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2022/09/12

遊んで稼げるGameFi。NFT技術を駆使したゲームが導く、新たなビジネスの可能性

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eスポーツのプロゲーマーなど、ゲームでお金を稼ぐ人の存在が注目を集めている昨今。特別な技能を持たなくてもゲームをプレイするだけでお金を稼げる「GameFi(ゲームファイ)」という仕組みが世界中で熱い視線を浴びています。GameFiとはブロックチェーンやNFT(Non Fungible Token:非代替性トークン)の技術を使ってゲームのプレイヤーに報酬を与える仕組みのこと。東南アジアや中東などの新興国では、GameFiによって生計を立てている人もいるほどです。

そこで本記事では、「GameFiの普及は、ゲーム業界の収益構造を変え得るか?」という視点から、GameFiの今後の可能性について考察。「ゲーム業界の最新動向を知りたい」「GameFiって何?」という方はもちろん、ゲーム業界にとどまらず、最新のNFTビジネスの動向から、ビジネスのヒントを得たい方にもお薦めです。

誰でもゲームで遊びながら稼げる!GameFiが世界中で注目を集める理由

eスポーツなどゲームプレイで賞金を得るプロゲーマーや、ゲーム実況を行う動画配信者など、ゲームを使ってお金を稼ぐ方法はこれまでも幾つかありました。しかし、こうした稼ぎ方には「ゲームプレイが群を抜いてうまい」「ゲーマーのキャラクターが魅力的で一定のファンが付く」など、突出した技量や才能が必要でした。

しかし、プロになれるほどゲームがうまくなくても、ファンが付くような個性的なキャラクターでなくても、ゲームでお金を稼げるシステムが生まれつつあります。それが「GameFi」です。GameFiとは、「Game」と「Finance」あるいは「DeFi(分散型金融)」を掛け合わせた造語で、ブロックチェーンやNFTの技術を基盤とし、プレイヤーに報酬を与える仕組みのことを指します。

NFT技術を使えば、ゲーム内のアイテムやキャラクターがオリジナルの価値を持つため、それを売買したり暗号通貨に換金したりすることが可能に。さらに、唯一無二であることが証明されるNFTアイテムは、従来のゲームとは異なり、サービスが終了しても価値が消滅することがありません。加えてブロックチェーン技術の特性から、データ改ざんなどの不正が発生しにくいのも魅力です。これらの特徴から、GameFiを活用したゲームは「NFTゲーム」「ブロックチェーンゲーム」「P2E(Play to Earn:遊んで稼ぐ)ゲーム」と呼ばれることもあります。

このGameFiは、アジア各国や、インド、中東などを中心に世界中でプレイヤー人口が増加しており、近年急速に注目を集めています。実際に、新興国ではNFTゲームによって生活費を稼いだり、家族を養ったりするプレイヤーも生まれているのです。

既に数百万ものユーザーを抱えるゲームも存在し、GameFi業界に参入するスタートアップ企業やベンチャー投資ファンドも続々と登場。国内でも、インターネット事業の大手がNFTゲーム関連の子会社を設立したほか、大手ゲームメーカー各社が進出を検討しているようです。プレイヤーにとって「ゲームで遊びながらできる」というハードルの低さや、金銭的なインセンティブを得られるという面から、今後さらなる普及が見込まれます。

NFTゲームでプレイヤーが稼ぐ方法とは?GameFiの2つのビジネスモデル

世界中で広がりつつあるGameFiについて、ここからは、そのビジネスモデルを詳しく見ていきましょう。GameFiのビジネスモデルは、大きく「P2E(Play to Earn)モデル」と「スカラーシップモデル」の2つが存在します。

1つ目の「P2Eモデル」では、ゲーム内でミッションを達成すると、NFTを報酬として得ることができます。報酬は暗号資産そのものだけでなく、ゲーム内で使えるポイントやNFTアイテムなども含まれます。

