コロナ禍以降リモートワークが浸透し、現在もオフィスワークとリモートワークを組み合わせた、ハイブリッドワークを継続する企業が少なくありません。しかし、リモートワーク環境下では従業員のわずかな変化を察知できないことが多く、メンタルヘルスケアをどのように進めるかが喫緊の課題となっている企業も多いのではないでしょうか。
そんな中、株式会社電通デジタルでは、リモートワーク中の従業員の表情をAIにより分析する「INNER FACE™」(インナーフェイス)の開発に産学共同で取り組んでいます。このソリューションは、人々の働き方にどのような影響をもたらすのでしょうか。
そこで今回は、プロジェクトに携わる電通デジタルの水町洋介氏、畑雄樹氏、髙坂秋乃氏に「INNER FACE™」の画期性について聞きました。インタビュー前編ではソリューションの概要、開発の経緯についてお届けします。
表情を毎秒計測し、感情の推移をグラフ化
Q.始めに、今回のプロジェクトにおける皆さんの役割、普段担当している業務について教えてください。
Q.ありがとうございます。では早速、「INNER FACE™」の企画を立ち上げた経緯についてお聞かせください。
リモートワークが浸透した約2年前、私は1日中誰とも話さない日が続き、自分のメンタルヘルスに不安を感じたことがありました。元々心理学にも興味があったため、特殊な状況下に置かれた人間のメンタルヘルス状態を知りたくて、この企画を思いつきました。

Q.企画の発端は水町さんの実体験と心理学への関心、というわけですね。「INNER FACE™」はどのようなソリューションなのでしょうか。何ができるのか、具体的に教えてください。

Q.まずは水町さんの企画のアイデアがあって制作につながっていったとのことですが、プロジェクトメンバーとして加わるにあたり、髙坂さんは企画の概要を聞いてどう思いましたか?

表情とメンタルヘルスの相関性を明かす、産学共同プロジェクト
Q.現在、福島学院大学・早稲田大学の心理学・人間科学の専門家とともに、リモートワーカーの表情とメンタルヘルスの相関性について研究を進めているそうですね。産学協同の取り組みに至った経緯を教えてください。
Q.開発において、技術面で苦労されたことはありますか?
また、普段はUIデザインに関する仕事をしているので、「INNER FACE™」でもその知見を生かせたと思っています。負荷がかかる環境においても、通信データ量との折り合いをつけつつ、グラフなどで分かりやすいUIを目指しました。

Q.現在、開発はどのような段階にあるのでしょうか。
また、表情分析と併せて、主観アンケートも約2時間おきに取り、表情の分析結果と主観が一致しているのか検証しています。他にも、2週間おきにメンタル状況に関するテストを行い、メンタルと表情と主観の相関関係について、データを取りまとめているところです。
新型コロナウイルス感染症の拡大以降、メンタルに不調を来す人は増加傾向にあると言われています(※1)。また、リモートワーカーのメンタルヘルスケアは未だ整備されておらず、課題を感じている企業は7割を超えるという調査結果も出ています(※2)。リモートワーカーのメンタルの状態を察知し、深刻な状況になる前にケアできるとしたら、企業と従業員双方にとってプラスの効果が生まれ、より柔軟な働き方が可能になるのではないでしょうか。
後編では、「INNER FACE™」発表後の反響、メンタル不調の予測だけではないポジティブな活用法について、話を深めていきます。
DXが進む中、従業員の働き方について悩みを抱える企業も少なくありません。新しい働き方に関するご相談、「INNER FACE™」へのお問い合わせは「CONTACT」からお願いします。
※1 参照:Tackling the mental health impact of the COVID-19 crisis: An integrated, whole-of-society response(OECD)
※2 参照:テレワークの方が従業員のメンタルケアが難しいが7割超。テレワーク推進でストレスが増えたと実感(月刊総務)