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2023/11/06

サステナビリティと企業成長を両立するには?先進企業から学ぶ、「新しい成長」のヒント

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SDGsをはじめとするサステナビリティに関する取り組みは、今や企業が果たすべき社会的責任となっています。しかし、多くの企業ではその重要性を理解しつつも、企業としての成長戦略においてさまざまな矛盾や困難を抱えがちです。そこで、株式会社 電通では「Sustainability for New Growth.」というテーマを掲げたウェビナーシリーズを開催。

今回は、「サステナブルな社会における企業の成長とは?」と題して、サステナビリティ推進において先進的な取り組みを実践する、明治安田生命保険相互株式会社 ブランド戦略部の北島孝俊氏と住友林業株式会社 コーポレート・コミュニケーション部の平子佳美氏が登壇し各社の取り組みをご紹介いただきました。さらに、多くの企業が抱える問題について、電通 サステナビリティコンサルティング室のメンバーがディスカッションを行いました。サステナビリティと企業成長について考えるために、多くのヒントを提示したウェビナーの様子をお伝えします。

サステナビリティがいかに企業の成長をもたらすか

ウェビナー開催にあたり、電通 執行役員の樋口景一氏は、多くのクライアント企業さまからサステナビリティについての相談が寄せられる現状を踏まえた上で、サステナビリティが企業に成長をもたらす可能性についてメッセージしました。

樋口:近年、多くの企業において、ビジネスのバリューチェーンは複雑化し、社内外のステークホルダーとの接点が多様化しています。そのため、サステナビリティに取り組もうと思っても、さまざまな部署や関係者との調整が困難で、合意形成がなかなか進められない、というお悩みはよく伺います。しかし、実はむしろ、サステナビリティを軸にすることで、そうした複雑な状況における判断の明確化や、社内外の関係性の整理・再構築が可能になるはずだ、と私たちは考えています。そして、そのことが企業の新しい成長を生み出すきっかけになるのではないでしょうか。

ウェビナーでは、ともすれば概念論や理想論になりがちな企業のサステナビリティを、具体的な先行事例をもとに解説。さらに、導入を考える企業に役立つソリューションを紹介することを示しました。

健康増進と地域活性化という企業パーパスを、サステナビリティの取り組みとして実現

企業事例セッションでは、まず明治安田生命の北島氏と電通の竹嶋理恵氏が登壇。「Jリーグ連携なども含めた健康増進や地域の活性化などの社会課題解決の取り組みについて」と題し、事例紹介や事業活動との関係、そして今後の展望などを語り合いました。

(左)明治安田生命保険相互会社 北島 孝俊氏、(右)株式会社 電通 竹嶋 理恵氏

明治安田生命では、「ひとに健康を、まちに元気を。」をブランドメッセージに掲げ、スポーツを通じて健康寿命の延伸と地域創成を推進するプロジェクトを展開。その1つであるJリーグとの連携は、2014年からスタートし、Jリーグ全体のタイトルパートナーから始まり、現在は全国105支社が全60クラブやJFLクラブなどとクラブスポンサー締結しています。試合の観戦・応援だけでなく、選手らチーム関係者と共に参加するウォーキングイベントや子ども向けのサッカー教室の開催など、健康増進と地域振興につながる取り組みを展開しています。

明治安田生命保険相互会社 北島 孝俊氏

また、こうしたプロジェクトを起点にして、地域貢献活動の業務への組み込み、地域の健康づくりに貢献する拠点の立ち上げなど、企業変革にも取り組んでいます。

北島:今後は地域課題解決の体制を強化していきたい、と考えています。これまでは取り組み方を共通のパッケージ化して、各支社で同様のスタイルで提供していました。しかし、実際には地域によって課題は異なっているため、個別の課題への対応力を強化していくことが重要と考えています。クラブチームや自治体との関係を深めていき、その中で当社が地域の核となっていけるよう、引き続き尽力してまいります。

今は、企業も個人も、在り方や存在意義がより問われる時代です。当社では経済的価値と社会的価値の両方を大事にして、これらを好循環させる経営を目指しております。

北島氏の話を受け、竹嶋氏は同社の取り組みに対して、自身の考えを述べました。

竹嶋:サステナビリティというと環境が注目されますが、健康増進や地域活性化も日本にとって大きな、そして身近な課題ですし、生命保険という事業にもマッチした形で進められていますね。また、サステナビリティをきっかけにさまざまな事業変革に取り組み、企業のみならずスポーツ団体や自治体、そしてお客さまと志を同じくして動いていくというところは、まさに今の時代にあるべき姿といえるのではないでしょうか。

全社的な取り組みと適切な発信でブランドイメージが大幅にアップ

続いて、企業事例セッションの2社目には、住友林業の平子氏と電通の小野総一氏が登壇。「サステナビリティを企業成長に!〜発信ストーリーの重要性について〜」と題し、住友林業の事業とサステナビリティの親和性の高さや、ステークホルダーへの届け方のポイントなどを紹介しました。

(左)株式会社 電通 小野総一氏、(右)住友林業株式会社 平子佳美氏

同社では、2022年に「脱炭素化に向けた長期ビジョン」を発表。木造に強みを持つ住宅メーカーから世界の脱炭素シフトパートナーを目指し、事業全体を脱炭素に向けたソリューションにシフトチェンジしています。

