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2022/01/11

インフルエンサー・マーケティングの最前線 トレンドとニーズをつかんだ、次の一手とは(後編)

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SNSで大きな影響力をもつ「インフルエンサー」に自社の商品やサービスを紹介してもらい、お客さまの態度や行動変容を促す「インフルエンサー・マーケティング」。その第一線で活躍し、数多くの実績を持つ株式会社KAIKETSUの高橋昂太郎氏が、最新のインフルエンサー・マーケティング事情について語るインタビューの後編をお届けします。今回はテーマにさらに踏み込んで、インフルエンサー・マーケティングを成功させるカギや、今注目すべきフォロワーの変化について語っていただきます。

>>前編はこちら

「PDCA」こそ、インフルエンサー・マーケティングの醍醐味

Q.インフルエンサー・マーケティングの「効果」という点では、企業からはどこまで求められているのでしょうか?あるいは、高橋さんとしてどのような「効果」を企業に届けていますか?

高橋:やはり重要なのは、きちんと購買につながったかというところだと思います。「インフルエンサーが発信したからすぐに売れた」という状況を狙うのはもちろんなかなか難しいですが、そういう目線できちんと効果があったかどうかを見ることが大事なのではないかと。

「購買のリフトアップ効果」という点では、例えばAmazonや楽天のランキングなどはしっかりチェックしています。インフルエンサーの発信とランキングに相関関係があるかどうかも、指標の1つにしていますね。

もちろん、購買だけではなく、ブランディングも重要なミッションです。例えば自動車のような高額品だと、SNSを見てすぐに買うことはなかなかないですよね。そういうケースでは、「いいね!」数やコメント数を1つの指標にします。また、単純にコメントが多ければいいというだけではなくて、その中身も重視するのがポイントです。「欲しくなった」といったコメントが書かれているか、あるいは売りにしたい商品特徴がきちんと伝わっているかなど、質的な部分もしっかりとチェックしますね。

幸いなことに、多くのケースにおいて事前に定めていたKPIは達成できており、ご採用いただいた企業の皆さまにもご満足いただけているのではないかと考えています。ですが、もちろんKPIを達成できないときもあります。そういうときこそ、Amazonのランキングをしっかり追いかけたり、エンゲージメントの様子をチェックしていく。すると、うまくいっているタイミングもあることが見えてくるんです。それがどういう状況なのかを把握して、いわゆる「勝ちパターン」を見つけていく。そしてそれを、次の展開に生かしていく。そういう進め方が重要だと考えています。

例えば、とある製薬会社様がクライアントとなった案件がありました。そのクライアントは、インフルエンサーによるSNSでの情報発信が初めてで、トライアル的にご採用いただきました。いざ施策を展開してみると、残念ながらコンバージョン率が想定よりも低かった。ですが、その効果をしっかり追いかけていく中で、フォロワーからのコメントを読み込んでいくと、「こういうメッセージは刺さる」というポイントが見えてきました。そしてこの発見を、その後の広告制作やランディングページ、Amazonサイトへと反映させていく、という流れが生まれました。そういう意味では、インフルエンサー施策そのものは成功とは言えませんでしたが、マーケティング施策全体としては重要なお客さまインサイトを発見したとしてご評価いただきました。

このように、「事前の想定と違った反応が起こる」というのもSNSの難しいところであり、また面白いところでもあります。例えば美容系の商品の場合、女性インフルエンサーの起用は誰もが考えるわけですが、あえて男性インフルエンサーを起用したら当たったというケースもありました。可能であれば、いろいろなジャンルや特徴を持ったインフルエンサーを起用して、そこでPDCAをしっかり回して、こちらも想定していなかったようなポテンシャルを見つけていけると面白いですね。

成功のカギは、インフルエンサーの世界観に合う施策を展開すること

Q.高橋さんはさまざまなケースを見ていらっしゃると思いますが、「インフルエンサー・マーケティングを成功させるコツ」は何だとお考えでしょうか?

高橋:インフルエンサーを起用した情報発信を、いわゆる「広告枠に情報を出す」とか「看板を出す」のと同じ認識でやるとうまくいかないかなと思います。一番違うのは、インフルエンサー・マーケティングは「人と人とのコミュニケーション」だということです。ですから、インフルエンサーの普段のトーン&マナーや雰囲気に合わせて施策を打つことが大事になってきます。「とにかくガチガチに商品を打ち出してほしい」というように企業の希望を押し付けるようなやり方をして、いつもとは違う違和感が出てしまうと、フォロワーに受け入れられません。いかにインフルエンサーの持つ世界観に合わせて展開できるかが重要だと思いますし、その世界観と企業が打ち出したいポイントとの接点を探っていくのも私たちの仕事ですね。

Q.前編で「インフルエンサー・マーケティングをやっている会社はたくさんある」とおっしゃいました。いろいろな会社がある中で、KAIKETSUさんの強みやユニークネスは何だとお考えですか?

