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2024/05/30

ポストCookie時代のデジタル広告。未来を見据えて、今すべきアプローチ(前編)

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近年中の廃止が決定しているGoogle社のブラウザ「Google Chrome」における、「サードパーティクッキー(3rd Party Cookie)」。Webサイトをまたいでユーザーの閲覧履歴などを共有できるサードパーティクッキーですが、個人情報保護の観点から規制や廃止の動きが強まっています。

日本のインターネットユーザーは半分以上の時間をオープンインターネットに費やしているとも言われていることから、今回の廃止が一部Cookie依存のデジタル広告などに影響する懸念もあり、Cookieに依存しない広告の在り方が模索されています。そこで今回、株式会社 電通 データ・テクノロジーセンターの渡邊涼太氏が、デジタル広告を扱う電通の連携パートナー4社に、これらの対応策やソリューションなどを前後編でお伺いします。

前編はOCEAN’S株式会社の菅原洋介氏、GumGum Japan株式会社(以下、GumGum)の土居博通氏をゲストに、日頃よりさまざまなマーケティング課題に向き合う株式会社電通デジタルの青木亮氏も交えて、最新の動向に迫ります。

2025年以降、Google Chromeでサードパーティクッキーが段階的廃止に

渡邊:サードパーティクッキーに関する動きとしては、Apple社は2020年までに自社ブラウザ「Safari」の初期設定で全面廃止、モジラ財団の「Firefox」でも同様の制限がされています。日本国内のブラウザ市場で6割超のシェアを誇るGoogle社の「Google Chrome」についても2025年初頭からの段階的な廃止を計画しています。サードパーティクッキーを基盤とした従来のターゲティング広告は難しくなりますが、クライアント企業さまのデジタルマーケティングに関わることの多い青木さんとしては、これらがWeb広告配信に及ぼす影響をどのように捉えていますか?
青木:電通デジタルは、サードパーティクッキー廃止についての課題が生じる以前から、各プラットフォーマーと共同で、Cookieに頼らないファーストパーティデータ(※1)と連携したターゲティングソリューションの開発等を他社に先駆けて推進しています。サードパーティクッキーの代替策はある程度構築されつつあるのですが、いざこうした大変革を目の前にすると、本日お話させていただくOCEAN’Sさま、GumGumさまをはじめとした各パートナー企業さまと共に、やはり来るべき時に備えて連携した取り組みが必須だと考えています。
株式会社電通デジタル 青木 亮氏

ユーザーに親和性の高い広告が配信できるGumGumのPDCAサイクル

渡邊:青木さんから「代替策」というワードが出ましたが、各企業がさまざまな手法を探っているところだと思います。OCEAN’Sさま、GumGumさまが手掛けるソリューションも有効な代替策になると思いますが、サードパーティクッキー廃止の流れに対して、それぞれどのようにアプローチしていくのか教えていただけますか。
土居: GumGumが提供しているサービスは、サードパーティクッキーに頼らない、媒体のコンテンツに合った広告を配信する、いわゆる「コンテキスト広告(コンテクスチュアルターゲティング)」に当たります。コンテキスト広告自体はそれほど新しいサービスではありませんが、私たちは特にコンテンツの文脈を解析するテクノロジーにおいて強みを持っています。テキスト情報だけではなく、画像、音声、動画といったコンテンツを独自AIで包括的に分析して、ユーザーが閲覧している記事の本当の意味は何なのかをしっかり理解した上で、広告を配信しています。

この時、非常に重要になってくるのが、日本語の特殊性に対応しているという点。GumGumは元々アメリカ発のテクノロジー企業ですが、英語のエンジンとは別に、日本語を正確に理解するエンジンを持っているのが大きな特徴です。

最近はここに、「アテンション(ユーザーが広告を実際に見た時間)」の計測を取り入れました。これらの技術を組み合わせて、PDCAを回しながら、ユーザーのマインドに焦点を当てたプロダクトを提供しています。
GumGum Japan株式会社 土居 博通氏
青木:GumGumさまと電通デジタルは2017年頃から、ユーザーに親和性の高い広告を提供するためのアプローチを一緒に模索してきました。特に、「アテンション」が計測できるというのは、非常に注目している機能です。広告を見ている時間というのは、従来の「インプレッション(広告が表示される回数)」だけでは測れない、ユーザーが態度変容を起こすのに重要な指標です。企業のブランディングにも寄与する本質的なソリューションだと感じていますね。

