AIとデータソリューションに専門性と実績を持つデータアーティスト株式会社。そのデータアーティストがリリースしたのが、AIモジュールを組み合わせてソリューションを構築するサービス「KEY RING」です。この「KEY RING」を使えば、既に実績豊富なAIソリューションをすぐに活用できる他、いくつかのAIモジュールを組み合わせて新たなソリューションを構築することも可能です。
「AIに興味はあるけど、どう使えばいいか分からない」「いろんなところでAIの話を聞くけど、自社のビジネスにも使えるのだろうか」など、AIについて疑問をお持ちの方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。あるいは、そもそもAIなら業務を効率化できるということに気付いていない人も多いかもしれません。一見「難しそう」なAIを、「誰でも簡単に扱えるようにする」ために生まれたのが「KEY RING」ですが、それでも「AIモジュールを組み合わせるって、どういうこと?」など、AIに詳しくない人には分かりにくい点も多いでしょう。
そこで今回の記事では、データアーティストの山田健氏から、「KEY RING」の開発背景から概要、特徴などについてご紹介いたします。ぜひ記事をお読みいただき、自社でのAI活用の可能性について一度検討されてみてはいかがでしょうか。
AIは「最先端の技術」から、今や「社会のインフラ」に

今回は、データアーティストが提供する、AIモジュールによるソリューション構築サービス「KEY RING」を紹介します。ですが、その前に、「AI」についてちょっとお話をさせてください。
「AIって何ができるの?」「AIって今どこまで進化しているの?」など、AIについて疑問をお持ちの方や、「AIって最近よく聞くけど、なんだかよく分からないな」と感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
実は「AI」が注目されたのは今に始まったことではありません。過去にも「ブーム」と言われるような時期があり、その後に冬の時代が来て、というのを何度も繰り返しています。
1950年代後半~1960年代に「第1次AIブーム」が、また1980年代には「第2次AIブーム」が起こったと言われています。ですが、どちらのタイミングでも、当時の技術では限界があり、ブームは終焉を迎えました。そして今、2000年代から「第3次AIブーム」が起こっています。「ビッグデータ」と呼ばれる大量のデータを用いて、AI自身が知識を獲得する「機械学習」が実用化されました。さらには、知識を定義する要素をAIが自ら習得する「ディープラーニング」が登場。それらによって、画像認識や音声認識、翻訳などさまざまな分野で性能が向上したことで、3度目のブームが起こったのです。そして今、AIができることが飛躍的に広がってきています。
このディープラーニングの開発によって、当初は簡単なシステムだったAIは、今では人間の脳の中の神経細胞を模したようなモデルに。そんなAIやIoTによって、「第4次産業革命」が起こっており、世界は今、この恩恵を受けられた国とそうでない国とで経済が二極化されつつある、と言われています。
AIは間違いなく、これからの時代の変革や進化をリードするカギとなるテクノロジーなのですが、AIに対する期待が一番盛り上がっていたのは2016年頃であり、2020年に入ると、「とにかく期待にあふれた、時代をリードするトレンド」というよりも、むしろ「これからの社会インフラとして使い倒すもの」へと成熟してきています。しかし、日本の状況を見ると、AIに対してのリテラシーは、決して高くない状況にあります。AIに投資してきた企業も、その投資をしっかりビジネスで回収しきれているかというと、まだそのような例は多くはありません。そもそもほとんどの企業が、AIについて「導入検討中」というステータス。社会の状況から見れば、既にAIという技術はインフラ化してきているにも関わらず、多くの日本のビジネスパーソンは「何ができて何ができないのか分からない」「自分に使えるのか分からない」「どこから始めたらいいか分からない」といったように、「AIに興味はあるけど、敷居が高い。何ができるのかよく分からない」といった思いを抱いたまま、AIから何となく距離を置いているというケースが数多く見られるのです。
「KEY RING」は、誰もが簡単にAIを活用できるプラットフォーム。20種類のAIモジュールで活用方法は無限に広がる
そこで私たちが開発したのが、モジュールAIサービス「KEY RING」です。これは、「誰もが簡単に使えるAI」をコンセプトに、分かりにくいAIのケイパビリティ(能力や可能性)を明確にして、誰もが活用できるAIプラットフォームを作ろう、という思いで開発したものです。AIと言うと、エンジニアしか使えないのではないかと思われがちですが、私たちはAIを企画担当のような、非エンジニアの人たちにこそ活用してほしいと考えています。
