流通小売業や外食産業など、店舗型事業を展開する企業のマーケティング・プロモーションに対して高い専門性を持つ株式会社 電通tempo。社内プロジェクト「キザシ発掘ラボ」では、生活者の暮らしの変化を把握・分析することで、“消費のキザシ”を発掘しています。
その活動の中でも今回注目するのが、次なるトレンドの芽となる“キザシのたまご”から生活者の暮らしの変化を分析する取り組みです。前編では定例会レポートおよびプロジェクトリーダー・永野薫氏のインタビューをお届けしましたが、後編では、プロジェクトメンバーの太田菜々美氏、杉田智恵氏、中瀬奈津子氏にも話を聞き、今注目している消費動向や、トレンド総括について深掘りしていきます。
生活者に新たな価値を提供する“キザシのたまご”探し
Q.今回は、「キザシ発掘ラボ」で消費志向を分析している皆さんにお集まりいただきました。皆さんが感じるこのプロジェクトの面白さ、最近見つけた“キザシのたまご”について教えてください。
最近取り上げた“キザシのたまご”は、『毒のある笑いへの揺り戻し』。少し前は誰も傷付けない優しいお笑いが人気と言われていましたが、昨年(2022年)末の漫才コンテストから潮目が変わったなと思いました。

私が気になっているのは、タイパ(時間対効果)、スペパ(空間対効果)のようなパフォーマンス意識です。
スペパでは、「ステルス家電」も注目を集めています。珪藻土入りのバスマットと体重計が一体化し、バスマットに乗るだけで体重測定もできるという商品があり、面白いなと思いました。
最近注目しているのは、ある新しい形態のスナックです。幅広い世代の交流を目的としているので、従来のスナックと違って、カラオケなし、深夜営業なしで、若者でも入りやすい雰囲気。あるアーティストのファンが入れたボトルを同じアーティストのファンなら1杯無料で飲めるというお店もあり、共通の趣味などをきっかけに世代を超えた交流が生まれています。人との関わりが制限されてきた反動で、リアルなつながりを持つことへの関心が高まっているのではないかと思います。

Q.“キザシのたまご”は、「今これが売れている」というヒット商品だけではなく、世の中の傾向を表わすものでも取り上げられているんですね。
Q.こうして分析したトレンドを、どのように消費インサイトやクライアントへの提案に結び付けていくのでしょう。
注目は、気持ちを底上げする「“FUN”重視の選別消費」
Q.では、最新の「消費者マインドMAP」をもとに、今の消費志向を表わすキーワードについて、説明をお願いできますか?

サブキーワードは5つあります。第一に「“アガる”エシカル消費」。今、どの企業もエシカルに注目しています。そこから一歩進み、その商品に共感できる、気分がアガるといった情緒的な価値がないと選んでもらえなくなっている傾向があります。消費欲求の原点回帰が始まっているように思いますね。
第二に「ポジティブ生活防衛」。長引くデフレや物価高で、今や節約するのは当たり前。でも、節約をネガティブに捉えず、野菜をより安く買うために詰め放題を行うなど、よりエンタメ性が求められるようになっています。
第三に「気分の安定志向」。コロナ禍が続いた上、物価高、ウクライナ情勢など、世の中は重いニュースにあふれています。こうした中で気持ちを安定させるために、あえて暗い情報を排除し、気分が楽しくなるものを選別し、そこに価値を見いだしているように感じます。
第四に、「人の魅力への原点回帰」。コロナ禍でリモートワークやDXが加速・浸透しましたが、その反動で人の感情、ぬくもりなどの価値があらためて見直されています。今後は、五感を刺激する体験やホスピタリティのある接客が改めて見直されるなど、リアル店舗の重要性も高まるのではないかと思います。
最後に「アイデンティティ消費」。Z世代を中心に、堅実的な自分らしさの追求、手堅く手軽に自己表現したいというニーズが拡大しています。自分らしい世界観を表現する“自分映え”、パーソナルカラー診断や骨格診断などの診断ブームもその表れではないかと思います。
Q.どれも納得度が高いですね。では、最後に皆さんが今後注目したい事象について教えてください。


ただ流行りものを先取りするのではなく、生活者意識を読み解き、時代の風向きまでキャッチする「キザシ発掘ラボ」。クライアント企業さまへのマーケティング・プロモーション提案に結び付けるだけでなく、企業が今の時代に発するべきメッセージ、ブランディング戦略にも関わるプロジェクトと言えるのではないでしょうか。
電通グループでは、流通小売業に限らず、さまざまな領域のプロフェッショナルが消費インサイトを捉えたマーケティング施策を提案しています。ぜひCONTACTからお問い合わせください。