エリア特性を生かした独自のビジネスモデルの構築や、エリア経済の活性化に資する活動事例を紹介する連載「エリア経済の未来図」。第4回で取り上げるのは、宮崎県都城市のシティプロモーション戦略です。産出額・生産額が日本一である「肉と焼酎」にフォーカスしたふるさと納税、俳優・温水洋一氏やゆるキャラ・ふなっしーを起用したPR活動など、思い切った施策で注目を集めています。宮崎県都城市 市長の池田宜永(いけだたかひさ)氏と、広報活動をサポートする株式会社 電通 第4CRプランニング局の山本友和氏へのインタビューから、地域の魅力を最大化するためのヒントを探ります。
思い切ったシティプロモーション成功の秘訣
Q.都城市がシティプロモーションに力を入れることになった経緯を教えてください。その背景にはどのような課題があったのでしょうか。
そこで最初に取り組んだのが、対外的なPRです。都城市は肉(肉用牛、豚、鶏などの合計)の産出額と焼酎の生産額が日本一。そのため、都城市の強みを最大限生かして「ふるさと納税」に取り組もうと考えました。2014年度下半期からは“日本一”をキーワードに、肉と焼酎のみを返礼品とすることにしました。
すると、以前は年間数百万円ほどしか集まらなかった寄附が5億円に急増。2015年度は寄附受入額が全国1位になり、他の特産品を返礼品に加えた2016年度以降も何度も日本一になったんです。この取り組みを皮切りに、シティプロモーション戦略を幅広く行うことになりました。

Q.電通は、どのような形で都城市シティプロモーション戦略に参画したのでしょうか。
ふなっしーや温水洋一氏を起用し、インパクトのあるプロモーションを実施
Q.市の魅力をPRするために、都城市出身の俳優・温水洋一さんを起用したプロモーションも実施しています。こちらについてご紹介をお願いします。
Q.2023年度には千葉県船橋市の非公認ゆるキャラ・ふなっしーを起用した移住キャンペーンも実施しました。その経緯を教えてください。
そのうちの1つが、移住応援給付金制度。中山間地域に移住すると、1世帯当たり最大300万円、子ども(18歳未満)1人当たり100万円を加算して給付する制度です。この移住支援政策について、ふなっしーを起用してPRしたところ、予想をはるかに上回る反響がありました。2023年度の移住者数は、想定の2倍以上に当たる3,710人。10年後に人口減少を止めるつもりが、1年で人口減少が止まり人口増に転じました。予算の都合上、2024年度は給付に制限を設けましたが、引き続き日本トップレベルの移住支援を行っています。
また、移住・定住支援サイトにも力を入れました。「住めば住むほど都城」というタグラインを掲げ、トップページではアニメーションを使用して給付金制度を分かりやすく伝えつつ、都城市の美しい自然や豊かな暮らしも一体化して見えるように設計しています。情報の伝わりやすさに関しては、どの自治体にも引けを取らないと自負しています。一度見てもらいたいです。
目的を明確にし、最短距離で結果を出す方法を考える
Q.こうした取り組みがテレビなどのメディアでも取り上げられ、都城市の認知度はさらに高まっています。シティプロモーションの成功要因は、どこにあると思いますか?

大事なのは、トップが腹をくくり、成果を見極めること
Q.市の職員や、住民の皆さんの反応を教えてください。
一方、住民の皆さんの反応はさまざまです。ふるさと納税でいただいた寄附金は幅広い施策に使っていますが、住民の皆さんから多くの支持をいただくことはそう簡単なことではないと感じています。
とはいえ、市外の方から「最近、都城は元気だね」と言われることは都城市にとってありがたいことだと思っています。市外の方の声が市民の皆さんにも伝わり、気運を醸成されることも重要だと考えています。
Q.共通の課題を持つ自治体に向けて、アドバイスをお願いします。

ふるさと納税の返礼品を絞ったことで、「日本一の肉と焼酎のふるさと」という強い印象を残した都城市。他の自治体に埋もれず、唯一無二の魅力をアピールするには、思い切った施策を打ち出す決断力と、尖ったアイデアも受け入れる柔軟性がカギとなりそうです。
dentsu Japan(国内電通グループ)では、地域課題の解決や、自治体のプロモーション戦略を、さまざまな角度から支援しています。お困りごとがある地域や自治体の方は、ぜひCONTACTからお問い合わせください。
※隣接する市立図書館などの施設とともに都城市中心市街地の活性化に寄与することを目指した、ホテル、レストラン、フードマーケットなどからなる複合施設