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2024/02/08

地方創生はSDGsから。高知での取り組み「Kochi SDGs Action」の現在地とこれから(前編)

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SDGsに対する企業への社会的要請が高まる中、地域社会においても「SDGsとどう向き合うか」が大きなテーマになっています。それぞれの地域においても、地元企業がSDGsを推進し、社会課題に取り組むことで、地域社会の持続的発展に貢献していく。もちろんその企業自体の価値向上や事業拡大にもつながっていく。そんな流れを生み出したいという動きが起こり始めています。

こうした中、株式会社 四国銀行株式会社高知放送株式会社電通西日本の3社は、高知県内のSDGs取り組み活性化プロジェクト「Kochi SDGs Action」を立ち上げました。参加する地元企業・団体と共に、みんなでSDGsにまつわる取り組みを推進・拡大していく。その様子をテレビCMやWebサイトを通じて情報を発信し、企業間連携や地域社会との関係構築、県内全体のさらなるSDGs意識向上や持続可能な地域としての魅力向上に貢献していきます。

本記事では、四国銀行 コンサルティング部の岡野一平氏、電通西日本 プロジェクト推進部の頼本高成氏、電通西日本でクリエイティブを担う北匡史氏の鼎談を実施。プロジェクト発足の背景、第3期募集を迎えた現状、目指す未来について、前後編の2回に分けてお届けします。

地元企業のSDGsを支援し、企業価値を向上

頼本:四国銀行さま、高知放送さま、電通西日本の協業による「Kochi SDGs Action」は、高知県発の地域活性化プロジェクトです。県内の企業を対象に参加を募り、SDGsへの取り組み向上や対外PR支援、企業と地元学生や県民をつなぐイベントなどを実施しています。

そもそもこのプロジェクトは、高知放送さまからのお声掛けでスタートしました。私たち電通西日本と広島銀行さま、広島ホームテレビさまが始めたSDGsプロジェクト「変わるけん。」をご覧になり、「高知でもぜひこういう取り組みを始めたい」とご相談いただいたのがきっかけです。広島もそうでしたが、こうしたプロジェクトには地域に根差した銀行のお力添えが何より重要だと考えています。そこで、四国銀行さまに協業のご提案に伺ったところ、その日のうちにご快諾いただきました。レスポンスの速さに驚きましたが、もともとSDGsに対する課題意識をお持ちの地元企業さまが多かったのでしょうか。
株式会社 電通西日本 頼本 高成氏
岡野:四国銀行コンサルティング部では、法人、個人を問わずお客さまの課題解決支援を大きなミッションとしています。中でも、私が籍を置く法人企画チームは、法人のお客さまの課題解決をサポートする部署です。最近はSDGsやカーボンニュートラル、サステナビリティに関する取組支援や、人材戦略についてのコンサルティングなどを行っており、課題意識の高さを感じていました。

地方銀行は、私たち自身がSDGsに取り組むのはもちろん、地元企業のSDGs推進支援も担うべき立場です。そのため、今回のプロジェクトは当行にとっても大変魅力的に映りました。というのも、既にSDGsに取り組んでいる企業は多いものの、当行にはこうしたさまざまな企業の取り組みを発信する手段や力が不足していたためです。電通西日本さんの力を借りることで、より広く情報発信できると考え、すぐに協業を決断しました。
頼本:北さんは、クリエイティブディレクションやコピーライティングを担当しています。このプロジェクトのメインコピー「未来を、せんたくせよ。」には、どのような思いを込めたのでしょう。
北:私は、普段は愛媛県松山市に住んで仕事をしていますが、高知は四国の中でも特徴的な県民性があると感じていました。そこで、コンセプトを示すフレーズを考えるに当たり、あらためて高知出身の方々にヒアリングも重ねながら、そのユニークネスを、私なりに3つのポイントに集約しました。

