CX
2023/07/19

10年後の消費を担う「α世代」の行動・価値観は?調査から見えてきたもの(後編)

INDEX

株式会社 電通マクロミルインサイト(以下、DMI)は、市場を独自の視点で分析・解釈しつつ、マーケティングコンテンツや自主調査レポートを発信しています。同社は2022年12月、Z世代よりもさらに下の世代であるα世代(アルファ世代/ジェネレーションα)の行動・価値観に注目した『「α世代に関する調査」レポート』を発表しました。

DMIの今泉直史氏と阿部駿氏へのインタビュー前編では、この調査結果を基に、α世代とその親との関係性が非常にフラットなものになっているという見解を聞きました。後編となる今回は、α世代の思考や消費行動をさらに深くひもといていきます。

α世代の30%が「YouTuberに憧れている」と回答

Q.前編では、α世代の子どもとその親の関係性はフラットであり、相互に影響し合っているという見解をお聞かせいただきました。それ以外に、調査データから得られた注目すべき発見がありましたら教えてください。

今泉:各世代がどのような人から影響を受けているかを調査したところ、α世代は30%、Z世代は10%ほどが「YouTuberから影響を受けている」と回答しました。芸能人やスポーツ選手だけではなく、SNSやWebメディアで影響力を持つ人たちの名前が挙がるのは、ミレニアル世代以上の年代の人々との大きな違いですね。
阿部:その影響かどうか、はっきりとは分かっていませんが、α世代に「将来の理想の姿」を聞いたところ、「自分の好きなことをして、自分らしく生きたい」「多くのお金を稼ぎ、贅沢な暮らしをしたい」といった回答が多く見られました。企画実現のために多額の投資をしたり、「爆買い」と称した動画をアップしたりするなどでYouTuberが話題になることも多く、こういった目に見える派手さに触れる機会も増えているので、そのあたりがα世代の価値観にフィットしたのかもしれません。
α世代が描く将来の理想像
阿部:α世代が将来に対して理想を高く掲げる一方、親世代は子どもに対してもう少し落ち着いてほしいと思っているようです。「子どもに望む将来の理想の姿」を聞いたところ、「病気にならないでほしい」「リラックスした気持ちで過ごしてほしい」といった回答が多く、関係性がフラットになったとしても、親が子を思う気持ちは変わらないことが実感できましたね。

デジタル化が進む中で、α世代に注目する意義とは

Q.そもそもの話になりますが、今回の調査でα世代に着目したのはなぜなのでしょうか?

今泉:今回の調査は社内横断プロジェクトで、さまざまな部署の人が集まってチームを組みました。その結果、私も含めα世代の子どもがいるメンバーが多く集まったんです。α世代はZ世代に比べてまだ研究が少ないですし、新しいことを探っていく意味でも、自主調査を行おうという話になりました。
株式会社 電通マクロミルインサイト 今泉 直史氏

Q.α世代を調査してほしいと依頼をするクライアントさまも同様に少ないのですか?

今泉:以前から「今の小学生を解明しよう」といったテーマの調査依頼は多くいただいていましたが、「今後はα世代が消費の中心になるから研究しよう」といった声は、現段階ではあまり上がっていませんでした。とはいえ、一部のクライアントさまは既に動き始めています。

例えば、ある出版社では、子ども向けの雑誌やコミックスが、どのような読まれ方をしているかということに注目しています。その理由は、コンテンツのデジタル化が進む一方でコミックスはいまだに売れている、という現象が起きているからです。

実はここにも、「親子で一緒に楽しむ」という、α世代とその親の関係性が現れていると思っています。コミックスというのは、1人で楽しむだけならデジタルでいいけれど、誰かと一緒に楽しむときは、紙媒体の方が都合がいいことが起因していると考えています。

Q.5〜10年後には、α世代が消費の中心になっていきます。中長期的な視点で考えると、今回の調査は「一歩早く動く」ために役立ちそうですね。

今泉:そうですね。5〜6年前から、「これからは消費の中心がZ世代に移っていく」と言われてきました。ただ、この先の生活者研究をする上では、ネクストボリュームであるα世代をターゲットにして動いた方がいいような気がしています。α世代の調査を行っている事例があまりない分、この調査はインパクトがあったようで、問い合わせや資料ダウンロードが少しずつ増えていますね。

思春期を迎えるα世代を観測することで見えてくるもの

Q.DMIでは、今後もα世代を引き続きウォッチしていくのでしょうか。それとも、この調査をベースに他の世代を分析するなど、別の展望があるのでしょうか?