平子:住友林業は木を軸とした循環型の事業「WOOD CYCLE(ウッドサイクル)」を展開しています。木を育てるところから始め、育てた木を伐り、木材としてさまざまなものに活用していくだけでなく、バイオマス発電の燃料としても活用します。そして伐ったあとにまた植えていくという循環型ビジネスの形です。このサイクルそのものを推進していくことが、今の世の中の喫緊の課題である脱炭素にもつながっていくということで、事業そのものがサステナブルであるというユニークなビジネスモデルとなっています。
小野:事業と一体化したサステナビリティは、社員のモチベーションとも一致しやすいのでしょうね。

また、脱炭素を中心に置いて長期ビジョンを明確化したことが、企業の成長に良い効果をもたらしたそうです。

平子:長期ビジョンを発表以後、コーポレートコミュニケーションが発信するもの全てを、長期ビジョンにひも付けて発信しています。世の中に対しての提供価値が、具体的なファクトと共に届けられるのが良い効果をもたらしていると思います。

実際に住友林業では、脱炭素貢献に関するメッセージを広告などで発信したことで、企業イメージが大きく向上したそうです。

サステナビリティを企業成長に結びつけるには

ウェビナー後半は、電通 サステナビリティコンサルティング室 室長 住田康年氏を進行役に、同室メンバーの堀田峰布子氏、蟹江淳氏、佐々木亜悠氏が、「サステナビリティを新たな成長の基盤とするためのヒントとは?」と題したパネルディスカッションを行いました。

サステナビリティコンサルティング室は、2023年1月に新設された部署で、企業のサステナブルなビジネス創造のサポートを行っています。さらに、ディスカッションのテーマと関連した具体的な電通のソリューションについても触れました。

(写真左から)株式会社 電通 蟹江淳氏、堀田峰布子氏、佐々木亜悠氏、住田康年氏

まずは、多くの企業が持つ課題である「非財務活動と事業のテーマが曖昧」というテーマを取り上げました。さらに、非財務活動の事業への貢献値を導き出すソリューション「非財務価値サーベイ」について、開発者である蟹江氏が紹介します。

蟹江:「非財務価値サーベイ」は電通グループ独自のデータと分析手法で、非財務活動の強みと弱みを把握し、今後有望な活動テーマを見いだすサービスです。大きな特徴は、非財務活動が企業イメージにどのような影響を及ぼすのか、ステークホルダーにどのように響いているのかが分かる点です。また、競合他社に比べて強みがあるのか、この先どういった一歩を踏み出すべきかのヒントを得ることも可能です。

続いては、「新規事業開発・事業シフトでサステナビリティの視点が必要になった場合、どう考えるべきか」というテーマについて。今後、企業の中長期の動きを考えていくにあたって、サステナビリティは欠かせない視点である、というところで一同の意見が一致。さらに、サステナブルな新規事業の開発に役立つツールとして、佐々木氏が紹介したツールが「Sustainable Growth Drivers」です。

佐々木:ツール開発を考える時に、制約に見えてしまう面もあるサステナビリティを成長可能性に広げていこうとしました。そこで、「Sustainable Growth Drivers」は、2030年までに起こり得る日本のさまざまな未課題をビジネスの成長可能性に変える25の視点にまとめました。これをアイデア創発につなげていただきたいと考えています。

ユニークな点は、カードゲーム型ワークショップツールであること。楽しく取り組むことで、意思疎通をスムーズにしたり、関わる人を増やしたりする効果が期待できます。

続いては、「事業アクション推進について、部署横断での合意が難しい」というテーマについて。部署間のみならず、社内外の多くの人たちの目線をそろえることの難しさは、サステナビリティに取り組む多くの企業が抱える悩みの1つかと思います。その解決を提案するツールが、「サステナブルロードマップ」です。サプライチェーン全体にわたるサステナビリティの課題を、多くの人に分かりやすくかつ論理的に伝えます。

堀田:「サステナブルロードマップ」は、トレンドと生活者ニーズを踏まえた、サステナビリティ形成のサポートツールとして開発したものです。サステナビリティに関わる法令などの規約と技術、素材、プロセスのトレンドなどがまとまっています。加えて、生活者の思考や行動、価値観の変容もロードマップの軸になっています。サステナビリティ関連の事業について合意形成するときに、「法令はこうなるし技術はこの時にこうなっているので、だから今この商品を出すべき」というようにロジカルに説明する際にお役に立てるように設計しています。

最後に住田氏は、ここまで紹介した意見やソリューションを生かし、企業と共にサステナビリティの実現を考えていきたいとしてパネルディスカッションを締めくくりました。

住田:私たちも明確な答えを持っているというよりは、一緒にその答えを探していきたいと考えていますので、ぜひご一緒できたらと思っています。

 


 

サステナビリティに取り組むことは、捉え方によっては、これまで以上に時間やコストがかかり、成長の足かせや制約になってしまうのではないかというイメージを持たれている企業もあるかもしれません。しかし、サステナビリティは、新たな成長のアイデアや社員の意識向上、ステークホルダーとのより強い関係性の構築など、企業の成長につながる可能性が大きく広がっていくことが分かります。先行事例となった2社のように、企業の強みを生かしながら、サステナブルな企業への一歩を踏み出していく。その道筋を考えてみてはいかがでしょうか。

サステナビリティな取り組みを新たに始めようと考えていたり、現在の取り組みの見直しやブラッシュアップを検討されていたりする企業のご担当者の方は、お気軽にCONTACTよりお問い合わせください。

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株式会社 電通

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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