DX
2025/03/27

DXからXDへ。医療・ライフサイエンス業界を変える、原点回帰の「治療体験向上エコシステム」とは(前編)

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コロナ禍を経て、医療・ライフサイエンス業界におけるDXが急速に推し進められてきました。また、経済産業省が「健康経営」「健康投資」を推奨していることも後押しし、2025年には33兆円規模のマーケットになると予測されています。これは主に公的保険外のサービスを含みます。一方、厚生労働省の予測では、2025年度の国民医療費が約52.3兆円に膨らむとされています。これは主に公的医療保険が適用される範囲を指します。両者は異なる側面を捉えていますが、医療・ライフサイエンス業界全体の成長が期待されています。そのような中で、当該業界では、原点回帰とも言える「ペイシェントセントリック(患者中心のアプローチ)」が求められているといいます。

今回は、医療・ライフサイエンス領域を専門とする電通グループの中核組織・株式会社 dentsu health Japan 水田聖司氏、株式会社電通デジタルでメディカル統合ソリューション「DDMEX(Dentsu Digital Medical Experience Transformation)」を担当する登坂統彦氏、平山愛彩氏にインタビュー。業界の課題や今後の展望について語りました。前後編の2回に分けてお届けします。

DX(Digital Transformation)からXD(Experience Design)へのシフトで「新たな治療体験」の時代が始まる

Q. 皆さんはdentsu Japan(国内電通グループ)で医療やライフサイエンス領域を専門に活動されていますが、それぞれどのような立場で関わられているのでしょうか。

水田:電通グループは、2021年にライフサイエンス領域に特化したグローバル横断組織「dentsu health」を発足しました。その中核を担うのが、医療・ライフサイエンス領域の専門性を有したエージェンシーであるdentsu health Japanであり、私は2025年1月から代表を務めています。
登坂:私は、電通デジタルでビジネスプロデューサーとして、DDMEX(Dentsu Digital Medical Experience Transformation)というライフサイエンス業界に特化したCX統合ソリューションを推進しています。DDMEXとは、デジタルを活用し、医療現場における医療従事者と患者の両側面からコミュニケーションをサポートするものです。治療にまつわるデータや患者データを基に、医療従事者と患者のニーズやインサイトを可視化し、データプラットフォームとコミュニケーションの両面からなるソリューション群を通じて、医療従事者と患者、営業を担当するMR(Medical Representatives:医薬情報担当者)、それぞれの立場から「より良い治療体験」を実現します。さらに、プロジェクトのインハウス化に向けたCXの専門家による人材育成・組織開発支援プログラムをご提供しています。
平山:同じく、電通デジタルでDDMEXの推進を担当しています。主に、営業CXや戦略の浸透、メディカル分野における伴走支援といった分野に携わっています。
電通デジタルが提供する「DDMEX」の全体像

Q. dentsu health Japanは、2024年1月に「電通メディカルコミュニケーションズ」から社名変更しました。このタイミングで体制の刷新が行われた理由について教えてください。

水田:グローバル横断組織としての「dentsu health」が、電通グループの医療・ライフサイエンス領域に特化したワンストップの窓口になったことが、「dentsu health Japan」への体制刷新の起点だったと思います。国内外グループ各社のノウハウやネットワークが活用できるようになり、社内での知見共有やチーム間の連携が進んだことで、より幅広い統合ソリューションの提供体制を構築し、顧客企業の多様な課題に対応できるようになりました。
株式会社 dentsu health Japan 水田 聖司氏
登坂:医療・ライフサイエンス領域で求められることが変化してきたタイミングでもあったと思います。電通デジタルでも、近年の業界動向を踏まえて、さまざまな新しい取り組みを始めていましたが、そうした動きは電通グループの各社でも起きていて、じゃあ一緒にやろうよと声をかけ合い、グループ全体の連携を強めようとする機運が高まってきたのです。

特に、今電通グループでは、デジタル化できる部分と、あえてデジタル化しない方が良い部分を見極め、CXを中心に据えてDXを進めることを重視しています。DXは、効率化や生産性向上だけで語られることがありますが、実際にはそれは手段であり、目的ではありません。DXの本質は、体験をデザイン(XD)し、医療従事者と患者にとっての治療体験を向上させることにあると私たちは考えています。

