これまでのサプリメントの概念を覆す、ミストを“飲む”サプリメント「IN MIST(インミスト)」。新規事業のコンペから生まれたこの商品が、2023年10月に「2023年度グッドデザイン賞」を受賞しました。
開発に携わったサントリーホールディングス株式会社の長田知也氏、株式会社電通コンサルティングの八木薫郎氏、プロダクトのアートディレクターを務めた株式会社 電通の深沢夏菜氏に、開発秘話や発売後の反響などについてお話を伺いました。進行役を務めるのは、電通コンサルティングの加形拓也氏。前後編でお届けします。
ミストタイプだから摂取しやすく、習慣化しやすい
加形:まずは「IN MIST」がどんな製品なのか、教えていただけますか?
長田:液体サプリメントをミスト状にして飲むサプリメントです。栄養成分をミスト化することで、口内からすぐ吸収が始まって、ダイレクトに栄養を吸収できるのが特長です。「味×成分」で3種類あり、私のイチオシはビタミンCとヒアルロン酸が配合されたレモンフレーバーの「ClearWhite Lemon(クリアホワイトレモン)」。1秒押すと約1mlが噴射され、この1mlに1日分のビタミンCが含まれています。ビタミンCは摂取しても数時間で体外へ出てしまうので、1日3回ほど摂るのをおすすめしています。
「Goodnight HerbTea(グッドナイトハーブティー)」は、ジャスミンのフレーバーと緑茶由来のアミノ酸であるL-テアニンが配合されています。心地良い香りがするので、寝る前に摂るのにぴったりだと思います。もう1つは、7種類のマルチビタミンが配合された、エナジードリンクフレーバーの「Vitamin Maintenance(ビタミンメンテナンス)」です。
「Goodnight HerbTea(グッドナイトハーブティー)」は、ジャスミンのフレーバーと緑茶由来のアミノ酸であるL-テアニンが配合されています。心地良い香りがするので、寝る前に摂るのにぴったりだと思います。もう1つは、7種類のマルチビタミンが配合された、エナジードリンクフレーバーの「Vitamin Maintenance(ビタミンメンテナンス)」です。
八木:「IN MIST」は一言でいうと、サプリメントのUXを大きく変えたプロダクトです。これまでずっと錠剤やカプセル型で摂取されることが多かったサプリメントをミスト状にすることで飲みづらさを解消し、さらに水なしで飲むことができるため、今まで以上に習慣化しやすくなったのではないでしょうか。
加形:なるほど。実際に、「IN MIST」のクリアホワイトレモンを飲んでみたいと思います。口いっぱいにミストが広がる感覚が爽やかでとても新しいですね。味も美味しくて思ったよりもレモンの酸味があり、何度も飲みたくなるようなクセになる味ですね。

加形:八木さんが誕生のきっかけを作ったと伺いました。どういった背景でこの新しいプロダクトは生まれたのでしょうか?
八木:私は電通グループの中で、新しい商品やサービスの開発に携わってきました。元々プロダクト開発が好きだったので、社内の仕事だけにこだわらず、広く外部に対してもアウトプットする場を求めていました。そんな時、とあるオープンイノベーションプラットフォーム で、サントリー食品インターナショナルさまが主催しているコンペを見つけました。そこに応募したのが2019年のことです。
長田:私はサントリーホールディングスの所属で、現在はゼロワンブースターという新規事業開発をサポートする会社に出向しています。出向前、コンペの選考に携わっており、そこに八木さんが応募してきてくれたのです。500案以上の応募があった中で、最終的に残った10案に、「IN MIST」の原型となるアイデアがありました。
消費者の生活に溶け込むサプリメントをデザイン
加形:最初のアイデアは、サプリメントではなかったと聞いています。「IN MIST」が今の形になるまでは、どのような段階を踏んでいったのでしょうか?
長田:始めは、「ミストシャワー飲料」という名前で、通常の飲料をミスト化することを検討していました。スプレー状の飲み物をコンセプトに、私は八木さんのメンターとして、いろいろアイデアを出し合っていました。そんな中、自分自身の体験としてサプリメントを飲み忘れてしまうことがよくあって、ミストシャワーにしたら飲みやすいなと思って。サプリを飲むための水を用意しなくていいし、手軽だし、しかも栄養成分も吸収しやすい。だから、私が欲しいサプリメントを作ったような感覚ですね。
八木:実は飲料として考えていた時は、「ミストを飲む」という行為が日常から離れていて、生活と密着させることが難しいなと感じていました。でもこれをサプリメントにすれば、機能的な価値が生まれて、忙しい現代人の生活にもフィットするだろうと。それで長田さんとそちらの方向で詰めていきました。

