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2022/03/28

“映え”だけじゃない。購買につながるInstagramでビジネスチャンスを創出。戦略的なコミュニケーションが成功のカギ(後編)

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ビジュアル中心のコミュニケーションが人気のInstagramですが、2018年に商品タグ機能、2020年にショップ機能が付加されたことで、消費と結びつけやすいSNSになったと言えるでしょう。本記事では、企業がInstagramを活用する際のポイントについて、実際に運用のサポートをしている株式会社電通デジタルの江草香苗氏が前後編にわたり解説。前編では、Instagramの利点や成功している企業の特徴などについて聞きました。後編となる今回は、より具体的な運用のノウハウに迫ります。

>>前編はこちら

見る人を増やすには、インスタならではの広告を有効活用していく

Q.企業がInstagramを運用する上で、やはり「いかにアカウントを見てもらうか」が大切だと思います。多くの人に見てもらうために、どんな方法があるのでしょうか?

江草:広告の活用が最も効果的だと感じています。その理由はInstagramの広告の仕組みにあります。Instagramでは、通常投稿で反響の高かったものを広告化して二次配信的に投稿することができます。なので、まずは通常投稿で試してみて、反応が良く、「これならフォロワー以外のターゲットにも受け入れてもらえるかもしれない」という投稿があったら、そのまま広告配信することも可能です。この方法であれば、効果や反響、届けるターゲットを通常投稿で見定めてから広告配信できるのでおすすめです。

運用の基本戦略としては、まずブランドのコンセプトを明確にしてブレないように運用する。その上でリーチが足りない場合は、広告を“増強剤”として追加していくのが、認知を広げる王道の手法ではないでしょうか。

Q.インスタグラマーをはじめとした、インフルエンサーの起用についても教えてください。アカウントの認知を拡大するためには有効でしょうか?

江草:もちろん有効だと思いますが、誰を起用するかが重要です。そのアカウントが推したいものと親和性がある人をきちんと選ぶことがポイントになるでしょう。例えば、家族向けの家具を推したいなら、温かい家庭を持っているイメージがあり、家族のことを自然に語れるインフルエンサーを起用する。すると、その人が使っているソファを見て「すてきなお家になりそう」というイメージが湧き、購買につながるかもしれません。大切なのは「本当っぽさ」であり、アカウントの作るストーリーや文脈と違和感のない人選が大切です。

Q.ちなみに、運用におけるKPIはどこに定めることが多いのでしょうか?

江草:アカウントの課題や掲げる目標によって変わりますが、基本的にはエンゲージメントを重視します。アカウントへの流入を図るとき、あるいはユーザーを購買まで結びつけるときにも、エンゲージメントの強さがカギになるからです。具体的には「エンゲージメント率」を算出して、フォロワーのアカウントやコンテンツに対する愛着度を測ります。

Instagramのエンゲージメント率は、投稿への「いいね」、「コメント」、「保存」という代表的な3つのリアクションの数を足してフォロワー数で割ることによって算出できます(設計によってはリーチで割る場合もある)。

従来の広告とは異なる、新しいクリエーティブ・ディレクションが必要

Q.運用していく上では、日々どんなビジュアルを見せて、そこからどういったメッセージを伝えるかというクリエーティブ領域の思考がとても重要になると思うのですが、いかがでしょうか?

江草:その通りだと思います。アカウントのコンセプトを伝えるために、どんなビジュアルやテキストを戦略的に投稿していくのか、その設計が欠かせません。ですので、アウトプットを考えるクリエーティブ・ディレクションの役割がとても重要です。ただし、従来型、例えばCMやポスター広告の制作とはクリエーティブ・ディレクションの考え方がやや異なると感じています。私は前職で広告の映像ディレクションなども担っていましたが、その時との考え方の違いを実感しています。

Q.その「違い」とはどんなものですか?

江草:例えばCMの場合、1本の動画に大きな労力をかけられるかもしれませんが、SNSは日々の投稿素材を生み出すため、持続可能な考え方や作り方が大切になってきます。1つのビジュアル、1枚の絵に対して力を注ぎ込むというより、アカウント全体のコンセプトやスタイルをしっかり決めて、日々の発信がそこからブレないようルールを規定する。そういった、たとえ現在の担当者がいなくなっても持続可能な、長期を見据えたクリエーティブのディレクションが必要だと思います。

もちろん、1つひとつの発信のクオリティが低ければ影響力は出ないので、目を引くビジュアルや見栄えの良い写真などのアートディレクションも必要です。しかしそれも、1枚1枚の絵を個別に考えるのではなく、今後連続していくことを意識した、長期的かつ概念的なアート設計が大事なのではないでしょうか。このアカウントはこういう顔つきと性格だから、こんなふうに振る舞っていくんだという、アカウントの「人格規定」を行うとも言えるかもしれません。

Q.Instagramは、通常の投稿(フィード投稿)のほかにもさまざまな投稿機能があります。それらの使い分けはどうしていますか?

江草:日頃からフィード投稿がきちんと投稿されているという事が前提で、サブ機能をどう使いこなすかも重要です。例えば「ストーリーズ」は、24時間で消える投稿機能であり、ユーザーとのコミュニケーションをよりカジュアルに行うのに適しています。投稿するだけでなくユーザーからアンケートをとったり、スタンプでリアクションをもらうことも可能で、フォロワーにとっても、自分からインタラクティブに反応ができる。その分、エンゲージメントが上がりやすくなります。

60秒までの短い動画を共有できる「リール」機能は、フォロワー以外へのリーチを上げたい場合に有効。というのも、Instagramではユーザーがフォローしていないアカウントのコンテンツを表示する「発見タブ」というものがありますが、ここにはリール投稿が上がってくる確率が高いのです。また、現在はリールだけを表示する専用タブもあり、フォロワー以外へのリーチに大きく貢献しています。ちなみに日本では現在、15分以下の動画もリールとして投稿できるテストの対象になっています。

さらに、忘れてはいけないのが「インスタライブ(Instagramライブ)」ですね。リアルタイムで動画配信を行える機能ですが、これはフォロワーとのエンゲージメントが下がっている場合や、あらためてアカウントの存在感を出したい場合にきわめて有効です。というのも、インスタライブ中は、フォロワーの画面上部に必ずアナウンスが出ます。また、Instagramの投稿の表示順序は、時系列順ではなく、そのユーザーにとって関心が高いと思われる投稿を優先して表示するアルゴリズムになっています。そのため、たとえフォロー中のアカウントでも投稿が埋もれてしまうことがあるんですね。しかし、インスタライブはフォロワー全員の目につきやすくなるので、存在感をあらためて示したいときに有効なのです。

また、インスタライブでは、コメント機能を使って参加者と近い距離で丁寧にコミュニケーションを取ることもできます。商品についてじっくり説明するには良いでしょう。インフルエンサーを交えたイベントをインスタライブで開催し、話題になる例も多く見られます。その場合は、多くのフォロワーに見てもらえそうな日程や時間帯を狙ってライブを行います。

 


 

アカウントのコンセプトを明確にし、その方向からブレない投稿ルールを長期を見据えて作っていく。江草氏の話から、これがInstagram運用のセオリーだとわかりました。加えて、広告や各種機能にはそれぞれの持つ特性があります。これらを理解して、シーンによってうまく使い分けていくことが、Instagramのマーケティング効果を最大限にするコツではないでしょうか。

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株式会社電通デジタル

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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