新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で、これまでの“当たり前”が当たり前ではなくなった今、あらためて「健康であること」の価値に気づいた方も多いのではないでしょうか。そのような中、「新型コロナウイルスは熱に弱いのでお湯を飲むと良い」、「納豆を食べると予防できる」など、COVID-19に関する間違った情報や誤解を招く情報が多く氾濫していた時期もあり、膨大な情報の中から正しい情報を見極める力が求められる時代へと変わりつつあります。
そこで今回は、最新の健康情報に基づく健康知識や資格を取得できる国内唯一の検定制度である「日本健康マスター検定」を運営する、一般社団法人日本健康生活推進協会に、「Withコロナ時代における健康リテラシー」についてお話を伺いました。
Withコロナ時代において、膨大な健康情報の中から適切な情報を選び出すポイントを教えてください
COVID-19の流行を機に、健康への意識が高まってきていると感じています。現在も、COVID-19に関する最新情報は刻々と変化しており、メディアからはさまざまな情報が発信され続けています。そうした情報の全てを個人レベルで収集し、理解するのは非常に難しいことだと思います。やはり、“情報にふるいをかけた”上で適切な情報を収集・理解していくしかないと考えています。そこで大切なのは、「ふるいをかける側、つまり1人ひとりが健康に関する基礎知識を身に付け、健康リテラシーを向上させる」ことです。そうすることで、価値ある情報とそうでない情報を判別する精度を高めることができるのです。
「健康リテラシー」とはどのようなものでしょうか?

健康リテラシーとは、「健康に関する知識を得て、理解し、それを活用する能力」のことです。健康リテラシーを高めるためには、多くの健康情報をふるい分けし、「健康に関する“正しい”知識を得る」ことが重要です。次に、正しい知識を得た後は、それを自分ごと化して「理解する」ことが必要です。そして最後に、「活用する、行動する」ことが最も大切だと考えています。例えば、過度の飲酒や喫煙は体に良くないことは誰でも知っていますが、実際に「やめる」という行動に移さない限り、最終的な健康づくりにはつながりません。さらに、人間の欲望はおおよそ体に悪い方になびくようになっているので、「やめる」行動を続けるのも難しいものです。しかし、「前より健康的になったね」などと「誰かに褒めてもらえる」と、人間はその行動を継続しようと思えるようになります。そのため、「誰かに評価される環境づくり」も大切だと考えています。
その一方で、運動を続け、体に良い食事を心掛けていても、家にこもりきりの生活では認知症につながるリスクがあると報告されています。やはり、人間は社会との関わりの中で健康を維持していくことが重要です。加えて、体に良い食品でも入手困難であると継続することは難しいため、市場や社会からのサポートも必要だと思います。そうした外部環境まで整えていくことができれば、多くの人が健康リテラシーを向上し続けることができると考えています。
COVID-19における健康リテラシーの役割とはどのようなものでしょうか?
感染症には、多くの人が死に至ってしまうラッサ熱のように、日頃からどれほど健康づくりを心掛けていても、ひとたび感染してしまえば対処できなくなってしまうものもあれば、COVID-19のように、感染しても発症しない人もいれば、重症化する人もいるというものもあります。COVID-19が重症化する一因としては、糖尿病や高血圧、がんなどの基礎疾患の関与が挙げられていますが、生活習慣病や未病など、長い人生において健康を高めていくための知識と理解を得て、それを活用し健康行動を起こしていく健康リテラシーは、こうした基礎疾患と縁が深いのです。さらに、感染症対策は社会防衛機能を有し、ひいては個人を守るという役割を持っていますが、普段から自分の健康をケアし、免疫力を高める行動のベースとなる健康リテラシーも同じように個人を守る役割を担っていると言えます。そうした側面からも、健康リテラシーを高めることは、COVID-19における感染症対策に直結した活動だと考えています。
健康リテラシー向上のために、日本健康生活推進協会が取り組んでいることを教えてください
日本健康生活推進協会は、多くの健康情報の中から正しい情報を取捨選択していくために、まずは学問的に適切であり、かつ多くの人が理解していくための“よりどころ”を作ろうと考えました。そこで、最新の医療・健康情報に基づいた健康リテラシーの基盤を構築すべく、公益社団法人日本医師会の監修の下、しっかりと吟味した公式テキストを作成しています。
また、健康知識を学び一定レベルの健康リテラシーを習得された方を、「健康マスター」に認定し、地域・職域・学域の健康リーダー、インフルエンサーとして育てることも目的の1つとしています。
健康リテラシーの向上を目指して学習すると、どのような変化が期待できるのでしょうか?
