昨今、持続可能な未来を目指し、循環型社会の実現に向けた取り組みが加速しています。社会と企業、それぞれの持続可能性を同時に追求する「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」は、今や企業の経営戦略において欠かせない視点と言えるでしょう。
こうした中、トヨタ自動車における新たなサステナビリティ活動として「TOYOTA CIRCULAR ACTIONS」を検討しています。取り組みのトライアルとして、「トヨタのタネ」の概要や、その実施過程と成果について、今回のトライアル実施先となったウエインズトヨタ神奈川株式会社の齋藤拓氏、トヨタ・コニック・プロ株式会社の伊藤祐氏、株式会社 電通 サステナビリティコンサルティング室の有馬昂志氏に、それぞれの視点から話を聞きました。
古紙を“花咲く再生紙”によみがえらせる「トヨタのタネ」

有馬:このたび、資源のバトンを次世代につなぐための新プロジェクト「TOYOTA CIRCULAR ACTIONS」のトライアルがスタートしました。「トヨタのタネ」は、オフィスや店舗から排出される古紙を、植物のタネをすき込んだシードペーパーとして再生し、お客さまに還元するという取り組みです。このシードペーパーを水に浸けて土に埋めると、数日で発芽し、やがて花が咲きます。まずは、このプロジェクトの発足経緯を教えてください。
伊藤:トヨタは、商品の製造において「つくる」「運ぶ」「使う」「廃棄・リサイクル」など、クルマの一生を通してCO2排出量を削減する、カーボンニュートラル実現に向けた脱炭素の取り組みを進めています。他にも、さまざまな環境保全活動を実施し、2050年に向けた目標「トヨタ環境チャレンジ2050」の達成に向けて幅広い取り組みを行っています。
とはいえ、こうした活動内容は生活者の皆さまにはなかなか伝わりにくいため、より具体的なアクションができないかと模索していました。そこで着目したのが、お客さまに一番近い販売店です。トヨタ自動車販売店では、これまでにも紙の商品カタログの電子化によるCO2削減など、カーボンニュートラル実現に向けて取り組んできました。他にも各販売店がそれぞれ個別の施策を行っていましたが、約4,300以上の店舗が一丸となってさらなる取り組みを行うことで、より多くのお客さまに活動を知っていただく機会になるのではないかと考えました。
そこで電通のサステナビリティコンサルティング室に相談し、トヨタ自動車におけるプロジェクトとして「TOYOTA CIRCULAR ACTIONS」を発足することになりました。そして、そのトライアルとして「トヨタのタネ」を企画したのですが、この実施にご協力いただけないか、ウエインズトヨタ神奈川さまにお声掛けいたしました。
とはいえ、こうした活動内容は生活者の皆さまにはなかなか伝わりにくいため、より具体的なアクションができないかと模索していました。そこで着目したのが、お客さまに一番近い販売店です。トヨタ自動車販売店では、これまでにも紙の商品カタログの電子化によるCO2削減など、カーボンニュートラル実現に向けて取り組んできました。他にも各販売店がそれぞれ個別の施策を行っていましたが、約4,300以上の店舗が一丸となってさらなる取り組みを行うことで、より多くのお客さまに活動を知っていただく機会になるのではないかと考えました。
そこで電通のサステナビリティコンサルティング室に相談し、トヨタ自動車におけるプロジェクトとして「TOYOTA CIRCULAR ACTIONS」を発足することになりました。そして、そのトライアルとして「トヨタのタネ」を企画したのですが、この実施にご協力いただけないか、ウエインズトヨタ神奈川さまにお声掛けいたしました。

有馬:この企画について、齋藤さんはどのように受け止めましたか?
齋藤:私はウエインズトヨタ神奈川で、SDGsに関する部署に所属しています。ウエインズグループでは、植樹会「丹沢の生命を育む森林づくり」に毎年参加したり、小学生を対象にした福祉車両・車いす体験授業を開催したりと、さまざまなSDGs活動を行ってきました。今、私や皆さんの手元にある「ウエインズオリジナル天然水」は、植樹活動を行っている丹沢山系で採水した天然水です。こうした活動が認められ、2020年4月、神奈川県内の自動車販売企業としては初めて「かながわSDGsパートナー」に登録されました。
このように、これまでもウエインズグループではさまざまな取り組みを行っていましたが、SDGs活動は幅が広く、Next Actionの企画化に苦慮していました。そんな中、「トヨタのタネ」のご提案を受け、私自身もワクワクしました。
このように、これまでもウエインズグループではさまざまな取り組みを行っていましたが、SDGs活動は幅が広く、Next Actionの企画化に苦慮していました。そんな中、「トヨタのタネ」のご提案を受け、私自身もワクワクしました。

※手元にあるのが「ウエインズオリジナル天然水」
オフィス内の古紙回収Actionが、従業員1人ひとりの意識・行動変容につながる
有馬:あらためて「トヨタのタネ」トライアルの概要について、齋藤さんからご説明をお願いします。