長田:忙しくてなかなか健康管理ができない、でもサプリメントは飲みづらいし忘れてしまうから続かない。そういう人にもミスト状のサプリメントなら、新しい栄養補給の形を届けることができると思いました。
加形:深沢さんは、「IN MIST」のアートディレクションを担当していますが、長田さんと八木さんが持ってきたコンセプトに対して、どのようなイメージを抱き、どのようにデザインに落とし込んでいきましたか?
深沢:まず、ミスト状というのがとてもアイコニックだと感じましたね。八木さんが話したように、「日常に溶け込むこと」が重要だと思ったので、毎日使う水筒やコップのような佇まいで、生活の動線上に配置しても違和感のないものにしようと、世界観を作り上げていきました。
「修行だった」サプリメントが毎日のささやかな喜びに
加形:2023年4月にとあるクラウドファンディングサイトでローンチ後、目標金額800%達成となったわけですが、消費者のリアクションや手応えはいかがでしたか?
長田:想像をはるかに上回る反響で驚きました。購入いただいた方にヒアリングをすると、「とにかく続けやすい」「習慣化しやすい」という声がとても多く、このプロダクトの1番の価値を評価していただけて、まずは安心しました。
八木:私たちも想定していなかった使い方をしているお客さまが結構いらっしゃって、学ぶことも多かったです。例えば、洗面台に置いて、朝洗顔をするついでにシュッと一吹きするという人がいて。洗面台に置いても違和感のないデザインだから「すごくいいです!」と。
加形:サプリメントを飲むとき、普通だったら水をくんで、ボトルや薬箱から取り出して、ダイニングテーブルに座って飲んで、という一連の動作が必要になりますが、その行動が変わるということですもんね。ベッドの上でも、寝ながらでも飲めてしまう。
八木:習慣化に必要な要素の1つとして「しまわなくていい」というのもあるのではないかと思っています。「取り出す」「水を用意する」という行為は簡単なようで、毎日だと面倒なんですよね。それで私たちがこだわったのは、生活の動線上にただ置いてあっても違和感がないデザインにすることでした。私はデスクの上に置いているのですが、仕事中に目に入った時にシュッとするだけでビタミンCが摂取できます。
深沢:デザインはロゴをシンボリックに入れることだけ最初に決まっていたのですが、後は最小限にシンプルにすることに注力しました。その結果、私が想像していなかったような場所に置いて使っていただけていて。ここまで要素を絞り込んでシンプルにするのは、デザイナーとして怖さもありましたが、結果として良かったと思います。

八木:あるお客さまは「これまでのサプリメントは修行だった」と言っていました。味や楽しさを期待するものではない一方で、飲み忘れると罪悪感がある、と。でも「IN MIST」はおいしいし、簡単に飲めるから続けることができて、「小さなことだけど、それが達成できていることで自己肯定感が上がる」とおっしゃっていただけて。エモーショナルな部分にも影響を与えることができたのが、すごくうれしかったです。
日常生活に溶け込むデザインで、これまでになかった新しいサプリメントの形を切り開いた「IN MIST」。後編は、グッドデザイン賞受賞の経緯や新規事業をローンチするにあたっての苦労、これからの展望などを語っていただきます。
人々の行動様式に変革をもたらす新しい商品や事業を開発するためのヒントを得たいと考えている方は、ぜひ一度電通グループにお問い合わせください。まずはCONTACTから。