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2023/07/31

未来の出来事を包括的に見通す「未来曼荼羅」。企業のイノベーションの入り口に(前編)

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テクノロジーの急速な進化に伴い、あらゆる変化のスピードが著しく加速しています。また、人々の価値観やライフスタイルも多様化し、企業が提供する商品やサービスだけでなく企業の在り方も、その変化への対応が欠かせないものになっています。

電通未来曼荼羅2023(以下:未来曼荼羅2023)」は、これまで主に電通グループ内で活用されてきた未来予測資料を、広く企業の戦略立案や新規事業、サービス開発に活用できるよう、“中期未来予測ツール”としてバージョンアップしたものです。その作成に携わった、株式会社電通コンサルティング 加形拓也氏へのインタビューとなる本記事。前編では、これまでの取り組みを振り返りながら「未来曼荼羅」立ち上げの経緯と概要、そして最新版での新たな挑戦について聞きました。

10年先の未来に通用する事業構想のために生まれたツール

Q.先日、国内電通グループ4社(株式会社電通デジタル、株式会社電通コンサルティング、株式会社 電通、株式会社アイティアイディ)共同で、2030年までに起こり得る未来トレンドをまとめた「未来曼荼羅2023」が発表されました。この「未来曼荼羅」という未来予測ツールは、2010年に電通で作られていたもので、その後、主にコンサルティングのための社内資料としてバージョンアップを重ねていき、今回、その最新版が完成したと聞いています。では、そもそも「未来曼荼羅」とはどのような経緯で生まれ、どのように活用されてきたのかというところを教えていただけますか。

加形:「未来曼荼羅」は2010年に電通のマーケティングチームが、あるクライアントさまの「10年先の未来に通用する事業構想をしたい」という要望を受けて作り始めたものです。その要望に対して、当時のマーケティングチームのプランナーが、「まずはこれから世の中に起こり得る変化を全部書き出してみよう」というかなり壮大なプランを掲げたのですが、その際に、「未来に起こり得る変化を、360度全方向にいっぱいに散りばめて、全部が見通せるような形にしよう」という「曼荼羅」スタイルのまとめ方のアイデアを出したんです。

当初は、1つのクライアント企業さまの事業構想のために作ったものではありますが、その精度が非常に高かったことから、可能な範囲で横展開していこうということで、汎用的に使える要素だけを抜き出し、電通の社内資料として商品開発関連のワークショップなどで使われていました。
株式会社電通コンサルティング 加形 拓也氏

Q.加形さんは「未来曼荼羅」とはどのように関わってきたのですか?

加形:私はもともと電通のマーケティングチームで、飲料会社などの事業構想に関わっていました。それから、電通デジタルに出向し、プロダクトだけではなく事業やサービス開発・運用のお手伝いをしていました。そして、昨年から電通コンサルティングに出向となりました。

私自身は、2010年に電通のマーケティングチームが「未来曼荼羅」を開発した時は、直接そのチームにはいませんでしたが、同じ部署には所属していたので、隣で「すごいことをやっているな」という気持ちで見ていました。その後、電通デジタルで新規事業やサービス開発に取り組み出した際に、今を見てサービスを作るのではなくて、数年先の未来を見て、新しいものを作っていかないといけないよね、という必要性を強く感じるように。そこで、かつての「未来曼荼羅」を更新して本格的に活用しよう、と思い立ち、私がマネージャーとなって「未来曼荼羅」を本格的にソリューションへと仕立て上げることになりました。具体的には数年おきのリニューアル版の作成と、コンサルティングでの活用ですね。

昨年、私が電通コンサルティングに移ったのをきっかけに、電通デジタルと協業して取り組むようになり、今年はさらに、電通とアイティアイディのメンバーも加わって「未来曼荼羅2023」を作成しました。

社会の変化を反映し、アップデートされてきた「未来曼荼羅」

Q.もともとは、あるクライアントさまのために生み出されたツールが、時代の変化とともにさまざまな企業のニーズにも合致していったということですね。「未来曼荼羅」のリニューアルというのは、どのようにして行われているのでしょうか。

