独自のアプローチで企業の未来価値を見いだす、電通と国内電通グループ7社(※1)の横断組織「未来事業創研」は、2023年12月に人と社会が望む2040年の未来の暮らしを構想し、ビジネスチャンスを発掘するツール「電通 未来ファインダー100」をリリースしました。気候変動、若者、コミュニケーション、モビリティ、身体拡張など、8カテゴリー・100テーマで構成されたこのツール。今回は、開発に携わった株式会社 電通 山田茜氏、株式会社電通デジタル 高橋朱実氏、株式会社電通総研 神山恵里氏、株式会社 電通マクロミルインサイト 工藤陽子氏が、実際に本ツールを使って、未来のありたい姿をディスカッションしました。前後編の2回に分けてお届けします。
集合知が導く「ありたき未来」の姿
山田:未来事業創研は電通グループの横断組織で、さまざまな専門性やバックグラウンドを持ったメンバーで構成されています。「電通 未来ファインダー100」が誕生した背景やビジョンはファウンダーの吉田健太郎さんに
前回のインタビューでお話いただきましたが、今回は100のテーマについてさらに深掘りしていきたいと思います。まずは自己紹介を兼ねて、それぞれの所属と、なぜ未来事業創研に参加することになったかを話していけたらと思います。
まずは私から。電通のソリューション部門に所属していて、未来事業創研でクライアント企業さまの未来に向けた事業創造・新商品の開発に携わっています。いろんな企業の方とワークショップをして「つくりたい未来」を可視化したり、勉強会をしたり。未来事業創研の広報担当もしています。私個人として未来事業創研に携わりたいと考えたのは、「未来」について専門的な知識を持ち、自分のためにも・自分の大切な人たちのためにも未来を本気で良くしようとするプロフェッショナルになりたいと感じたからです。
高橋:私は電通デジタルのトランスフォーメーション部門に所属しています。「
電通未来曼荼羅2023」の編集でご一緒した、未来事業創研ファウンダーの吉田さんからお声がけいただいたことが、参加することになったきっかけです。
株式会社電通デジタル 高橋 朱実氏神山:私は、電通総研のコンサルティングチームの所属です。主にものづくり企業を支援するコンサルティング部隊で、その中でも新規事業のアイデア創出をサポートするソリューション開発チームに所属しています。未来事業創研には、そのチームごと参加している形になりますね。
株式会社電通総研 神山 恵里氏工藤:私は、電通マクロミルインサイトの「人と生活研究所」に所属しています。組織としては生活者リサーチやログのデータ分析、生活者視点を取り入れた企業のワークショップ開発などをしていて、本ツールの前身となる「未来ファクトカード」の作成にも携わりました。未来事業創研では、主にワークショップの運営をしています。
生活者や企業の視点でより役立つものを
山田:プロジェクトに対する個人的な思いも聞いてみたいです。私の場合は、所属部署の全員が未来事業創研に参加しているのですが、もし別の部署に所属していたとしても、個人的に参加していたと思いますね。今、娘を育てているのですが、未来を楽しいと思えるかどうかのカギは「個性」と「環境」の2つだと思っているんです。このうち、「個性」は彼女自身が育むものであり、親はその個性を伸ばすサポートをするくらいしかできないと思っています。一方、「環境」は、私たち親世代のアクションによって良い方向に変えてあげることができるはず。娘や次世代の子たちが楽しめるような環境づくりに、貢献できることを何かしたいと思ったのがきっかけでした。
株式会社 電通 山田 茜氏高橋:私は普段クライアント企業さまと接する中で、市場データやインタビューをプロセッシングして、エージェンシーが考案した内容に納得していただくだけでは不十分だと常々考えていました。私たちがどんなに考え抜いた提案だとしても、クライアント企業さま自身のWillが乗らないものは、「ペーパーワーク上の完璧なもの」で終わってしまい、実行推進力が弱くなるからです。必要なのは、クライアント企業さま自身が本当にやりたいことを引き出して、昇華していくアプローチ。そういう考えを持っていた中で、未来事業創研の「
