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2022/04/19

企業のLINE運用、成功の秘訣とは?カギは「友だち」との関係の濃さにあり(前編)

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数あるSNSの中でも、コミュニケーションツールとして私たちの日常生活に欠かせない存在となりつつあるLINE。企業と顧客のコミュニケーションにおいても、LINEを活用したプロモーションやマーケティングは、今や欠かせないものになっています。多くの企業がLINEの運用を行っている一方で、「本当にLINEをうまく活用できているのだろうか」「手間がかかる割には成果が出ていない気がする」など、取り組みへの疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。LINE運用における成功のポイントや企業側に必要な心構えはどのようなものなのでしょうか。

今回はLINEを中心としたSNSのマーケティングコミュニケーション設計、クリエーティブディレクション、分析業務などに携わる株式会社電通デジタルの荻野好美氏に、企業のLINE運用について解説してもらいました。前編と後編の2回に分けてお届けします。

>>後編はこちら

LINEの強みは、コミュニケーションの「質」と「量」を兼ね備えていること

Q.「企業がLINEを活用するメリットとは?」と聞かれたら、荻野さんはどのように答えますか?

荻野:一番のメリットは、生活者に自然と溶け込む形でフルファネルにおけるマーケティング施策を打つことが可能であることです。企業が抱えるマーケティング上の課題に合わせて、柔軟な活用ができることはLINEの大きなメリットだと思いますね。

LINEはSNSやコミュニケーションアプリという枠にとどまらず、私たちの生活になくてはならないライフプラットフォームとして進化を続けています。そういった意味でも、ターゲットへのリーチとコミュ二ケーションの深さ、「量」と「質」の両方を兼ね備えたコミュニケーションツールは、現状ではLINEの他にないのではないでしょうか。

Q.自社でまだLINEを導入していない企業は、やはり積極的に運用に乗り出すべきでしょうか?

荻野:一概には言えないですね、企業が抱えている課題によると思います。例えば「顧客育成が全然できていない」というような課題を抱える企業にはLINEの導入は効果的ですし、「サービス認知が弱いから認知獲得が最重要課題」、という企業であれば、Twitterなどを始めた方がもしかしたら効果的と言えるかもしれません。

主要なSNS全てにおいてアカウントを開設・運用しているなど、積極的なマーケティング施策に取り組んでいる企業でも、各施策がカスタマージャーニーやマーケティングファネルのどの部分に寄与しているのか、全てを可視化して、把握できている企業は意外と少なかったりもします。企業が抱えている課題とそれに対する理解度、また現在どのような施策を行っているかによっても、打つべき手は変わると考えています。

過去の事例で言うと、自社製品の利用記録機能サービスの開発をされたいというご相談がありまして、この機能をLINEあるいはネイティブアプリのどちらで提供するか迷っているというご相談がありました。チーム内で検証した結果、その企業さまのターゲット年齢層や生活スタイル、製品利用シーンが決め手となって、LINEで提供するのが最適という結論に至りましたが、ターゲット層や置かれている状況が違えば、「それはLINEではなくネイティブアプリでやった方がいいですね」と結論づけるような場合も、きっとあっただろうなと感じています。

LINEで取得したデータをうまく活用できているか否かがカギ

Q.LINEを既に運用している企業から相談が寄せられることも多いと聞いたのですが、そうした企業が抱えている課題感とは具体的にどのようなものなのでしょうか?

荻野:一番多いのが、普段からLINEで定期的な情報発信を行っていて、「友だち」としてLINE公式アカウントを登録してくれているユーザー数も多いけれど、そこで取得したデータをうまく活用できていないケースです。とりわけ多くの企業が陥りがちなのが、自社をフォローしている「友だち」がどのような人たちなのかを十分に理解できていない、その解像度が低いまま「企業が伝えたいこと」だけを届けるという運用になってしまっていることです。本当の意味で「友だち」が“知りたいこと”が届けられていない状況ということになります。

マーケティング施策を打つ際には、ペルソナ設定やユーザーインサイトなどを通じて、ある程度想定ターゲットを明確化した上で、コミュニケーション施策を行うのが一般的だと思います。LINEでもそうした細かいターゲティング(※)を踏まえた施策は可能で、「友だち」の性別や年齢層、住んでいるエリアはもちろん、普段どんなコンテンツに反応しているか、どんなジャンルに最近興味を持っているかなど、データを取得・分析した上で、コミュニケーションを細かく出し分けることもできるのですが、まだまだ活用しきれていない企業も多いのが現状です。

例えば100人「友だち」がいたとして、100人に対して同じメッセージを送ると、友だちによっては“欲しくない情報”が届き“ノイズ”と捉えられてしまいます。その結果、メッセージ内容をきちんと読んでもらえなかったり、未読スルーされてしまったりと、効率が悪いコミュニケーションになってしまうのです。そうした課題を自覚はしているけれど、どのように解決したらいいかわからない、というようなお悩みはよく寄せられますね。

