障害のある方でも女性でも男性でも、性別問わずオールジェンダーで「誰でも」利用できるユニバーサルトイレ
誰もが使用できるトイレが街中でも増えてきました。多目的トイレ、多機能トイレ、東京都では「だれでもトイレ」の名称として公共施設で親しまれるようになってきています。そこで電通ダイバーシティ・ラボ「見やすさプロジェクト」ではピクトグラムをはじめ、オフィスのサインをユニバーサルデザイン(以下:UD)の視点でデザインしました。本回では共同会議室フロアの実際の施工例をもとに、「だれでもトイレ」のサイン開発についてお話ししたいと思います。

車イス利用者、オストメイト利用者、視覚障がい、多様なセクシュアリティなど、誰もが気持ち良く利用できることを考えてデザインしました。またオフィス(社内)と公共の場所(社外)とでは利用者の意識が若干変わると言われています。LGBTQ+の方(特にトランスジェンダーの方)の中には、顔見知りがいるオフィスではユニバーサルトイレの使用をためらう人もいるようです。そこでピクトにはAll Genderと表記しました。誰もが気兼ねなく使えるユニバーサルなトイレにしたい、名称はそういった理由で「だれでもトイレ」としました。
カラーユニバーサルデザインを配慮して設計する

「だれでもトイレ」は通常の男性トイレ・女性トイレと遠くから見てもはっきり区別できるようにすることが必要です。壁面のカラーで目立たせながら、オフィス空間にもマッチするようにデザインしました。UDを考えるときにとても大事なポイントに「色覚タイプの多様性」があります。色の感じ方が人によって大きく違うことを理解した上での配色が大切です。日本の場合、一般的な色覚タイプ(C型)以外の人は、男性の約20人に1人、女性の約500人に1人、日本全体で320万人以上いるとされています。

色覚タイプは厳密には「Cタイプ」「P・Dタイプ」「T・Aタイプ」がありますが、99.9%以上がC・P・Dタイプになります。(データ参照:NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構)ピクトグラムも、事前のカラーシミュレーションで隣にくる色の配色を確認しながらデザインするのが大切です。


ユニバーサルトイレで緑系の色を使っている施設もありますが、色覚タイプがP・D型の人には女性トイレとの違いが分かりにくいことがあるようです。今回の場合も「だれでもトイレ」と女性トイレが隣接していたので、事前のカラーシミュレーションで緑色ではなく水色を選定しました。

サイン表示の高さを考える
「だれでもトイレ」は車イスの方の利用もありますので、サインの高さが見やすい位置にあることも重要です。私たちは高さ約156cmに配置しました。ドアの使い方に関しても、持ち手に近い場所にサインでフォローしています。

オムツの販売数が、子ども用を大人用が抜いたというニュースを聞きました。超高齢社会の日本では、これから「だれでもトイレ」需要がさらに増えると思われます。若い社員もいずれシニアになります。多様性を認め合い共生する社会、まさにダイバーシティ&インクリュージョン!
オフィスは社内外の人が利用する空間でもあります。そこで働く人も、訪れたお客さまも、気持ち良く過ごせる空間づくりを心掛けてほしいと思います。
※2021年8月22日cococolorにて公開された記事を一部加筆・修正し、掲載しております。