Future Craft Process」というバックキャスティングの手法を活用したコンサルティングプログラムに出会い、自分の考えに合致すると感じました。
神山:私は以前、事業会社に勤めていて、新しい事業やブランドの立ち上げに関わってきました。そこで感じたのは、企業として新しいモノやコトを作ることはなかなか難しいということ。思考の幅を広げることも難しいですし、面白いアイデアを思いついてもリスクを最小限にしようと考えて、結局、現実的なアイデアが採用されるといった事例を数多く見てきたんです。電通総研のクライアント企業さまにもそういった悩みを持たれている方がたくさんいらっしゃるので、未来事業創研のツールやアプローチ手法を生かしながら、クライアント企業さまの思考や視座をより高めていけるような提案をしていきたいと思っていました。
工藤:私は10年以上前にデザイン思考の学びを得てから、生活者視点をインプットして、製品やサービスを通して、社会や人々の課題を解決することをテーマにしてきました。その中で、今は現状のリサーチからの課題分析だけではなく、未来を見据えて、みんなでありたい像を描き、より生活者がハッピーになるプラスの価値を創ることが求められていると感じています。「より未来にプラスの価値を」というのが、未来事業創研で叶えたい思いですね。
2040年、「世帯構成」の在り方はどう変わる?
山田:「電通 未来ファインダー100」は、主にワークショップでの活用を想定しています。実際のクライアント企業さまとのワークショップでは、100のテーマから事業に関連しそうなものや、興味のあるものを15〜20ぐらいピックアップしてもらい、それを勉強会でインプットし、ワークショップで「つくりたい未来」のアイデアを出していく形になります。
本ツールの作成においては、テーマごとに担当を決めて、未来の予測やどのようなビジネスチャンスがあるか検討しましたが、今回は担当したものとは限らずに、それぞれが注目しているテーマを1つ選んできてもらいました。選んだ理由と「こんな未来になったらいいな」というのを語り合いたいと思います。工藤さんは、どんなテーマを選びましたか?
「電通 未来ファインダー100」の100テーマ工藤:私が選んだのは「世帯構成」というテーマです。未来ファインダーには「血縁や婚姻にとらわれないゆるやかな共同生活スタイル」の可能性が書かれています。普段、子育てをする中で、家族が背負うものがあまりに多すぎると感じていて……。また、恋愛から結婚、出産、家族として生活を送るという、従来の恋愛結婚による家族形成を疑問視する風潮も高まっているように思います。人生が長期化する中で、パートナーシップが今より緩やかになったり、他人の子どもを共同で育てる世帯が出現したりするなど、「助け合い」が広がっていくと理想的ですよね。
株式会社 電通マクロミルインサイト 工藤 陽子氏神山:今は、従来の価値観を変えていくタイミングだと、感覚的に理解している人は多いけれど、制度が追いついていないですよね。追いついていない部分は、サービスなどで補填できる場合もあると思うので、新しい事業につながりそうな可能性もあるし、すごくニーズがありそうだなと思いました。
異なる企業・事業部で働くメンバーが集まり、それぞれの知見を生かして作り上げた「電通 未来ファインダー100」。理想の未来について語り合うことで、新たなビジネスチャンスが見つかるかもしれません。後編では、「注目テーマ」のディスカッションの続きや具体的な活用方法などを語ります。
未来事業創研では、「電通 未来ファインダー100」をはじめ、人・社会にとっての「ありたき未来」を可視化し、企業の未来を構想するさまざまなソリューションやサービスを提供しています。ツールについて詳しく知りたい方は、CONTACTよりお問い合わせください。
※1 株式会社 電通、株式会社 電通東日本、株式会社 電通西日本、株式会社電通デジタル、株式会社電通コンサルティング、株式会社電通総研、株式会社 電通マクロミルインサイト(順不同)
https://transformation-showcase.com/articles/519/index.html
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。