今泉:ちょうど今、α世代の始まりである2010年生まれの人たちが中学生になり、個性や価値観を確立していく時期に差し掛かっています。今回の調査結果がα世代特有のものなのか、あるいは親の影響を受けやすい子どもならではの価値観だったのかを検証するためにも、今後も定点観察を続けていくつもりです。
阿部:α世代の子たちにこれから反抗期が来て、ゲームを1人でやったり、友だちとだけ楽しみを共有したりするのか、あるいはずっと親と仲良しのままなのか、といったところにも注目していきたいですね。
株式会社 電通マクロミルインサイト 阿部 駿氏
今泉:DMIは、社名にもある通り「インサイト」をとても大事にしています。特に今、注目しているのが「生活者研究」という領域。世代における行動・価値観の特徴や、トレンドの移り変わりをまとめているデータもあるので、それらを基にクライアントの商品開発につなげていくようなことをしていきたいです。

Q.今回の調査は、社内でも反響がありましたか?

阿部:α世代を調査すると決まった時に、今泉の方から「どんな調査をしたら楽しいだろう」という話が出たんです。その後、各メンバーが意見を出し合い、調査の方向性が決まりました。そうして始まった調査だったので、「この結果ってこうなんじゃない?」と考察するフェーズでは、みんなが楽しんで取り組んでいましたね。「α世代の消費に親が巻き込まれている」といった現象が言語化され、明確な気付きを得られたのは、プロジェクトメンバーのおかげだと思っています。
今泉:今回のプロジェクトメンバーは、デスクリサーチの担当者や、解析をメインにしている人など、クライアントさまとあまり接しない仕事がメインの人も多く参加していました。そのため、今までは、自分たちの仕事がどのように生きているのか、実感する機会が少なかった人も多くいたのですが、そんなメンバーも、先ほどもお話しした通り、調査レポートを発表した後、予想以上に問い合わせがあり、そのことに驚いたり喜んだりしていました。やっぱり、「届いている」ことが伝わると意欲が湧きますよね。全社的にクライアントの声を聞くような体制ができた点は、プロジェクトの成果だと感じています。

 


 

遠くない未来、消費の中心となるα世代。ビジネス的な観点からも、わが子を理解するという意味でも、α世代の行動・価値観を知りたいと思う人は少なくないでしょう。「一歩先」に動くためにも、豊富なデータから社会の兆しを発見するDMIのα世代研究に、ますます注目が集まりそうです。

α世代、Z世代といった世代別の調査に限らず、人々の消費行動など、マーケティング活動を促進するためのあらゆる知見が、電通グループにはそろっています。ビジネスの新たなアプローチを追い求めている方は、ぜひCONTACTよりお問い合わせください。

この記事の企業サイトを見る
株式会社 電通マクロミルインサイト

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

RELATED CONTENTSあわせて読みたい
BX
サステナビリティ推進に、Z世代共創型ソリューションがなぜ有効なのか?(前編)
NEW STANDARD株式会社 代表取締役久志 尚太郎 Shotaro Kushi , 株式会社電通デジタル デジタルネイティブルーム / YNGpot.™ 共同代表、ビジネストランスフォーメーション部門 マーケティングイノベーションデザイン事業部 / コンサルタント松崎 裕太 Yuta Matsuzaki , 株式会社 電通 サステナビリティコンサルティング室 / ディレクター田中 理絵 Rie Tanaka
CX
「タイパ」はコンテンツをどう変える?Z世代の実態から考える、これからのクリエーティブ(前編)
株式会社 電通 サステナビリティコンサルティング室 / Future Creative Center用丸 雅也 Masaya Yomaru
CX
Z世代ならではの購買体験をプランニング。「若者消費ラボ」が目指す未来とは(前編)
株式会社電通プロモーションプラス 統合プランニング事業部 プランニング・CR2部 / コミュニケーションプランナー、PRSJ認定PRプランナー五十嵐 響介 Kyousuke Igarashi , 株式会社電通プロモーションプラス 統合プランニング事業部 プランニング・CR3部高橋 ひなの Hinano Takahashi , 株式会社電通プロモーションプラス OMOプランニング事業部 プランニング・CR2部齋藤 晃平 Kouhei Saito
AX
協調フィルタリングによる商品レコメンドのメリットとは。「ユーザーの好み」をベースにした商品との出会いはZ世代と好相性?
BX
BNPLはZ世代になぜ人気?後払いの新しい決済スタイルとは。魅力的なCXのヒントにも
AX
ウィズコロナのスポーツ界に広がるDX。NFT活用やZ世代メディアの台頭がスポーツコンテンツを変える
VIEW MORE POSTSCLOSE
RECOMMEND CONTENTSTSCからのおすすめ
VIEW MORE POSTSCLOSE