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2022/04/25

ビッグデータを宝の持ち腐れにしないために。「DWH(Data Ware House)」活用の成功の秘訣とは?(前編)

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昨今の急速なテクノロジーの進化に加え、新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの企業が一気にビジネスのデジタル化へと舵を切り始めています。しかし、その流れをくみ、自社で「DXの推進」「ビッグデータの活用」を打ち出したまでは良いものの、「具体的に何をすればいいのだろう」「データをどう活用すればいいのか分からない」といった悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。

そんな悩みを解消するヒントをもらうべく、さまざまな企業へビッグデータを用いた経営課題解決の提案や、AI活用のコンサルティングなどを展開している、株式会社電通デジタルの有益伸一氏にインタビュー。企業におけるデータ活用のカギの1つであるDWH(Data Ware House)についても聞きました。

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データを使って何がしたいのか。ゴールを定めることが重要

Q.有益さんのお仕事は、最新のテクノロジーを活用した企業のDXの推進や、データ活用のコンサルティングが主と聞きました。クライアントからはどのような相談が多いのでしょうか?

有益:今一番多いのが、DWHのようなシステムを導入してはいるけれども、そこで収集した膨大なデータをどう使えばいいだろう?というご相談ですね。その次に多いのは、社内のあちこちにデータが散在していて、それをDWHに落とし込みたいから、導入の手伝いをしてほしいというご要望です。

Q.DWHというのは、業務の中で日々蓄積される大量のデータをまとめて、時系列で保管しておくデータベースのことですよね。せっかくデータを収集しても、活用し切れていない企業が多いということですか?

有益:おっしゃる通りです。「データを集めて、それがビッグデータになれば何かがわかるはず」とDWHを導入した企業が多かった。しかし結果的に、それを何に使えばいいか分からないという状態に陥っている企業がたくさんあります。要するに、導入する段階でアウトプットを考え切れていなかったということなんです。

Q.DWHを導入しようと決めた時点で、どんなデータを取得してどう活用するかを明確にしておくことが大切なんですね。

有益:そうですね。ですので、クライアントから相談を受けるとまず、「ゴールを見定めた上で、逆算して考えていきましょう」という話をします。それから、そのゴールに対して、現状ではどの程度達成できているのか、もしくはできていないのかを整理。さらには具体的な目標数値や行動指針を明らかにしていくところから始めていきます。

その後、われわれが蓄積してきた知見やデータと照らし合わせて、クライアントの現状を分析します。そうすると足りないものが見えてくる。そこで「こんなツールを入れましょう」「こんなデータを取りましょう」と提案したり、「既存のソリューションを導入する形で課題解決できますよ」ということをお伝えしたりというプロセスを踏んでいきます。

Q.新たに何かを取り入れるケースと、現状あるものを生かしていくケースとどちらが多いのでしょうか?

有益:まずは、あるものを生かして改善していく方が多いですね。「今持っているデータを使うのであれば、ここまで解決できます」とお話しさせてもらった上で、目の前の課題に取り組みます。そしてその次に、新たな仕組みを導入して、さらに利活用できるデータを集めていきましょうという提案をします。

ユーザーに対してもフォローを行い、データ活用を促進

Q.これからDWHを導入しようとしている企業についてはどうでしょうか。どんな相談が多いと感じますか?

有益:中期経営計画などに「DXの推進」や「ビッグデータの活用」が掲げられていたためにDWHの導入を考え始める、といったケースは多いように思います。例えば企業のデジタルマーケティング部の部長さんなどから、「中期経営計画でこういう指針が出て、役員から頑張ってやってくれと言われたのでデータ活用を始めたい。でも、社内のデータがあちこちに散らばっていて、すぐに使える状態ではないんですよ」といったご相談をいただくことがありますね。

Q.その場合は、どのような提案をされるんですか?

有益:まずはやはり、先ほどお話ししたように「ゴールを見定めた上で逆算して考える」ということをします。それから、データを集めたり分析したりするシステムにもいろいろな種類がありますので、その企業にベストなものを提案して、システム構築から、実際に点在しているデータをつないで一カ所にためていくというところまでを一連で提案させていただきます。

Q.例えば、営業支援のシステムを導入するとして、導入を決めるのはシステム部だけれど、使うのは営業部の社員だと思います。そのような場合、ユーザーとなる営業部の人たちへのフォローなどもするんでしょうか?

有益:そうですね。そこも含めて支援させていただくことが多いですね。AIを活用するとしたら、なぜAIがこう言っているのか、それを実行すると何%くらいの確率で売り上げが上がるのか、というところまでを具体的に示します。

Q.お話を聞いていると、有益さんの仕事はシステムの提案や構築というよりも、DWHなどを活用した業務コンサルという方が近いですよね。

有益:はい。データにまつわるところから派生して、企業の業務改善、利益向上につながるお仕事をさせていただいている感じですね。

ただ「DWHを導入しよう」ではなく、課題解決を軸に考える

Q.業種としては、どの分野からの相談が目立っていますか?

有益:私の場合は、今は製薬会社の案件をたくさんいただいています。それ以前は、自動車メーカー、家電メーカーなど。とはいえ、業種はそこまで偏っていないと思います。また、現状は大企業からの引き合いが多いですが、これから先、中小企業も導入するところが増えていくだろうと思っています。

Q.なるほど、やはりビッグデータまわりの相談は、年々増えていますか?

有益:とりあえず自社のビジネスにDWHを入れてみたいというご相談が1周目だとすると、今はどう使えばいいか、どうやったらもっと良くなるか、マーケティングの仕組みとどう連携したらいいかというご相談が増えてきたので、2周目のフェーズにきている印象ですね。

石油のように眠っているデータをどう掘り起こすか、そしてどうやって精製してガソリンにするのか。それをクライアントと一緒に考えながら取り組めたら、有意義なのではないでしょうか。

 


 

データ活用を始めたいという企業は増えていますが、重要なのはシステムを導入することではなく、ゴールを明確にして、その達成に向けて逆算でプランニングをしていくこと。続く後編では、有益氏が実際に相談を受けたクライアントの事例を挙げながら、より具体的にDWHによるデータ活用のメリットについて見ていきましょう。

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株式会社電通デジタル

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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