近年、ビフィズス菌摂取と免疫機能向上、口腔衛生と糖尿病など、日常生活におけるヘルスケア行為とさまざまな病気との関係性が明らかにされています。こうした新たな情報を学び、健康リテラシーを高めるメリットは非常に大きいと思います。
また、健康リテラシーは、将来の日本の保険医療に貢献できる可能性も十分にあると考えています。日本は国民皆保険制度であるため、少し具合が悪いと感じただけで病院に駆け込む人も多く、“医療依存”とも言える状況ですが、そのために他国に比べると「自らの健康は、自らの知恵と行動で守っていかなければならない」という意識が低い傾向にあります。しかし、現在の医療財政を考えると、世界に冠たる日本の保険医療も将来的にはカバーされる範囲が狭まることが想定され、健康リテラシーを高めておかなければ安心して暮らせない時代がやってくるかもしれません。その時に備え、健康リテラシーについて学び、リスク意識を高めておくことも一案ではないかと考えています。人生100年時代、より良い生活をデザインしていくためにも、健康リテラシーが役に立つものであるという理解が広がればいいと思っています。
最後に、Withコロナの時代を経験した今、これからの健康を考えるためのメッセージをお願いします。
COVID-19の流行は生活者にとって多くの脅威をもたらしましたが、1年後には多くの人がこの状況に半ば慣れてしまったようにも感じます。やはり、恐怖では人間を拘束することはできないということの表れではないでしょうか。そんな中、COVID-19を防御するための行動を持続していくことは本当に難しいと思います。こうした状況だからこそ、健康情報に対する正しい知識を得て、理解し、行動する、すなわち健康リテラシーを高めていくことが、感染防御にもつながるのではないかと思っています。
また、健康リテラシーを高めるというこの仕組みは、今の日本にはない社会インフラの1つです。日本健康生活推進協会では、健康に関する社会インフラを作り、日本に広げていきたいという思いで検定事業を行っています。COVID-19流行後は、少しでもCOVID-19に立ち向かうための基礎知識を発信したいと考え、検定試験ごとに最新情報を更新したデータブックとして新型コロナウイルス副読本を発行するなどの活動も行っています。これから先、未知の世界を生き抜くために、日本健康生活推進協会が発信する情報が新しく、正しい健康知識を持つための一助となることを期待しています。
COVID-19の流行で、健康情報に対するニーズが高まり、多くの情報の中から適切な健康情報を取捨選択する必要性が増しています。そこで、私たち1人ひとりが正しい健康情報を知り、理解し、行動する、すなわち「健康リテラシーを向上させる」ことが、健康を目指す上で役に立つことが分かりました。中でも、「知っていても行動しなければ、何も変わらない。人間の欲望は、おおよそ体に悪い方になびくようになっている」というお話は、思い当たることも多く、実に耳の痛い話でした。
多くの人の健康リテラシーの向上のために、日本健康生活推進協会では、定期的に検定試験を実施しています。日本医師会監修公式テキストに基づいた最新の健康リテラシーが学習できる国内唯一の検定試験です。皆さん、ぜひチャレンジしてみてください。
※2021年9月1日電通メディカルコーポレートサイトにて公開された記事を一部加筆・修正し、掲載しております。