女性活躍の視点からサステナブルな働き方ができるのはどのような社会でしょうか。株式会社 電通において、企業のサステナブルなビジネス創造をサポートする専門組織「サステナビリティコンサルティング室」のメンバーが、次世代のオピニオンリーダーにお話を伺う本シリーズ。
第5回は、女性のキャリア形成に寄り添い、エンパワーするプロジェクト「NewsPicks for WE」の編集長であり、映像コンテンツの企画・プロデュース集団「NewsPicks Studios」の広告制作チームリーダーである川口あい氏に、サステナビリティコンサルティング室クリエイティブ・プランナー 兼 「NewsPicks Studios」CCOの福島崇幸氏がインタビューしました。前後編の2回にわたりお届けします。
働く女性のリアルインサイトを集める
福島:現在、サステナブルな働き方や、企業のサステナブル経営が課題となっています。その中の重要なアジェンダの1つとして、女性の活躍推進が挙げられます。これは性別関係なく影響するアジェンダといえます。「NewsPicks for WE」は女性のキャリア構築をサポートするプロジェクトですが、その活動内容と発足の経緯を教えてください。

川口:2021年にローンチした「NewsPicks for WE」では、これまで国際女性デーを中心に、さまざまなコンテンツの発信や、イベント施策を行ってきました。
発足のきっかけは、いわゆる「202030」が先送りされたことです。2003年、内閣府男女共同参画局は「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標を立てました。ですが、2020年を過ぎても達成できず、それに対する振り返りもないまま目標期限が先送りされました。また、世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数」では、日本は低位をキープし続けていますが、その原因は、政治・経済分野における女性活躍の停滞と見られています。
こうした現状から、経済メディアである「NewsPicks」として、私たちにできることをしようと立ち上げたのが「NewsPicks for WE」です。これまでにも、メディアでは女性起業家や企業内で活躍する現役の女性リーダーたちを取り上げてきましたが、今まさに仕事と育児・家事を両立しながらモヤモヤと悩み、それでも頑張っている20~40代の働く女性のリアルインサイトを集めるメディアはありませんでした。そこで私たちは、働く女性のリアルなインサイトを集め発信し共有することと、そういった情報を女性が働く組織の男性リーダーにも届けることの2軸で、活動を続けてきました。
発足のきっかけは、いわゆる「202030」が先送りされたことです。2003年、内閣府男女共同参画局は「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標を立てました。ですが、2020年を過ぎても達成できず、それに対する振り返りもないまま目標期限が先送りされました。また、世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数」では、日本は低位をキープし続けていますが、その原因は、政治・経済分野における女性活躍の停滞と見られています。
こうした現状から、経済メディアである「NewsPicks」として、私たちにできることをしようと立ち上げたのが「NewsPicks for WE」です。これまでにも、メディアでは女性起業家や企業内で活躍する現役の女性リーダーたちを取り上げてきましたが、今まさに仕事と育児・家事を両立しながらモヤモヤと悩み、それでも頑張っている20~40代の働く女性のリアルインサイトを集めるメディアはありませんでした。そこで私たちは、働く女性のリアルなインサイトを集め発信し共有することと、そういった情報を女性が働く組織の男性リーダーにも届けることの2軸で、活動を続けてきました。

福島:このプロジェクトは、川口さんをはじめとする社内有志が立ち上げ、約5年にわたって情熱を注ぎ続けています。その熱源は、どこから来ているのでしょうか。
川口:私は29歳で結婚し、それまで勤めていた出版社を辞めて専業主婦になりました。社会と隔絶されたような気持ちになり、そのころは毎日モヤモヤした思いを抱えていました。やがて離婚することになるのですが、別居した時には夫の扶養に入っていたので住まいも借りられず、離婚後の名義変更も面倒で。さらに、キャリア復帰に至るまでの道のりが本当に大変でした。こうして、当事者としてライフステージの変化や女性特有の壁に直面して、不利益を被ることがたくさんあると初めて気付いたんです。このような実体験を通して、社会構造にも多分に問題があると感じたことが原動力になっています。
男性中心の社会構造を変えるため、具体的な事例を集めてアクションを起こす
福島:「NewsPicks for WE」の活動が素敵だなと思うのは、一方的な情報発信ではなくコミュニティー機能があるところです。業界・職種は違っても、同じ境遇の人に出会えて共通のテーマで対話ができるというのは、当事者にとって意義あることだと思います。川口さんご自身が、この活動において重視しているのはどんな点でしょうか。
川口:おっしゃる通り、働く女性当事者のリアルな声を聞くことを大切にしています。そもそも「NewsPicks」自体、コミュニティーとしての側面が強いメディアです。「NewsPicks for WE」でもコミュニティー機能を重視し、参加してくださる皆さんのリアルなインサイトや熱量を大事にしています。
当事者1人ひとりのお悩みは、その方固有のものです。もちろん汎用性のあるお悩みもあると思いますが、固有のお話から自分ごと化して学べることもたくさんあるはずです。そのために、できるだけ具体的な事例を集めるようにしています。
当事者1人ひとりのお悩みは、その方固有のものです。もちろん汎用性のあるお悩みもあると思いますが、固有のお話から自分ごと化して学べることもたくさんあるはずです。そのために、できるだけ具体的な事例を集めるようにしています。
福島:確かに10人いれば、10通りの事例があると思います。そんな中、女性活躍というキーワードの下、女性管理職比率が指標化されることで、議論が絞られてしまうのではないかという懸念もあります。川口さんは、指標化されることにどんな意味や課題があると思われますか?

川口:外圧がないと現状が変わらないので、指標は大事ですよね。女性活躍というキーワードを旗印にすることで、その重要性を理解する人もいますから、こうした言葉も必要だと思います。ただ、このような指標や言葉は、社会構造を変えることを目的にしたものだと認識しなければなりません。
従来の社会構造を変えるには、どうしても数十年単位の時間がかかります。まずは「こういう事例が生じている」「声を挙げている人がこれだけいる」ということを可視化し、リアルインサイトを共有することで、女性の不便さを自分ごととして捉え、「国の制度として社会構造を変えていかなければならない」というアクションにつなげなくてはなりません。
企業や社会のOSを一気に変えることはできません。実際、女性躍進において結果を出している企業は、長期にわたって取り組みを進めてきたからこそ今があります。私も10年、20年かかる覚悟で、諦めずに取り組んでいきたいと考えています。
従来の社会構造を変えるには、どうしても数十年単位の時間がかかります。まずは「こういう事例が生じている」「声を挙げている人がこれだけいる」ということを可視化し、リアルインサイトを共有することで、女性の不便さを自分ごととして捉え、「国の制度として社会構造を変えていかなければならない」というアクションにつなげなくてはなりません。
企業や社会のOSを一気に変えることはできません。実際、女性躍進において結果を出している企業は、長期にわたって取り組みを進めてきたからこそ今があります。私も10年、20年かかる覚悟で、諦めずに取り組んでいきたいと考えています。
長年にわたって構築されてきた社会構造にメスを入れるには、これまで“あたりまえ”とされていたことに疑問を持たなければなりません。そのためにも、女性のキャリア形成にはどのような困難が伴うのか、リアルな声を引き出す「NewsPicks for WE」の活動は大きな意義があると言えるでしょう。後編では、2025年3月5日(水)に開催される「WE CHANGE AWARDS 2025」の発足経緯について語っていただきます。
電通では、女性活躍をはじめ、さまざまな形で企業のDEI推進をサポートしています。サステナブル経営に課題をお持ちの企業の方は、ぜひCONTACTからお問い合わせください。