株式会社電通デジタルは、2022年12月、デジタル広告におけるクリエーティブのプロセスを、AIを活用してサポートする「∞AI」(ムゲンエーアイ)をリリースしました。これまで主に効果測定に用いられていたAI技術を、クリエーティブ領域にまで広げた画期的なサービスです。
今回は、「∞AI」の開発に携わった、電通デジタルの和田純一氏へインタビュー。サービスの特徴や開発背景、今後AIが広告業界に与える影響などについて、前後編で語ってもらいました。
効果予測のみならず、クリエーティブに寄与するサービス
Q.まずは、前職でのお仕事も含め、和田さんが「∞AI」の開発に至るまでのキャリアを教えていただけますか?
その頃から、ゆくゆくはWebサイトの最適化をAIで行えるようにしたい、という目標を持っていました。その流れで、AIの世界に足を踏み入れたのです。その後、電通デジタルに入社し、クリエーティブ×テクノロジーを推進するチームで仕事をしていく中で、最初はAIによる自動生成へのチャレンジからスタートしました。そこから仕事が発展していって、「∞AI」に関わることになったというのが経緯ですね。

Q.「∞AI」はネーミングもユニークですが、どのような特徴があり、AIを使用したサービスとしてはどのような差別化が図られているのでしょうか?
現状、広告におけるAI活用は「効果予測」に重点が置かれていて、既に世の中に発表されているAI活用サービスもそこに特化したものが多いと分析しています。一方で「∞AI」は、効果予測はもちろん、制作プロセス全般の支援ができることが一番の特長であり、差別化ポイントとして打ち出したい点です。
広告の制作は、「訴求軸発見」「クリエーティブ生成」「効果予測」「改善サジェスト」の4工程が肝なのですが、「∞AI」は、これらの行程の全てにおいて、AIによる支援が可能です。例えば、訴求軸の発見の場面では、大量のデータソースを読み込んで、人間の琴線に触れるような訴求ワードを複数抽出することができます。これによって、これまでは気付かなかった視点での訴求ポイントを発見できるようになるのです。
クリエーティブ生成においても、文章生成言語モデルを使ってコピーを生成するなど、AIが関わる範囲が大幅に広がって、多様なニーズに応える質と量、そしてスピード感のある広告制作が可能になるのが、本サービスの特長だと思います。
Q.どんなクライアント企業に向いているサービスなのでしょうか?
AIは1つのツール。うまく使いこなしてアイデアを拡張
Q.実際、リリースしてから、「∞AI」に対する周囲の反応はいかがでしょうか?
クリエーティブに関しては、AIがコピーの生成を行うというケースも徐々に増えてきていますが、現時点では、それをコピーライターが精査するステップもありますし、レイアウトなどデザインの部分もデザイナーが担う要素も多いです。ですから、そこだけを取り上げたら、「結局、人間が判断してやっているじゃないか」と思われる方も多いかもしれません。AIは、あくまでも「いいスコアが出るもの」を提案して、人間はそれをクリエーティブのヒントに活用して実際のアウトプットにつなげていく、というやり方がまだ主流ではありますが、「人間の手を加えず、AIが言った通りに作ったらどうなるかを見てみたい」、というニーズもかなりいただくようになりました。

Q.最近話題の生成AIもそうですが、やはり人間が介在することで、AIが生成するクリエーティブの質が上がっていくという事実もあります。つまり、「∞AI」も使いこなすクリエーターやディレクターなどが介在する価値がある、ということになるかと思いますが、いかがでしょうか?その点をしっかり理解してほしい、という思いはありますか?
Q.なるほど、そうなのですね。AIだけで作れるものの精度を上げていくことと、人間が介在してトータル的にいいものを作っていくこと。和田さんは、「∞AI」に対して、どちらを追い求めていきたいと考えていますか?
「∞AI」の特長の1つとして、「人に寄り添い、人の可能性を拡張するAI」をコンセプトにしていることが挙げられるのですが、私はクリエーターの発想支援という部分を強化していくことにも、力を入れたいと思っています。
私自身もよく生成AIを使うのですが、それと会話しながら発想を転換したり、別の視点で物事を見たりすることができる、と実感しています。やはり、AIというのは1つのツールなんですよね。だから、どううまく使っていくかが重要だと思っています。
効果予測だけにとどまらず、クリエーティブ面でも力を発揮する「∞AI」。クリエーターの仕事をサポートする相棒のような存在として、今後も多くの企業から注目を集めていくことになりそうです。後編では、AIが広告やクリエーターの立場にどう影響を与え、どのように業界が変わっていくのかなど、より深い文脈で話を聞いていきます。
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