future Vision Studio」です。共に未来を共創することで、停滞からの脱却につながるのではないでしょうか。後編では、現状の手応え、「Future Vision Studio」の独自性について話を深めていきます。

ビジョン思考の研修から未来事業の開発まで、お悩み事を抱えている方は、ぜひCONTACTからご連絡ください。

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株式会社 電通

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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