第一に、真っすぐに歴史を変えてきたということ。坂本龍馬や岩崎弥太郎を筆頭に、歴史だけでなくビジネスにおいても真っすぐ未来を切り開いてきました。第二に、信念を強く持つ方が多い地域だということ。そして第三は、さまざまな課題を明るく楽しく前向きに捉えていること。そこで「強く、太く、明るく」をテーマにフレーズを考え、3案をご提案しました。その中から、皆さんの合意のもとで「明るい未来へ洗濯する」「より多様な未来を選択する」という意味を込めた「未来を、せんたくせよ。」に決まりました。
岡野:県民性をそのように捉えていただけたのはうれしいですね。「せんたくせよ」は、坂本龍馬の名言「日本を今一度せんたくいたし申候」に由来するので、県民の皆さまの親近感、プロジェクトへの関心が生まれやすかったのではないかと思います。
株式会社 四国銀行 岡野 一平氏

SDGs活動のPR動画で、就職希望者が増加

頼本:2022年2月にこのプロジェクトが始まり、第1期に7社、第2期に3社と、これまで10社の企業さまに参加していただきました。参加企業の皆さんは熱量が高く、「地元を何とかしたい」という思いに溢れています。現時点では、建設業の企業さまが複数参加されていますが、高知県の中でも最先端の技術を取り入れようと考える企業さまや、環境に配慮した建築資材や機材を使おうと意識している企業さまが目立ちました。全国的な人手不足の中で、人材採用で苦労されている企業さまも多かったのですが、SDGsに取り組み、その情報を発信することで新卒採用や中途採用の希望者が増えた、というお声もいただいています。
岡野:参加企業さまのYouTubeチャンネルの再生回数が伸び、それが結果としてリクルートにつながったのではないかというお声もありました。
頼本:高知放送さまというメディアの力も、あらためて感じましたね。参加企業さまのSDGsへの取り組みをPR動画にし、高知放送さまで放映したのですが、それが採用につながったという話も聞きます。
北:1つの企業が単体・単発でCMを実施するのではなく、プロジェクトの大きな枠組みの中で参加企業各社の取り組みを紹介することで、“未来に向けて動き出した高知”という空気感が醸成されているように感じていただけるのではないでしょうか。これこそがまさにプロジェクトのパワーだと思います。
株式会社 電通西日本 北 匡史氏
岡野:四国銀行としては、参加企業さまのCM動画を制作する中で「この企業さまはこんな活動をされていたのか」という新たな気付きもありました。銀行が企業に向き合う際は、決算内容などの数字はしっかり追いながらも、意外とどんな取り組みをしているか、までしっかり把握できていない面があることも否定できません。ですが、このプロジェクトを通じて、参加企業さまの働き方改革や支援活動など、数字だけでは分からない活動について知ることができ、あらためて各企業の社会的意義を認識しました。

また、これまでそういった企業さまの取り組みに対し具体的な働きかけは行えておりませんでしたので、今回のプロジェクトを通じて「発信のお手伝い」といった今までと違った支援が可能であると気付くことができ、銀行として一つ新たな強みをいただいたように感じました。今回企業のみなさまに「銀行も情報発信をはじめとした多様な手法で課題解決をお手伝いできる」と知っていただけたことも大きなメリットだと思っています。今後も四国銀行として様々なかたちでの支援を提供し、企業さまにとっての身近な相談相手になれる存在でありたいと考えております。

 


 

「Kochi SDGs Action」に参加することは、SDGs促進にとどまらず企業のイメージアップにもつながります。さらに、各社が抱える課題の棚卸しにもつながっていることが分かりました。そこに地域密着型の銀行が寄り添うことで、課題解決に向けた新たなヒントが見つかるかもしれません。後編では、人口流出や労働力不足など、県内企業が抱える課題に対し、同プロジェクトがどのような役割を果たしているのか、詳しくお伝えします。

電通グループでは、高知県にとどまらず、さまざまな地域の課題を解決するソリューションを提供しています。ご興味のある方は、CONTACTよりお気軽にお問い合わせください。

この記事の企業サイトを見る
株式会社 電通西日本

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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