「KEY RING」とは、つまり「キーホルダー(鍵束)」という意味。キーホルダーにいろんな鍵が付けられていて、その中から必要な時に必要な鍵を使う。そんなイメージで、「必要な時に必要なAIを使って、課題解決の扉を開ける」という使い方を想定しています。
「KEY RING」では、現在20種に及ぶ個性豊かなAIモジュールを用意しています。例えば、「世間話ができるレベルに自然な対話ができるAIモジュール」「動画内の人々の動きや感情の移り変わりを捉えるAIモジュール」「Webの世界を回遊し必要な情報を収集し整理するAIモジュール」などです。その1つひとつの元は、当社がこれまで「こんなことできないか?」とご相談いただき、開発してきたソリューション。それらをひもといていったら20種のAIモジュールに分けられました。ですから、これらのAIモジュールは、既にパフォーマンスの精度が立証されているものとなります。そして、これらのAIモジュールは、単独での活用はもちろん、まるでブロック玩具のように組み合わせることでより効果的なソリューションを構築できるのです。
「KEY RING」が実装しているAIモジュールをまとめたものが下の図になります。

クリエーターやプランナーにこそ使ってほしいのが「KEY RING」
では、この「KEY RING」を活用するメリットは何でしょうか。まずは何よりも「スピード」と「コスト」です。これを使えば、オリジナルでゼロからAIを開発しなくていいので、スピードが速く、コストも安くなります。もちろん、データ学習や読み込み作業はする必要がありますが、それでもすぐに実証実験に臨めるような状態をつくりあげられます。
また「KEY RING」が提供しているAIモジュールは、組み合わせることでさらに価値あるソリューションに仕立て上げることが可能です。例えば私たちの取り組みに、サッカーの勝敗予想をリアルタイムで行う「AI ELEVEN」というソリューションがあります。これは、選手の動きを追跡して分析する「モーショントラッキングモジュール」と、ピッチにおける選手やボールの位置を解析する「画像領域分解モジュール」を組み合わせることで作られました。
さらに、「KEY RING」のAIモジュールは、AIモジュール同士はもちろんのこと、他のシステムにつなぐこともできます。そのため、さまざまなSIer(System Integrator:システム開発にまつわる業務全般を請け負う企業)と協業しながら、必要な部分にだけ「KEY RING」のAIモジュールを使うといったように、部分的にフォローアップするようなことも可能です。
「KEY RING」のサイトには、AIモジュールの紹介や、AIモジュールを組み合わせた新たなソリューション事例を掲載しております。実は、「KEY RING」は、ファミレスのメニューのような「AIのメニュー」を作りたい、という私の思いを反映したものでもあります。本来であれば、課題に対して「AIならこういうソリューションが可能です」とご提示するのがいいのですが、AIへの期待やイメージがなければ、課題をぶつけることも難しいでしょう。ですから、まずは「KEY RING」のサイトにあるAIモジュールや取り組み事例をご覧いただき、「こんなことができるんだったら、自分たちの課題解決に役立つんじゃないか?」と逆引き的に見ていただいてもいいのではないかと思っています。そうすれば、より具体的なAIの活用シーンがイメージできるのではないでしょうか。
「KEY RING」は、「こんなことをしたい」という想いに対してすぐに応えられるAIソリューションがそろっていますし、さらにそれを組み合わせることでいろんなことができる。まさにアイデア次第でさまざまなAIソリューションが実現できます。ですから、エンジニアはもちろんですが、クリエーターやプランナーにこそ使ってほしいと思っています。
今回は、「KEY RING」の開発背景や基本的な機能を紹介させていただきましたが、次回はこの「KEY RING」を活用してどんなことができるのか、具体的なソリューション事例をいくつかご紹介したいと思います。そして、少しでも皆さんに「AIって使いやすい」「AIをうまく使えばできることが広がる」と感じていただければ幸いです。
「誰もが簡単に使えるAIプラットフォームを作ろう」という思いから開発された「KEY RING」、ご興味をお持ちいただけたでしょうか。まずはサイトをご覧いただき、いろんなAIモジュールや活用事例を見ながら、「自社のこういうニーズに合うかも」「これはそのまま自分たちにも活用できないか」というところから考えられてみてはいかがでしょうか。AIを活用して生産性を高めることができれば、自社の競争力アップにつながります。
今回は「KEY RING」の基本的な特徴を山田氏からご紹介いたしましたが、Transformation SHOWCASEでは、引き続き「KEY RING」を活用して構築したAIソリューション事例をご紹介していきます。そちらの記事もぜひご一読ください。