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2024/05/31

ポストCookie時代のデジタル広告。未来を見据えて、今すべきアプローチ(後編)

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日本国内・世界ともにブラウザの最大シェアを誇るGoogle社の「Google Chrome」で、2025年初頭より段階的なサードパーティクッキー(3rd Party Cookie)の廃止が計画されています。まもなくやって来る「Cookieフリー」時代に、どのような技術やソリューションが考えられるのでしょう。株式会社 電通 データ・テクノロジーセンターの渡邊涼太氏が、デジタル広告を扱う連携パートナーにお話を伺います。

前編に引き続き、株式会社電通デジタルの青木亮氏にも登場いただき、後編はRokt合同会社の松田誠氏、Ogury Japan株式会社(以下、Ogury)の山口武氏をゲストに迎え、今すべきアプローチを語り合いました。

急拡大するリテールメディア。ECサイトでの購入直後に広告配信できるRokt

渡邊:Webサイトをまたいでユーザーの閲覧履歴などを共有できるサードパーティクッキーが廃止されると、「ポストCookie」時代の基本トレンドは大きく次の3つに分かれてくると考えられています。

① プラットフォーマーによる新たな経済圏の模索
② Cookieの代替技術の模索
③ パブリッシャー主導の「ゼロパーティ」指向

このうち、Roktさまは1つ目の「プラットフォーマーによる新たな経済圏の模索」に該当するのではないでしょうか。
松田:そうですね。Roktは、ECサイトにおける「購入の瞬間」に着目し、ここにオファーの提示枠を設けることで、広告主の新たな顧客獲得を実現するソリューションを提供しています。いわゆるリテールメディアの1つと言うこともできますね。リテールメディアの市場規模は急拡大していて、2023年は前年比122%の見込み、2027年には2023年の約2.6倍に拡大するだろうと言われています(※)。

サードパーティクッキーが使えなくなると、どうやってユーザーが欲しいと思っているメッセージをキャッチするのかという課題が出てきます。そこで、今注目されているのが、小売りを中心にさまざまな業種が運営するECサイトです。ECサイトで顧客が購入を完了する瞬間というのは、購入する商品やユーザーデモグラフィック、決済情報など、さまざまな顧客データを自社で取得できる瞬間でもあります。

「商品を買う」時というのは、買い物に対してのワクワク感がピークに達している上、その人の特徴が非常によく表れる瞬間でもあります。例えば、単に「サッカーに興味がある人」と「サッカーにお金を払う人」は似ているようで大きく違う。「お金を払う」という行動まで移している人にリーチできるので、広告パフォーマンスも高いのです。実際に日本の広告主さまの平均として、5%という高いクリック率が出ています。またクリック率が10%以上というキャンペーンも数多くございます。サードパーティクッキーに頼らずとも、ユーザーにとって最適な広告を出せるというのが、1つの特徴ですね。
Rokt合同会社 松田 誠氏

独自の統計データから、最適な広告を。Oguryの「ペルソナ・ターゲティング」

渡邊:一方で、Oguryさまは2つ目の「Cookieの代替技術の模索」に該当すると思いますが、サービスの特徴を教えていただけますか?
山口:Oguryが打ち出しているのは、人をIDではなく面で捉える「ペルソナ・ターゲティング」というアプローチです。消費者の趣味嗜好、性別・年齢・居住地などの人口統計学的な属性、消費行動などをゼロパーティデータとして収集します。それを元に、消費者をペルソナ化し、広告配信にひも付けているのです。

自動車の購入を検討している消費者を例に挙げると、ハイブリッド、SUV、高級車、もしくは中古車などどういった自動車の購入を検討しているかで性別・年齢の分布や趣味嗜好・関心も大きく異なります。そういった関心分野の違いに伴い、「自動車系」のコンテンツ以外で視聴しているものも変わってくるため、Oguryは独自の膨大なデータと照らし合わせ、それぞれのペルソナに対して最も適している面に広告を配信します。つまり、「ペルソナ・ターゲティング」は、CookieもIDも使わず、媒体面の情報と、擬人化されたペルソナを掛け合わせることによってユーザーと親和性の高い広告配信を可能にするのです。
Ogury Japan株式会社 山口 武氏

