循環型社会の実現に向けて、回収活動の必要性が高まる昨今、また、電通グループの経営方針である、「B-to-B」のさらにその先にあるS(ソサエティ)と向き合うシンボリックなアクションの1つとして、株式会社 電通と株式会社電通プロモーションプラスは、2023年11月30日(木)より空容器などの「回収・リサイクル」に、クーポン・ポイントなどの「販促」を組み合わせた循環プラットフォーム「で、おわらせないPLATFORM」の実証実験を開始しました。実証実験には、株式会社ローソン、株式会社 明治、株式会社ナカダイホールディングスが参加しています。2024年1月30日(火)まで約2カ月かけて行われる実証実験のポイントとともに、このプロジェクトがどのような社会課題の解決を目指すのか、紹介します。
企業と生活者の「協働」でサーキュラーエコノミーを実現
サステナブルな社会の実現に向けて、社会全体で、不要なもののリサイクル・回収活動を進めていくことは急務。しかし、環境への配慮が必要なことは理解していても、生活者にとっては手間が掛かり、企業にとってもコストが増えることや、利益につながらないといった問題があり、実際に行動していくのは、なかなか難しくもあります。
一方、海外では、企業と生活者の「協働」を促進する仕組みによって、高い回収率を達成している事例が見受けられます。例えば、ドイツでは、消費者が瓶や缶などの飲料容器を販売店に返却することで、デポジット(預かり金)が返金される仕組みがあります。人々の善意に頼るだけではなく、生活者にも利益がもたらされることによって、企業と生活者の「協働」を促進する仕組みで、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を実現しているのです。
そうした事例も参考にしながら、電通グループのマーケティング力とデジタル領域の強みを生かして、社会と生活者の意識行動変容を促す仕組みや仕掛けをサーキュラーエコノミーとつなぎ、空容器などの「回収・リサイクル」に、クーポン・ポイントなどの「販促」を組み合わせた循環プラットフォーム「で、おわらせないPLATFORM」を構想。これは、生活者と、メーカーや販売店、リサイクル企業が「協働」することで、空容器などの回収・リサイクルを促進する仕組みです。

「で、おわらせない」という名称は、1回で終わってしまうキャンペーンやイベントではなく、社会貢献インフラとして継続的に必要とされるプラットフォームにしたい、という思いが込められています。そのために、事業性と社会貢献性を両立することができるのか、安定的に成果を上げることができるのか、実証実験によって検証します。
流通・メーカー・リサイクラーの動静脈産業タッグで回収を促進
今回の実証実験には、流通・メーカー・リサイクラーの各1社が参加します。流通は、身近な流通インフラとして生活者との接点となるコンビニエンスストアのローソンが参画。メーカーは、酪農家との連携や、牛乳パックの回収を通じ、ミルクサプライチェーン全体でサステナブルな活動を強化する明治。リサイクラーは、国内の資源循環のシステム、ネットワークを構築するナカダイホールディングスが参加しています。
実証実験は、「明治おいしい牛乳」をはじめとする紙パック商品(※1)のリサイクルが起点となります。まず、生活者は、使用済みの紙パック商品や付属するプラスチック製キャップを、実証実験に参加する都内3店舗のローソン店内に設置された資源回収ボックスに投函します。その際、特設サイトから、スマートフォンで商品のJANコードを読み取ってリサイクルしたい商品を登録し、投函完了のボタンを押すと、ローソンで使用できる割引クーポンがもらえるという仕組みです(※2)。回収された紙パックは、ナカダイホールディングスによって、リサイクルされます。

使用済み紙パックの回収率は3割と低迷
今回の実証実験で回収対象となる紙パックは、実は回収率があまり高くない資源ごみです。全国牛乳容器環境協議会の調査によると、紙パックの回収率は、ここ10年ほど改善が認められず、特に使用済みの紙パックの回収率は約30%にとどまっています(※3)。ちなみに、ペットボトルの回収率は、90%超(※4)。あまり知られていない数字ですが、紙パックの回収が進まないことは、貴重な資源の損失につながる大きな社会課題の1つです。
紙パックの回収率が上がらない主な原因としては、ペットボトルなどと比べて消費者の分別意識や回収に対する関心が低いことや、自治体の分別対象となっていない地域が多いことが考えられます。紙パックは収集対象外という自治体も多く、回収の場はスーパーなどの回収ボックスに限られ、消費者にとってインフラが整っていないことも、大きく響いています。
今回の実証実験では、回収物に応じたインセンティブ(クーポン)の付与や、生活に身近なコンビニエンスストアへの回収ボックス設置などによって、それらの課題の解決を図っていきます。同時に、メーカーやコンビニエンスストアなどにとっては再来店の機会創出、商品の販促・マーケティングにつながるため、積極的にリサイクル・回収に参画する動機が生まれるでしょう。
実証実験は、2024年1月30日(火)まで行われ、生活者の意識や行動がどのように変わったか、紙パックの回収量、割引クーポン施策による販促効果などを検証します。
また、実証実験と並行して、引き続き参加企業を募集中。より多くのステークホルダーとともに、サーキュラーエコノミーの社会実装を進めていきます。
「で、おわらせないPLATFORM」実証実験の実施概要
■実施店舗
・ローソン 北大塚一丁目店(東京都豊島区北大塚)
・ローソン ゲートシティ大崎アトリウム店(東京都品川区大崎)
・ローソン 四谷左門町店(東京都新宿区左門町)
■期間
サービス稼働期間:11月30日(木)~1月30日(火)
クーポン引換期間:12月1日(金)~1月31日(水)
■回収対象の商品
・明治おいしい牛乳900ml、450ml、200mlの紙パック
・ローソン店舗で取扱の紙パックマーク商品
・上記に付帯するプラスチック製キャップ
■参加ページ
https://lsp-campaign.com/de-owarasenai/lp.go
資源回収に参加することで、お得に買い物ができる「で、おわらせないPLATFORM」。消費者・企業にとってメリットがある仕組みをつくり、社会貢献活動に参加しやすい構造を生み出します。その成果や、本プロジェクトの今後の展開についても、引き続き「Transformation SHOWCASE」でお伝えしていきます。
電通グループでは、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、さまざまな企業と協働プロジェクトを進めています。社会貢献と自社のビジネスを両立したいと考えている企業の方は、ぜひCONTACTからお問い合わせください。
※1 ローソンで販売されている紙パックマークが付いている商品(アルミ使用のものや紙製容器包装はNG)
※2 クーポン取得には、明治LINE公式アカウントの友だち追加が必須
※3 出典:全国牛乳容器環境協議会「飲料用紙容器(紙パック)リサイクルの現状と動向に関する基本調査 2021年度リサイクルの実態」
※4 出典:PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルの回収率(従来指標)の推移」