齋藤:本格的な実施を前に、まずは取り組みの意義や効果を探るため、イベントで配布してお客さまからの声をいただこうと考えました。そこで2024年7月、ウエインズトヨタ神奈川がオフィシャルパートナーを務めるプロサッカークラブ、川崎フロンターレさまのファン感謝デーイベントでシードペーパーをお配りし、アンケートを実施しました。
有馬:トライアル実施に当たり、社内の反応はいかがでしたか?
齋藤:まず、本社オフィスに回収ボックスを1週間設置し、シードペーパーの製造に必要な古紙を3kg回収しました。当初はそれだけの古紙が集まるか懸念していましたが、3日間という予想をはるかに上回る早さで目標に到達し、社員の意識の高さやプロジェクトへの共感の深さを感じました。1人ひとりが地球環境について問題意識を抱き、「貢献できることはないか」と考えていたからこそ、わざわざ回収ボックスにまで足を運んでもらえたのだと思います。些細なことですが、行動変容につながったのはうれしい結果でした。
有馬:植物のタネは、植えてから花が咲くまで時間がかかります。今回の企画ではその特性を生かし、長期にわたって顧客体験を維持するという狙いもありました。実際にお客さまの反応やアンケートの回答は、いかがでしたか?
齋藤:250枚のシードペーパーをお配りし、約210件のアンケート回答をいただきました。全体的に高評価でしたし、会場でもお客さまから「え、この紙に花のタネが入っているの?」「今はこんなこともできるんだね」という驚きの声をいただきました。従業員にお客さまの声を共有し、今後の活用方法を検討しているところです。
全員が当事者意識を持つことでサーキュラー・エコノミーの循環図を広げる
有馬:今回のトライアルを踏まえた、「トヨタのタネ」の今後の展開についてお聞かせください。
齋藤:秋から冬にかけて、イベントでシードペーパーを配布するなど、取り組みの周知に向けて動き出しています。さまざまなイベントで継続して活動することで、ウエインズグループのサステナビリティ活動について多くの方に知っていただけるのではないかと期待しています。
また、2027年には横浜で「2027年国際園芸博覧会」(GREEN×EXPO 2027)が開催されます。こちらでもシードペーパーの配布を通して多くの皆さまに植物を身近に感じていただき、緑化への貢献ができればと考えています。
また、2027年には横浜で「2027年国際園芸博覧会」(GREEN×EXPO 2027)が開催されます。こちらでもシードペーパーの配布を通して多くの皆さまに植物を身近に感じていただき、緑化への貢献ができればと考えています。
有馬:「トヨタのタネ」は、店舗から排出される古紙を回収しての取り組みでしたが、「TOYOTA CIRCULAR ACTIONS」のアクションはどのような構想がありますでしょうか。また、どのように活動を広げていくのか、展望をお聞かせください。

伊藤:例えば、店頭で使用されるクルマのアイテムを再利用できる素材に変えるなど、今後はより人々の生活に近いところで活動を広げていく構想もあります。ですが、トヨタグループで既に取り組んでいるカーボンニュートラル活動も含め、まずは小さなアクションから始めていき、販売店やショールームでのCO2排出量を削減していきたいです。
そして、店舗の従業員が、この活動について当事者意識を持ってお客さまにお伝えすることで、お客さまにも自分事としての意識が芽生えていくのではないかと思います。こういったことを1つずつ広げていくということが、本当に重要だと思います。
そして、店舗の従業員が、この活動について当事者意識を持ってお客さまにお伝えすることで、お客さまにも自分事としての意識が芽生えていくのではないかと思います。こういったことを1つずつ広げていくということが、本当に重要だと思います。
齋藤:これまでSDGs文脈でお話をしてきましたが、これからはより広い視点でカーボンニュートラルを考えていかねばなりません。国内外で2030年、2050年の目標が掲げられる中、私たちはどのような取り組みを行うべきか。従業員1人ひとりに脱炭素を自分事として捉えてもらい、柱となるような全社的な取り組みに結び付けていきたいです。
また、ウエインズグループでは、2022年7月にプロバスケットボールチーム「横浜ビー・コルセアーズ」をグループの一員として迎えました。現在は、試合で使う紙製の応援グッズをエコでエシカルなノベルティとして生まれ変わらせ、ファンに還元する企画を検討中です。こういった取り組みを通じて、サーキュラー・エコノミーの循環システムができ上がるのではないかと考えています。
また、ウエインズグループでは、2022年7月にプロバスケットボールチーム「横浜ビー・コルセアーズ」をグループの一員として迎えました。現在は、試合で使う紙製の応援グッズをエコでエシカルなノベルティとして生まれ変わらせ、ファンに還元する企画を検討中です。こういった取り組みを通じて、サーキュラー・エコノミーの循環システムができ上がるのではないかと考えています。
有馬:スポーツ事業など生活者に還元しやすい領域とつなぐ仕組みを作ることで、企業、行政、生活者それぞれが当事者意識を持ってサーキュラー・エコノミーの循環図を大きく広げていけそうですね。われわれとしても、そういった仕組み作りを支援していきたいと思います。

店頭SX施策を推進するには、従業員とお客さまそれぞれに活動を理解していただく必要があります。今回のトライアルは、古紙の回収、シードペーパーを植えて花を咲かせるという具体的なアクションにより、従業員とお客さまがそれぞれ循環型社会の実現を自分事として考えるきっかけになったのではないでしょうか。
電通では、企業のSX、サステナビリティ経営を多角的にコンサルティングし、サポートしています。ご興味のある方は、CONTACTからぜひお問い合わせください。