高橋:まず、インフルエンサーの情報をどれだけ持っているかという点で言うと、KAIKETSUでは約5万人のインフルエンサーのデータベースを保有しています。日本国内であれば、「1万人以上のフォロワーを持っている人」ならほぼ全て押さえているという状況。もちろん、フォロワーの状況は常に最新情報に更新しています。

ただ、これは競争力ではないなと思っています。はっきり言うと、「インフルエンサーを使ってSNS投稿する」ということなら、たぶん誰でもできるわけです。ですからむしろ私たちは、その先の「PDCA」こそ重視しています。投稿したらどういう動きが起こったのかを分析して、改善していく。購買に影響を与えたインフルエンサーをきちんと見て、その人はどんなフォロワーを抱えているのか、そもそもそのインフルエンサーは普段どういう投稿をしているのかを見るとともに、フォロワーのコメントもしっかりと分析して、勝ちパターンを見出していく。そして、それらを踏まえて、「次はこうしましょう」を提案していく。前編でお話しした自社開発のオリジナル分析ツールも、それを重視した上でのアプローチと言えます。

インフルエンサー・マーケティングに見られる最近の変化

Q.インフルエンサー・マーケティングを取り巻く状況が、ここ最近こんなふうに変わってきたなどの変化はありますか?

高橋:はい、これはInstagramの使われ方が変わってきたのと関連しているんじゃないかなと思うのですが、これまでのインフルエンサーは、例えば「カフェに行きました」「こんなものを買いました」というように、その人のライフスタイルを軸に発信しているような人が起用されることが中心的でした。ですが最近は、インテリア情報ばかり投稿しているとか、おトク情報ばかり投稿しているといった、目的が明確でニッチなジャンルを押さえているインフルエンサーを起用するケースが増えていると感じます。

というのもInstagramが、「自分で検索して情報を探す」というメディアに変わってきている。だから投稿内容も写真だけではなくて、文字情報がしっかり入っているものが届きやすくなっている。「素敵な世界観をシェアする」というよりは、「欲しい情報をしっかり得る」ためのメディアとして利用されるようになりました。それに応じる形で、そういう情報を発信しているインフルエンサーが選ばれることが多くなってきたなと感じています。

もう1つの変化としては、東京五輪の影響もあると思いますが、スケートボードやブレイクダンスなど、「ストリートスポーツ」系のインフルエンサーが人気です。それ以前は、そういうアスリートやアーティストは「ヤンチャ」なイメージもあって敬遠する企業も多かったのですが、最近は市民権を得たなと感じますね。インフルエンサーのジャンルはどんどん多様化していっています。

Q.最後に、企業からの相談内容やKAIKETSUさんに期待していることが、最近どのように変わってきているかを教えてください。

高橋:そうですね。これは私たちがPDCAに力を入れていることとも関連していると思いますが、「インフルエンサーを起用したい」というよりもむしろ、「自社のSNSアカウントの運用をサポートしてほしい」という相談が増えてきているなと感じます。インフルエンサー・マーケティングで培った私たちの「SNS運用ノウハウ」がお役に立てるのかなというところですね。例えば、あるメーカーの公式Twitterの運用をサポートさせていただいています。もちろんTwitter投稿の代行はできるのですが、そういうことよりもむしろ、投稿したらどういう人が「いいね!」してくれたのかや、「いいね!」が多くなる投稿とはどういうものなのかといった点をしっかりと分析しています。

確かに多くの企業は、公式SNSを運用していても、せいぜいフォロワー数が多くなったかどうかくらいしかチェックできておらず、本当に届けたい人にメッセージが届いたかというところまで踏み込んでいる企業は少ない印象です。公式SNSの強化自体をご要望いただくケースが増えている理由は、私たちならそういったところまでサポートできるからではないかと感じています。

それから、企業のプロモーション施策を企画開発する段階からインフルエンサーに入ってもらうという取り組みも始めています。インフルエンサーは、「SNSを使った情報発信が上手な人たち」であるわけです。その強みを借りて、「このターゲットにこういう情報を届けたい、商品をもっと買ってもらいたい、そのためにはどうすればいいのか?」という初期フェーズからインフルエンサーも一緒に考えるんです。彼らが持っている「フォロワーを動かすノウハウ」を、そのままプロモーション企画に生かしていくという試みですね。

こうやって考えると、インフルエンサー・マーケティングとは「SNSを上手に使ったマーケティング」と同義である要素も大きいわけです。私たちとしては、「SNSマーケティングのプロ」として、これからもあらゆるご相談にお応えしていきたいと考えています。

 


 

インフルエンサー・マーケティングとは「人と人とのコミュニケーション」であり、「SNSを上手に活用したマーケティング」であると話す高橋氏。インフルエンサーが持つ世界観と企業の訴求点との接点を見つけることが、効果を生むマーケティングのカギと言えるようです。このポイントさえ押さえれば、刻々と変化するフォロワーのニーズに的確に応える次の一手が見つかるのではないでしょうか。

 

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株式会社KAIKETSU

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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