コロナ禍を機にDXが進んだことで浮き彫りになった課題

Q. コロナ禍をきっかけに、DXが大きく進んだと感じています。医療分野におけるDXの現状や、そこから見えてきた課題について教えてください。

水田:コロナ禍によって、医療業界でもオンライン診療や電子カルテの導入など、DXを本格的に進めざるを得ない状況になり、結果として生活者が医療情報にアクセスしやすくなったことは、大きな変革と言えるでしょう。その一方で、正しい情報を見極める難しさが増し、医師間ですら意見が分かれるといった課題も浮き彫りになっています。また、オンライン診療やデータ収集が進んだものの、これらのツールをどう活用するか、蓄積したデータをどのように持続的に運用していくかなど、課題は山積みです。
登坂:カルテを紙ベースで管理している医療機関も少なくないなど、医療業界のデジタルリテラシーの格差も課題ですね。それに加えて、マネタイズの仕組みや、高齢化社会におけるデジタル化の意義も問われています。DXを進めること自体を目的とせず、医療従事者と患者の双方が使いやすい仕組みを模索し、地域ごとの医療エコシステムを構築していくことが求められていると感じます。
株式会社電通デジタル 登坂 統彦氏

Q. 医療業界におけるデジタルリテラシーの格差を埋めるためには、企業の関わりも重要になってくるのでしょうか。

登坂:そう思います。医療の質の向上には、企業もステークホルダーとして貢献していますし、中でも医薬品や医療機器・材料を提供する企業の関わりは不可欠です。
平山:医療・ライフサイエンス業界でもDXが進んでいますが、実際にそれをどう使いこなすか、どう浸透させるかが大きな課題となっていますね。MRの手腕にかかっている部分も大きく、医療従事者や自社組織の価値観にフィットしなければ現場に浸透していきませんし、医療の質を向上させることにもつながっていきません。

dentsu Japanが提供するワンストップ支援とは

Q. さまざまな課題がある中で、dentsu Japanではどのような体制でサービス展開をしていますか?取り組みの内容について詳しくお聞かせください。

登坂:私たちのアプローチは、基本的にCXを起点にした戦略策定から始まります。医療・ライフサイエンス領域は特に、患者起点でないと解決できないことが多いため、医療従事者や患者の体験に寄り添ったデザインを重視しています。
平山:中でも、MRの役割は重視しています。医療の質を向上し、患者さんに価値ある医療サービスを提供していくためには、その間に立つ医療従事者に対して優れたCXを提供できる人材の育成が不可欠です。DDMEXでは、ワークショップを通じてCXマインドセットの醸成にも取り組んでいます。ワークショップの内容については、後編で詳しくご説明します。
株式会社電通デジタル 平山 愛彩氏

Q. CXを起点にしたワンストップ支援が可能な点が、dentsu Japanの強みであり、競争力を高めることにもつながっているということでしょうか。

水田:その通りです。デザインファームなど、CXデザインを行える会社は他にもありますが、医療従事者、患者、製薬会社のコミュニケーションをワンストップで支援できる組織はなかなかないと思いますし、その点はクライアントさまからも高く評価いただいています。
平山:現在の医療・ライフサイエンス業界において、製品のみにフォーカスを当てた競争は疲弊を招き、疾患によってはコモディティ化しているところもあります。そのような背景から、今後は製品情報の優劣だけでなく、体験価値を創造することが競争力の源泉になっていくと、あるクライアントさまがおっしゃっていました。DXが進み、生活者自身が安全性や有効性の情報を容易に手に入れられるようになったことを踏まえても、CXデザインの重要性はますます高まっていくと考えられます。

 


 

医療・ライフサイエンス業界では、DXが進む一方で、デジタルリテラシーの格差や情報の取り扱いに課題があることが分かりました。電通グループでは、医療従事者・企業・患者それぞれの立場から「より良い治療体験」を実現するために、さまざまな取り組みを行っています。後編では、電通グループが提供する具体的なサービスやソリューションについて詳しく聞いていきます。

電通グループは、医療・ライフサイエンス分野をはじめ、さまざまな領域でCXを重視したマーケティング戦略の策定を支援しています。顧客のニーズに応じたエクスペリエンスを作り出し、より効果的なコミュニケーションを実現したい方は、CONTACTよりお問い合わせください。

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株式会社電通デジタル 株式会社 dentsu health Japan

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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