加形:まず基本として、中期未来予測ツールである「未来曼荼羅」では、「人口・世帯」「社会・経済」「科学・技術」「まち・自然」の4つのカテゴリーにトレンドテーマを網羅的に分類し、それぞれのトレンドの概要とデータ、関連トピック、それらが未来にもたらす変化や重要になる視点をまとめています。
加形:以前は2年に1回を目処に改訂を行っていましたが、2019年の改訂では、激しい世の中の変化を受け、60の「未来トピック」のうち半分以上の内容を変更する大幅な改訂となりました。さらに、2019年から2020年にかけて多くの分野での社会変化を受けて、「未来曼荼羅2020」を作成。

そして、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、2020年4月末に「未来曼荼羅2020-BEYONDコロナ-」を作成し、「未来曼荼羅2020」と併用できるようにするなど、最近は時代の変化に合わせて、より高頻度の改訂を行ってきました。

Q.新型コロナウイルス感染拡大による社会変化は、どのように「未来曼荼羅」に反映されているのでしょうか?

加形:例えば、外出制限がある中で、リモートワークのためのツールなどICT普及が加速しましたね。教育分野でも、児童生徒向けの1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークなどを整備するという文部科学省の「GIGAスクール構想」がコロナ禍で前倒しになり、オンラインで学ぶためのサービスも急増。こうした事象を受け、「未来へのヒント」として、教育の目的や質が問い直されるポストコロナの時代に、どのような取り組みをすべきかといった提案を行っています。

Q.最新版の「未来曼荼羅2023」は、どのような特徴がありますか?

加形:「未来曼荼羅2023」の最大のチャレンジは、これまでは4〜5年先の未来を視点としていましたが、今回は2030年という明確なタイミングをターゲットにし、より先へ進めたことです。ひと昔前は、車のモデルチェンジが大体6年単位で行われるように、ハードウエアの変化が1つの時代と捉えられていましたが、今はソフトウエアが時代を変えていると感じられるため、1つのソフトウエアが普及する2〜3年単位で時代が変わり、新たな何かが生まれています。その中で2030年を見通すというのはなかなか難しいのですが、一方で未来予測をするときに、2030年という分かりやすい区切りを求める声もいただくようになっていたこともあり、そういったニーズにもお応えしようというチャレンジでした。

ですから「未来曼荼羅2023」には、Z世代を飛び越え、「α世代(2010年から2024年生まれの世代)の価値観と教育」などが新たなトレンドテーマとして加わっています。α世代はZ世代がけん引する今とはまた異なる価値観で事業をつくり、社会を変えていくわけですから。

Q.時代の変化が加速していくからこそ、より未来を見据える必要があるということですね。非常に興味深いですが、その予測となるとかなり大変そうですね。

加形:大変ですよ(笑)。トレンドテーマは従来の60から12増え、72に。さらに、「未来曼荼羅2023」のもう1つの大きなチャレンジは、4社合同での制作チームの編成です。メンバー全員が2人1組でテーマ案を出して、200くらい集まったものからより具体性のあるものに絞っていきます。テーマ案の提出の際には、根拠となる事例などもリサーチ。そして、有識者なども交えてさらに話し合いをして……ということを3〜4周しているので、多くの工程を重ねています。ですが、どのテーマにも複数の人が関わり、有識者の意見も取り入れることで多様な視点が加わっているという点が、非常に重要だと考えています。

 


 

電通グループの未来志向が生み出した「未来曼荼羅」は、コロナ禍を経て大きく変化する世の中において、多くの企業や自治体のニーズに対応できる可能性を秘めた未来予測ツールへと進化しています。また、変化の激しい時代だからこそ、より未来を見据えた視点が必要になっていくのでしょう。インタビューの後編では、これまでの「未来曼荼羅」導入事例などをもとに、「未来曼荼羅2023」をどのように活用すべきか、解説します。

電通コンサルティングでは、企業の担当者などを対象に、「未来曼荼羅2023」を実際に体験できるワークショップなども開催しています。興味を持たれた方は、お気軽にCONTACTよりお問い合わせください。

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株式会社電通コンサルティング

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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