GA/AA連携でユーザーの行動をより深く分析する「Native Ocean」

渡邊:一方、OCEAN’Sさまは、どのようなサービスを提供しているのでしょうか。
菅原:OCEAN’Sの提供する「Native Ocean」はネイティブ広告のDSP(※2)で、GumGumさんも含め、全世界で50以上のアドネットワークと接続しています。サードパーティクッキーに頼らない独自の入札方法で、一度に複数の媒体に広告を配信できる、利便性の高さが強みです。Webサイトの「おすすめ記事欄」などに配信される「レコメンドウィジェット」と呼ばれる配信枠がネイティブ広告の代表的な配信枠で、バナー広告のような通常のディスプレイ広告ではアプローチできないユーザー層にリーチできます。

また、大きな強みは、Googleアナリティクス(GA)/Adobeアナリティクス(AA)とのAPI(※3)連携です。API連携によって、例えば「Native Ocean」で配信した広告経由で自社サイトへ流入したユーザーの滞在時間や直帰率などが解析できるようになります。サイトの滞在時間が長いユーザー、すなわち自社のブランドや商品に関心が高いユーザーがどのWebサイトから来ているのか分析できます。今まではDSPの中でアルゴリズムを使いながら単純にクリック単価を安く出したり、顧客獲得単価を安くしたりすることを目指していましたが、このソリューションによって、ユーザー行動のより深いところまで分析を行い、KPIに対しての最適化ができるようになっています。
OCEAN’S株式会社 菅原 洋介氏
青木:GA/AAとの連携は、魅力的ですよね。従来のWeb広告は、どうしても広告単体でどれだけ効果があったかの議論に終始しがちでしたが、広告を離れたWebサイト全体の中でのユーザーの動きが見極められるようになり、それを広告運用に活用できます。これも、広告における一種の本質的なアプローチと言えるでしょう。

各社の強みを生かし、クライアントの本質的な課題に寄り添うソリューションを

渡邊:今後、OCEAN’SさまとGumGumさまがテクノロジー連携するシナリオも考えられるのでしょうか?
株式会社 電通 渡邊 涼太氏
菅原:例えば、GumGumさんの強みであるコンテキスト広告において、「Native Ocean」のGA/AA連携を活用すれば、サイトの滞在時間が長いユーザーはコンテンツのどの文脈を見て流入したのかということまで分かります。それを電通デジタルさんが分析し、より精度の高い広告をGumGumさんから配信するといった取り組みもできそうです。2社それぞれの特徴がありますから、電通デジタルさんともタッグを組んで、私たちにしかできないソリューションをクライアント企業さまに提案していけたらうれしいです。
青木:そうですね。サードパーティクッキー廃止というのは、業界において大きなターニングポイントになりますが、クライアント企業さまの課題に本質的に寄り添えるソリューションが生まれるきっかけになるかもしれません。
土居:デジタル広告が進化するにつれて、企業側はデータばかりに目が向いて、ユーザーがおざなりになっていた部分もあると思います。サードパーティクッキー廃止は、本当にユーザーにとって良い広告体験とは何なのかと考える機会になりました。GumGumの特徴を生かしながら、皆さんとより良いデジタル広告業界をつくっていけたらと思います。

 


 

「Google Chrome」でのサードパーティクッキー廃止が目前に迫る中、電通グループはパートナー企業と協力しながら、これからのデジタルマーケティングに欠かせないソリューションを提供していきます。

Cookieフリー時代の対応策を模索している方や、より質の高いデジタル広告を配信したいと考えている方は、ぜひ一度CONTACTからお問い合わせください。

※1 企業が自社のサイトやアプリ上で独自に収集したユーザーデータ
※2 Demand Side Platformの略。広告主が広告効果を最大化するためのツール
※3 Application Programming Interfaceの略。異なるシステムやアプリケーション間でデータを連携し、利用できる機能を拡張する仕組み

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株式会社電通デジタル 株式会社 電通

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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