またデータはちゃんと取れていて、ターゲットがどんな商品やアイテムに興味を持っているかまで把握できているけれど、ターゲットに対してどんなメッセージを、どんな戦略やUI/UXに落とし込んで発信したらいいのか分からないという、アウトプット部分のお悩みも多いですね。

Q.本来LINEはターゲットの嗜好に合わせた細やかなコミュニケーションができるけれど、そうしたポテンシャルが引き出せていない。そうしたお悩みを荻野さんがサポートしているわけですね。ちなみにKPIとしては、どのような指標を設定されることが多いですか?

荻野:前提としては企業さまやブランド側のKGIにひも付く形でLINEのKGIを決め、KPIツリーを作っていく形が多いですが、LINE運用の目的や各フェーズに合わせたKPIを都度、設計したりもしています。

例えば、注文機能やデリバリー機能をLINEに導入している企業さまの場合、KPIとなるのは「購入件数」やその手前の「クリック数」、さらにその手前の「メッセージ開封数」です。自社ECを持っておらず売上までカウントできていない企業さまの場合は、「クリック数」や「Webサイトへの流入数」が指標になったりしますね。

LINE独自の指標でいうと、まずは「友だち数」ですね。LINEに限らず他のSNSもそうだと思うのですが、そもそも自社アカウントをフォローしてもらえないとコンテンツを届けることが容易ではありません。特にLINEの場合は「友だち」になっていないとメッセージは届かないので、まずは「量」の視点から、いかに「友だち」=「リーチできるユーザー」を増やしていくかが最初のステップ。その次に、「友だち」になったユーザーにブロックされないためにはどうすればいいかとか、新しく「友だち」を増やすにはどうすればいいか、といったことを考えていきます。

Q.なるほど。最初にLINEは「量」と「質」を兼ね備えたツールだとおっしゃっていましたが、今、「友だち数」という分かりやすい「量」の話をいただきました。では「質」という観点から見たLINEのポイントはどのようなものでしょうか?

荻野:掲げているゴールを達成するために、どのような友だちに、どのようなブランド体験を届けるべきかを考えていきます。例えば「顧客のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を向上する」というゴールを掲げている企業さまは、LINEのIDと自社で持っているEC会員の情報を連携させることにも積極的です。そうすることでAさんというLINEのIDを持っている人が、自社ECサイトで商品を年に何回買っているか、という細かな情報まで取得できるようになります。それが可能になると、年に2回注文をしている人に3回目の購入を促すようなメッセージをLINEで送ることができるわけです。LINEの「友だち」を自社ブランドとの関わり度によってセグメント化して、そのセグメント化したグループごとに適切なコミュニケーションを行うことで、ブランド力をさらに高めるようなコミュニケーションが可能になります。

他にも、普段の運用の中でのコンテンツのクリック数などのアクション結果が定量数値で取得できるので、クリエーティブのA/Bテストも実施できます。ピンクとブルーの2色のトンマナのうち、ピンクの方がクリック率が高かったとか。コンテンツ改善を通じて、「友だち」のエンゲージメント向上や顧客育成が可能な事と、それらの施策結果を定点観測しPDCAサイクルを回していけることが、LINEのコミュニケーションにおける「質」的なメリットになりますね。

 


 

コミュニケーションの「量」と「質」の両方を兼ね備えていて、ライフプラットフォームとして私たちの日常に最も身近なSNSの1つであるLINE。続く後編では、マーケティングにおけるLINEの重要性の変化や、LINEにおける「友だち」の捉え方などについて、語っていただきます。

>>後編はこちら

 

※オーディエンスセグメント配信:これらのオーディエンスデータはLINEファミリーサービスにおいて、LINEユーザーが登録した性別、年代、エリア情報とそれらのユーザーの行動履歴、LINE内コンテンツの閲覧傾向やLINE内の広告接触情報をもとに分類した「みなし属性」および、実購買の発生した購買場所を「購買経験」として個人を特定しない形で参考としているものです(「みなし属性」には携帯キャリア・OSは含まない)。「みなし属性」とは、LINEファミリーサービスにおいて、LINEユーザーが登録した性別、年代、エリア情報とそれらのユーザーの行動履歴、LINE内コンテンツの閲覧傾向やLINE内の広告接触情報をもとに分類したものです(分類の元となる情報に電話番号、メールアドレス、アドレス帳、トーク内容等の機微情報は含まれません)。なお、属性情報の推定は統計的に実施され、特定の個人の識別は行っておりません。また、特定の個人を識別可能な情報の第三者(広告主等)の提供は実施しておりません。

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株式会社電通デジタル

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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