唯一無二で替えが利かないというNFTの特性を生かし、ゲーム内で獲得した報酬はトレードすることも可能。しかし、レアアイテムは高額でトレードされるなど、RMT(Real Money Trading)同様の問題が発生することも。ちなみにRMTとは、ゲーム内のレアアイテムやレベルを上げたキャラクターのアカウントを、ゲーム内の通貨やアイテムではなく、現実の通貨で売買する行為のこと。日本でこの行為は、賭博罪などに抵触する恐れがあるため、ほとんどのゲームで禁じられています。

この問題を解消すべく生まれたのが、2つ目の「スカラーシップモデル」で、NFTアイテムやプレイヤーが育成したキャラクターをレンタルすることができます。レンタルして遊ぶプレイヤーは「スカラー」と呼ばれ、スカラーが獲得した報酬の一部を、レンタル事業者「ギルド」に支払います。ギルドを運営するのは、「DAO」と呼ばれる中央集権的な管理者が存在しない分散型自立組織。ギルドとプレイヤーの間で相互協力的な収益モデルを実現しているのが、スカラーシップの最大の特徴です。

例えば、ベトナム発の人気NFTゲームは、スカラーシップ制度を取り入れたことがきっかけとなって爆発的に成長しました。ゲームを優位に進められるレアアイテムがあるゲームは、新規プレイヤーが既存プレイヤーに追い付くのに時間がかかると思われ、始めるのに二の足を踏んでしまう人もいるでしょう。しかしこのゲームは、レンタル制度によってそのハードルを下げ、プレイヤー人口を増やすことに成功したのです。

NFTゲームは新興国を中心に人気を集める一方で、ストーリー性や操作性などの品質面において、従来のオンラインゲームと比べて未成熟だという指摘もありますが、前述したように大手ゲーム会社によるGameFiへの新規参入や、開発者などの優秀な人材がNFTゲームの開発ベンダーへ移籍することも増えてきています。近い将来、ひとつなぎの広大なフィールドで自由にプレイできるオープンワールド型や、リアルなグラフィックやサウンドなどで没入感を得られるゲーム、VRを活用したゲームなど、最新技術を取り入れた、よりリッチなコンテンツへと進化していくことが期待されます。

今後、日本が「GameFi大国」になる可能性とは

これまでの内容を踏まえ、GameFiの今後の可能性について見ていきましょう。

スマートフォンゲームのプレイ人口と1人当たりの支出額を見ると、新たな金融価値を生み出す仕組みとして登場したGameFiは、NFTゲームの発展とともに市場規模も大きくなることが予想されます。「ファミ通モバイルゲーム白書2021」によれば、ゲームコンテンツ市場は近年、世界全体で急拡大しており、中でもアジアは急激な成長率を記録しています。日本でもコロナ禍による巣ごもりの影響もあり、2020年の国内ゲーム市場規模は2兆円を突破。国内ゲームプレイヤー人口は前年比約110%の5,273万人となりました。多くのゲームメーカーとゲームプレイヤーを抱える日本が、今後、GameFi大国になる可能性は大いに考えられます。

GameFiには未来の成長を期待できる一方、本格的な浸透にあたっては課題も存在します。日本における課題は、主に以下の2点でしょう。

1.NFT導入に手間がかかる
専用口座の開設や仮想通貨ウォレットの購入など、煩雑な手続きが必要。

2.NFTに関する法整備が不完全
所有権や著作権など、NFTに関する法整備が不十分。ゲーム上で獲得したアイテムの転売や有償ガチャ(ゲーム内のアイテムをランダムに獲得できる仕組み)などの行為が賭博罪にあたる可能性や、NFT化されたゲームアイテム等の無料配布キャンペーンが景品表示法に抵触する恐れも。

日本でNFTゲームを発展させるには、こうした障壁をいかにクリアするかがカギになりそうです。

GameFiのエコシステムに見るNFTビジネスの可能性

さてここからは、GameFiがゲーム業界の仕組みやエコシステム(収益化のための業界構造)を将来的にどのように変え得るかを考察していきます。まずはGameFiを取り巻くエコシステムを見ていきましょう。