各社のソリューションを組み合わせ、フルファネルで課題を解決

渡邊:青木さんは、「Dentsu Digital Global Center(以下、DDGC)」で国内外のグローバル企業さまと向き合っていますが、RoktさまとOguryさまの特徴や強みはどんなところだとお考えですか?
青木:両社ともサードパーティクッキー廃止が問題になる前から、Cookieには頼っておらず、むしろ昨今の流れが追い風になっているとさえ感じます。今後Googleがサードパーティクッキーを全廃したとしても、両社には何の影響もなく、それどころか需要がより増していくのではないでしょうか。

フルファネル(顧客が商品やサービスを知り、購入・リピート・継続利用に至るまでの購買プロセス全体)を考えた時に、Roktさまは購買・購買直前の「ボトムファネル」、Oguryさまは認知や興味喚起に寄与する「アッパー~ミドルファネル」で特に強みを発揮すると思います。電通デジタルはそれぞれの強みを得意なファネルにおいて最大限に活用し、組み合わせて、真の意味でクライアント企業さまの課題を解決していきたいと思っています。
株式会社電通デジタル 青木 亮氏
渡邊:Oguryさまは、2022年に日本法人を立ち上げてから、すさまじい成長を遂げています。DDGCと共に、「Ogury Brand Index」というソリューションも提供しているそうですね。
山口:はい。そもそもOguryは、自らを「広告配信会社」ではなく「データテクノロジーカンパニー」と名乗っています。会社の成り立ちも、最初から広告配信を目的としていたわけではなく、大量のデータを集め、オンライン上でユーザーがどう行動しているかを科学してきた結果、ブランドが求める消費者がどこにいるのか予測できるようになったので、広告配信を始めたという経緯があるのです。

「Ogury Brand Index」は、そうしたデータ収集という強みを生かしたサーベイソリューションです。「ブランドリフト」という消費者の認知・評価・購買意向といった従来からあった指標に加えて、競合と比較した時に消費者にどう見られているのかを可視化できるのが特徴となります。
青木:ブランドリフト調査自体は昔からあって、特定のキャンペーンの成果などを測るものでしたが、「Ogury Brand Index」は競合との比較を可視化して、自社で意識できていなかった強み・弱みを知ることができる点が大きく異なります。これによって広告のメッセージを練り直したり、Webサイトのコンテンツ作りから検討したりできる。とても多くのヒントが得られるソリューションだと感じています。

本当に必要な広告を届けることで、ユーザーも広告主も媒体社もハッピーに

渡邊:データ活用という点でいうと、Roktさまはパブリッシャー(媒体社)側のファーストパーティデータを活用して、ターゲティングの精度を高めていく手法が非常にユニークだなと思っています。電通は2019年にRoktさまの日本事業スタートからご一緒させていただいていますが、今でこそCookieを使わないのが強みになっているものの、当時は、ユーザーや媒体社が健やかに成長していくためにはどうしたらいいんだ、という問いから始まったのも印象的でした。
株式会社 電通 渡邊 涼太氏
松田:Roktが大切にしている言葉に、「自分にとって意味がある」「好みや嗜好に合う」といった意味合いの「レレバンス(Relevance:関連性)」があります。昨年、当社で調査を行ったところ、「自分好みの購買体験をつくり出すために、ECサイトがファーストパーティデータを活用することを許容するか」という趣旨の質問に対して、国内では約8割の方が「Yes」と答えました。ここから分かるのは、プライバシーに十分配慮していれば、ユーザーもECサイト側にデータを活用して、自分に合った情報提供をしてほしいというニーズを持っている、ということです。私たちは、エンドのお客さまを中心に、広告主、EC事業者の三者が幸せになる「三方よし」のソリューションを目指しています。
山口:確かに、ユーザーは広告に対するアレルギー反応を持ってはいるものの、それは自分に合わない広告に対してだと思います。「あなたの属性はこうだから、これが見たいんでしょ」と決めつけられたら、あまり良い気分がしませんよね。1人ひとりに合った、親和性の高いメッセージを届けるという健全な前提があれば、ユーザーもブランドも、媒体社もハッピーになる。それを可能にしていくことが、引き続き私たちのミッションだと思っています。

 


 

サードパーティクッキーの廃止をきっかけに、広告とは何かという本質に立ち戻ったソリューションに注目が集まっています。より良い顧客体験をユーザーの皆さまに提供すべく、電通グループはパートナー企業さまとのパートナーシップを強めていきます。

電通グループでは、ボトムからアッパーまで、フルファネルの施策を提案可能です。ポストCookie時代のデジタル広告にお悩みの方は、CONTACTからお問い合わせください。

※ 参照:CARTA HOLDINGS「リテールメディア広告市場調査」 

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株式会社電通デジタル 株式会社 電通

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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