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2023/09/11

プラットフォーム事業社のデータ活用で、デジタル販促はますます進化する。「SP COMPASS」で実現する、効果の最大化(前編)

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株式会社 電通株式会社電通デジタルは、共同開発した新しいソリューションとして「SP COMPASS」をリリースしました(2023年2月)。これは、デジタル販促における参加者の特徴や、最適なキャンペーン条件のシミュレーションができるシステムです。

これまで、消費者がキャンペーンに参加するには、シールを集めてはがきに貼って送るなどアナログな方法が主流でしたが、近年はスマートフォンを使っての応募など、デジタルを活用した方法へと舵が切られつつあります。そんな潮流の中で「SP COMPASS」の開発に携わった、電通の福田真大氏と、電通デジタルの飯野花音氏へインタビュー。開発の背景を実例を挙げてご紹介します。

過去データを学習し、アルゴリズムで効果を予測

Q.まずは、お2人の普段の業務内容について教えていただけますか?

福田:私はインターネット上でプラットフォーム事業社が保有する、データクリーンルームを活用した、広告や販促施策の分析を中心に仕事をしています。また、社内でのシステム開発のサポートなどにも携わっています。
株式会社 電通 福田 真大氏
飯野:私は、電通デジタルのコマース部門に所属しています。消費者が「買う瞬間」に寄り添うソリューションを提供するのが仕事で、オンライン領域のモールECや自社ECはもちろん、特にオフライン領域でデジタルプラットフォーム事業社の販促ソリューションを活用したプランニングをしています。その仕事の一環で取り組んだのが、今回の「SP COMPASS」ですね。

Q.「SP COMPASS」は、リリースによるとデジタル販促において、参加者の予測や最適なキャンペーン条件のシミュレーションができるシステムだそうですね。システムの内容をもう少し詳しく教えていただけますか?

福田:「SP COMPASS」は、過去のキャンペーン情報を、機械学習を活用した独自のアルゴリズムで分析し、販促キャンペーンの効果をシミュレーションするシステムです。

具体的には、これから実施しようとしているキャンペーン施策の情報、例えばキャンペーン期間、対象流通、キャンペーンの応募に必要な商品の購入個数や金額などを入力すると、過去実績をベースに、キャンペーンに参加すると考えられる人数(≒キャンペーン効果)が算出されます。同じ仕組みを使って、参加者数が最大になるようなキャンペーンの条件を導き出すことも可能です。
「SP COMPASS」の仕組み

Q.なるほど。このサービスの開発にあたっては、電通と電通デジタルの2社が関わっていますよね。協業に当たっては、どのように役割分担をしたのでしょうか?

飯野:私が所属しているコマース部門には、日々、さまざまな企業に対して、アイデアとテクノロジーとデータを掛け合わせたソリューションを提案しているプランナーがたくさんいます。そうした現場からの「こういうものが欲しい」「もっとこんなふうにできないか」などといった声を拾い上げて、システムの提案や推進をするのが、電通デジタル側の役割でした。
福田:電通サイドは、そうした提案を踏まえてシステムの開発をしていったという流れですね。情報交換、意見交換をしながら、つくり上げていきました。

アナログからデジタルへ、販促手法の変化を生かす

Q.現場からのニーズを大いに反映したサービスということですね。そもそもの開発のきっかけは何だったのでしょうか。背景を教えていただけますか?

飯野:ベースにあるのは、2年ほど前に電通グループ一丸で確立した、PayPayギフトを使ったキャンペーン施策です。これまで、消費者が企業の実施するキャンペーンに参加するには、レシートやシールを集めて、それを購買証明として応募する方法が一般的でした。でも、PayPayなどのキャッシュレス決済サービスは、購買した実績が残るので、PayPayを使って買うだけで応募ができてしまいます。それは、販促の領域では大きな変化でした。

しかし何度か実施経験がある従来型のキャンペーン、例えばはがき応募とは違い、PayPayのような「デジタル販促」は経験もなければ、蓋を開けてみるまで結果も読めない。これではなかなか挑戦しにくくなります。そんな中で、PayPayギフトで「どうやってキャンペーンをアップデートするか」、つまり応募の仕組み、ポイントインセンティブ、告知量の3つの観点で、どこに予算を集中させると応募が最大化するか。これは、クライアント企業はもちろん、電通側の課題でもあり、キャンペーンのシミュレーションの必要性を感じました。そこから、この「SP COMPASS」の構想が生まれていったのです。

シールを集める、QRコードを読み込んで応募するなど、キャンペーンに参加する手法が多様になりましたが、それぞれで参加人数や参加する層も大きく異なります。この経験を属人化させず、そのデータをしっかりと集積していってそれを使って予測ができたらいいよね、という議論が交わされて、システム開発へと動き出しました。
株式会社電通デジタル 飯野 花音氏

Q.キャンペーンの手法の変化と、クライアント企業や社内ニーズとの掛け合わせがお2人の中にイメージとしてあって、それをサービスに落とし込んでいったのですね。

飯野:そうですね。キャンペーン施策を提案する電通のプランナーとしては、これまでの経験からある程度の仮説を立てられても、それが正しいのか、今回も当てはまるのかは、提案段階では未知数です。そこで、「SP COMPASS」を活用することで、ポイントインセンティブの付与率によって参加者の特徴が変化する傾向をあらかじめ把握し、プランニングの示唆を得ていきます。複数の設計の中からどれが参加者が最大になりそうかをシミュレーションすることで、クライアント企業への貢献度合いもさらに大きくなるのではないか、と感じています。

例えばこれまでも、応募者全員に1人当たり50ポイント(50円相当)を付与するのと、抽選で当たった人に2000ポイント(2000円相当)を付与するのでは、どちらの方がより効果が上がるのかを知りたい、といった声はクライアント企業からも多数いただいていました。それに、販促の費用対効果ももちろん重要です。
福田:「SP COMPASS」の特徴として、これから実施するキャンペーンのシミュレーションはもちろんですが、「こういう設計でキャンペーンを実施すると、こういう人たちに参加していただけそう」ということが把握できる点があります。この「参加していただけそうな人」に対してターゲティングを行うことで、効果的なキャンペーン告知を行うことが可能です。「参加していただけそう」と判定されているのが、クライアント企業の元々のターゲット層なのか、それともこれまでとは異なる層なのかも、データによって可視化することができるので、「新しい層を取り入れたい」といったニーズにも応えることができるのではないかと考えています。なお、「SP COMPASS」は、ユーザーの同意許諾を十分に確認を行ったデータのみを使用し、データクリーンルームというプライバシーが保全された環境で分析を行っています。

機械学習モデルによる予測は、過去のキャンペーン実績があればあるほど、精度が上がっていきます。このシステムを使うほどにデータが溜まって、次のキャンペーンに生かしやすくなることが期待されています。

 


 

多くのサービスがデジタル化しているのと同様に、各社のキャンペーン施策もまた、次々とデジタル化していくことでしょう。そんな中で、デジタル施策だからこそ蓄積できるデータをいかに活用するかが、施策のカギとなりそうです。どのようにお客さまのデータを生かし、どのように次の施策につなげて効果を最大化するか。そうした課題に応えるのが、「SP COMPASS」なのです。

後編では、より具体的に「SP COMPASS」の活用イメージを掘り下げると同時に、デジタル販促の意義、今後のサービス展開についても話を聞いていきます。

キャンペーン効果をより高めていきたい、蓄積されているデータを活用して、販促のPDCAを回していきたいと考えている担当者の方。ぜひ一度、CONTACTからお気軽にお問い合わせください。

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株式会社電通デジタル 株式会社 電通

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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