SNSの影響力が急速に高まっている近年。SNSで大きな影響力をもつ「インフルエンサー」に自社の商品やサービスを紹介してもらい、お客さまの態度や行動変容を促す「インフルエンサー・マーケティング」に興味を持っているマーケターも多いのではないでしょうか。一方で、ステルスマ-ケティングの問題が取りざたされたり、SNSでのプロモーションが炎上したりなどというような事象もたびたび起こっているため、インフルエンサーの起用を敬遠している人も存在します。
そこで今回は、インフルエンサー・マーケティングに数多くの実績を持つ株式会社KAIKETSUの高橋昂太郎氏に、最近のインフルエンサー・マーケティング事情について解説いただきました。前編と後編の2回にわけてお届けします。
企業が最適なインフルエンサーを判断できず、躊躇するという課題
Q.まずは非常に初歩的な質問で恐縮ですが、そもそも「インフルエンサー・マーケティング」とは何でしょうか?
高橋:そうですね。例えば私が友人に「どんな仕事しているの?」と聞かれたら、「YouTuberのタイアップ動画とかあるよね。ああいうものの、YouTuberのキャスティングをしたり、その動画企画を考えたり、投稿をサポートしたりしている」と答えています。もちろんYouTubeだけではなく、InstagramやTwitter、LINE、TikTokなどのSNSにはすべて対応していますし、それぞれのSNSでたくさんのフォロワーを抱えているインフルエンサーを起用した情報発信を行っています。
Q.特に最近、企業からはどのような相談が寄せられていますか?
高橋:やっぱり正直、「インフルエンサー・マーケティングはよく分からない」と思っていらっしゃるマーケティング担当者が多いな、と感じています。それにはいろいろな理由があると思うのですが、とりあえず「インフルエンサーを起用して情報を発信する」ことの必要性は分かっている。だけど、じゃあどんなインフルエンサーを起用したらいいのか、というところまでは、あまりイメージがわかない。例えば、Aというインフルエンサーはフォロワーが3万人いて、Bには30万人いるとします。どちらがいいのか?あるいは、同じようなフォロワー数を抱えているインフルエンサーが2人いたとして、どちらを起用したらいいのか?
訴求したい商品やサービスが今どういう状況なのかによっても最適なインフルエンサーというのは変わってきます。世の中に出たばかりの新商品なのか、それとも定番商品のテコ入れをしたいのか。そういったところも踏まえて、最適なインフルエンサーを提案するようにしています。
重要なのは、インフルエンサーの効果期待を可視化できること

Q.インフルエンサーというと、何となく「若者向け」というイメージがありますよね。そんな私も中年世代にあたるわけですが(笑)、かつて私もインフルエンサーを起用したマーケティングを実践しようと思って提案を受けたことがあるものの、正直インフルエンサーを誰も知らなかった。そうなると、「この人に発信してもらいましょう」と言われても、本当に効果があるのか感覚的にピンと来なくて、つい躊躇してしまうという経験をしました。若い世代の情報に疎い私の方が、悪いということは分かっているのですが……。
高橋:いえ、確かに、例えば日々ネットニュースになるような人たち、あるいはテレビにもよく出ているようなタレントの皆さんは、「メガ・インフルエンサー」ということで、もちろんフォロワーもたくさんいます。ですが当然費用も高くなりますし、いろいろと条件もあったりして、通常のマーケティングでは起用しづらいのではないでしょうか。私たちがよくご提案するのは、フォロワー数で言えば数万~数十万レベルのインフルエンサーで、そういう意味では、コアターゲットでないと顔も名前も知らない、ということはよくあります。ですから、こちらでインフルエンサー候補をそろえて、リストを作ってご提案しても、企業の担当者の方にはピンと来ないというのはよくある話です。
そもそも、インフルエンサー・マーケティングの課題として、特にSNSによるマーケティングは「データがそろっておらず、評価基準があいまいになりがち」であることは、私たちも自覚しています。ですからKAIKETSUでは、インフルエンサーの情報をなるべく定量化する、というところにはかなり力を入れています。フォロワー数はもちろんですが、じゃあこのインフルエンサーを起用すると、どういった人たちに情報が届くのか。フォロワーの性別・年齢の構成比はどうなっているか、あるいはこのインフルエンサーが情報発信をしたときのエンゲージメント率は過去どうなっているのか。どれくらいの効果が期待できるのか。そういった項目についてはしっかりデータを出して、企業の担当者にきちんと見ていただくようにしています。そのためのオリジナルの分析ツールも開発して、どういった効果が期待できるか、実際どういった効果が出たかというところを、しっかり見ることができるように取り組んでいます。
Q.なるほど。やはりインフルエンサーを起用する側からすれば、その「効果」が見えにくいと当然躊躇しますよね。
高橋:はい。インフルエンサー・マーケティングが一般的になったのは4年くらい前、2017年ごろかなと感覚的には思っていますが、例えば2年くらい前の2019年ごろは「トライアル期」という印象でした。そのころは企業からご相談いただいて、こちらでインフルエンサーをご提案するとだいたいそのままご採用いただくという状態で、ちょっとバブルのような感じでした(笑)。ですが、そこから一巡して、多くの方がインフルエンサー・マーケティングを一度はやってみた、というような状況になったところで、今はインプレッションがどれだけ出るかなど、「効果」の部分をしっかり示すことが求められるようになっています。
私たちKAIKETSUでは、そういった企業側のご要望に応えるべく、常にインフルエンサーの情報鮮度を保つように尽力しています。例えば、インフルエンサーとしての活動歴が長い人は、その分フォロワー数が多いわけですが、実は「枯れている」という人もいる。前に比べるとファンが離れていたり、エンゲージメントが高くなかったりする人もいるんです。インフルエンサーにも「移り変わり」がありますから、そういうところも踏まえた上で、「本当に効果を期待できるインフルエンサーとは?」という視点でご提案するようにしています。
私たちKAIKETSU以外にも、インフルエンサー・マーケティングを売りにしている会社は本当にたくさんあると思いますが、ただキャスティングしているだけとか、フォロワー数だけを見て提案するような会社は、今は結構厳しいんじゃないかなと思います。
変化の激しいSNSのインフルエンサー・マーケティングにおいて、データを重視した施策に取り組むKAIKETSU。その背景には、「評価基準があいまいになりがち」というSNS特有の課題に対する問題意識がありました。続く後編では、インフルエンサー・マーケティングを成功に導くカギや最近の注目すべき変化について、じっくりと語っていただきます。