先述した「P2E」と「スカラーシップ」の2つのモデルを中心にしたエコシステムでは、バリューチェーンの上流から下流までさまざまなレイヤーが存在します。1つのレイヤーに特化した事業者もいれば、複数のレイヤーで事業展開する企業も。ここでは以下3つのレイヤーに分けて、関連事業者をご紹介します。

1.上流のレイヤー
ブロックチェーン、開発プラットフォーム、開発者向けAPIプロバイダーなど、NFTゲームの開発に必要なインフラを整備する事業者。

2.中流のレイヤー
NFTゲームそのものを開発する事業者。

3.下流のレイヤー
ゲーム開発会社にサービスを提供している事業者。スカラーシップを運営する「ギルド」、新しい仮想通貨プロジェクトが資金を集める場を組織する「ローンチパッド」、複数のNFTゲームを1つのプラットフォームにまとめる「アグリゲーター」など。

ゲームとファイナンスの要素を組み合わせたGameFiは、単に「ゲームで稼げる仕組みが登場した」という表層的な変化にとどまるものではないと考えます。スカラーシップにおけるギルドが、脱中央集権化したフラットな分散型組織であり、関係者全員での利益の共有を目指していることから分かるように、GameFiという潮流そのものがインターネットの民主化を促す「Web3.0」の文脈に沿ったものと言うことができます。

ゲーム業界を支える価値観の根本的な変革は、GameFiの浸透とともに今後、ゲーム業界全体に波及していくかもしれません。それはゲーム会社のエコシステムのみにとどまらず、ユーザー向けサービスを開発する会社やゲーム上に広告を展開する会社、ゲーム内のイベントを企画・実行する会社など、バリューチェーンの上流・中流・下流はもちろんのこと、周辺業界や異業種をも巻き込む大きな変化へと発展するのではないでしょうか。

実際に、2020年にはオンラインゲーム内にて人気アーティストがライブを行い、1,000万人以上が同時参加するなど、現実世界とゲームの世界を連動させた新たな潮流が生まれています。その他、ゲームのキャラクターを演じる声優によるライブイベントや、ゲームキャラクターとコンビニエンスストアとのコラボグッズなども人気です。ゲーム内での各種イベントやコミュニケーションは今後ますます現実世界とリンクし、アイテムショップの棚にゲーム内のアイテムと現実の商品が隣り合わせに並ぶなど、新たな動きが出てくるかもしれません。

また、近年ではGameFi以外にも、NFTに関連したビジネスが続々と誕生しています。NFTの活用例としては、一時期話題になったNFTアートのようなデジタルコンテンツの売買などを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、今ではより幅広い分野でNFTを活用した取り組みが始まっているのです。例えば、NFTはデジタル上のアイテムが「唯一無二のものであること」を証明できるため、所有権の保障や、商品やチケットの真贋検証、重要書類の改ざん防止などに活用できます。実際に日本でも、取り引きをより公正かつスムーズに行うために、不動産をNFT化する試みなどが始まっています。さらには、盆栽や御朱印といった伝統文化にまつわるアイテムをNFT化する動きもあります。

GameFiが注目されるようになった背景には、こうしたNFTビジネスの盛り上がりがあると考えられます。「ゲーム×NFT」がGameFiを実現したように、今後はさらに多様なジャンルで、NFTを取り入れた新しいビジネスが広がっていくのではないでしょうか。

 

NFTやブロックチェーン技術を用いたGameFiは、脱中央集権化したフラットな分散型組織や利益供与のエコサイクルなど、Web3.0文脈に沿った価値観や仕組みによって支えられています。現在は東南アジアなどの新興国で特に人気の高いNFTゲームですが、大手ゲームメーカーやゲームプレイヤー人口の多い日本でもGameFiが広まる可能性は大いにあるでしょう。また、GameFiに代表されるように、NFTはさまざまなビジネスの可能性を秘めています。最新の動向を見ておくことが、今後のビジネスに新たな示唆をもたらしてくれるかもしれません。

 

「move to earn」を始めとしたトレンドワードを知るために、こちらもご参考ください

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Transformation SHOWCASE 編集部

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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