2024/06/25

今話題のマーケティングトレンドワード5:2024年6月

コロナ禍を経て、オーバーツーリズムや物流の2024年問題など、さまざまな課題が浮き彫りになっている昨今。それに関連し、観光の在り方を観光客の立場から問い直す「レスポンシブルツーリズム」や、物流の効率化に向け荷主とドライバーをマッチングさせる「配送マッチング」といったワードが注目を集めています。こうしたトレンドワードをチェックすることで、その背景にある社会状況を理解するとともに、新たなビジネスのアイデアを考えるきっかけにもなるかもしれません。この記事では、今話題のトレンドワードを5つピックアップしてご紹介します。

観光地と観光客の双方に恩恵をもたらす「レスポンシブルツーリズム」

レスポンシブルツーリズム

インバウンドの増加などに伴い注目されている「レスポンシブルツーリズム(責任ある観光)」。観光客が地域の自然や生態系に配慮し、その土地の慣習や住民の生活を尊重することで、持続可能な観光を目指す考え方です。「サステナブルツーリズム」とも似ていますが、観光地側の取り組みだけでなく、観光客により自発的なアクションを求める点で違いがあります。有名なもので、環境破壊につながる日焼け止めを禁止したハワイの例がありますが、日本でも世界遺産を有する白川郷が特設サイトでマナーの実践を呼びかけたことが話題になりました。「レスポンシブルツーリズム」が、マナー向上や、オーバーツーリズムの解消につながれば、より落ち着いた観光ができるなど観光客にもメリットがあります。また、観光客数が減少しても、観光地への入場を有償化するなどの工夫次第では総売上が増える事例も。地方自治体や観光業の方は取り組み方を考えてみてはいかがでしょうか。

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2024年問題解決の一手となるか?荷主と運送事業者を引き合わせる「配送マッチング」

配送マッチング

「配送マッチング」とは、運送車両の空き状況に応じて、荷物を送りたいユーザーとドライバーを、オンラインのマッチングプラットフォームを介して効率的に引き合わせるサービスです。荷主側は必要に応じて柔軟にドライバーを確保でき、ドライバーは空き時間を有効活用できるため、双方にメリットがあります。配送側は運送会社に限らず、個人事業主に特化したサービスもあり、荷主側はアプリなどを利用して手軽に依頼できます。マッチング事業者は、両者がマッチングした際の手数料でマネタイズするのが一般的。ある調査会社のレポートでは、「配送マッチング」の国内プラットフォーム市場は、ドライバー不足やEC利用の増加を背景に、2026年度には470億円規模に成長すると予測されています。「配送マッチング」と検索すると、既に複数のサービス比較サイトもヒットします。まずはユーザーとして体験してみてはいかがでしょうか。

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ブランディングにも影響するこれからの物流の在り方。「リバースロジスティクス」

リバースロジスティクス

「リバースロジスティクス」は、生産者から消費者へという、通常の流れとは反対方向の物流の流れを指します。「静脈物流」とも呼ばれる「リバースロジスティクス」は、返品の回収、不用品の回収、廃棄物の回収の3つに分けられます。返品の回収は、顧客満足度に影響することから以前より注目されていましたが、近年では、サステナブルの観点から不用品や廃棄物の回収が重要性を増しています。例えば、回収した不用品のリサイクルやアップサイクルによる再利用は、SDGsの観点から消費者に評価され、企業イメージやブランディングに影響します。さらには、回収に協力した消費者にポイントを付与することで来店頻度や購入額を増やす事例もあり、「リバースロジスティクス」をマーケティングに活用することも可能です。社会的信頼の獲得、企業価値の向上という点から、自社における「リバースロジスティクス」の可能性を探ってみてはいかがでしょうか。

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Z世代にも差し迫る漠然とした不安。「クォーターライフクライシス」とは

クォーターライフクライシス

「クォーターライフクライシス」とは、人生の4分の1(クォーター)を過ぎる20代後半から30代前半が陥る、漠然とした不安や焦りを抱える時期のこと。類似のキーワードとして人生の成熟期にあたる40~50代が直面する「ミッドライフクライシス」もあります。「クォーターライフクライシス」は、2000年代初頭から浸透し始め、アメリカやイギリスでは一般的な概念として広まっていますが、最近は日本でも多くの若者の共感を集めています。その背景には、社会が複雑化する中で人生の選択肢が増えていること、SNSを通じて他者と自分の置かれた状況を比較しやすくなったことなどがあると考えられます。ある海外の調査では、20代を中心とした若者の7割以上が「クォーターライフクライシス」を経験しているとの報告も。Z世代にも当てはまるこうした心理を認識した上で、それに寄り添う商品開発やプロモーションを考えてみても良いかもしれません。

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問題視される「クィアベイティング」。LGBTQ+の“正しい”尊重に向けて

クィアベイティング

「クィアベイティング(Queer-baiting)」とは、実際には同性愛者やバイセクシャルでないにもかかわらず、性的指向の曖昧さをほのめかすことで、世間の注目を引こうとする手法です。特に、マーケティングにおける悪用が目立っており、LGBTQ+のアイデンティティーを商品化することで、その注目度や話題性の高さを利用する点が問題視されています。もともとは米国のドラマなどで、同性同士の過度に親密な描写が誤解を招く、という批判から生まれた言葉とされます。過去には同様の理由で、世界的ハイブランドの広告や海外アーティストに批判が殺到したほか、日本ではアニメの演出やアイドルのSNSでの言動が「クィアベイティング」ではないかと指摘されたケースも。ダイバーシティの観点から、広告などで性的指向に配慮した表現が増えていますが、センシティブな側面を含むため、表現コンサルなど、専門的なチェックが足りているか、十分な確認が必要になってくるでしょう。

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虹色チェンジメーカー~アライな私になるためのヒント~ ソーシャル・イノベーターに聞く「NEXT社会課題」 対談相手:認定NPO法人 虹色ダイバーシティ代表・理事長 村木真紀氏
今月は、「レスポンシブルツーリズム」「リバースロジスティクス」などサステナブルの観点から注目されているキーワードのほか、6月はLGBTQ+の権利を啓発する「プライド月間」であることから、関連するワードとして「クィアベイティング」も取り上げました。いずれのワードにも共通するのは、企業と消費者の双方がそれぞれの立場で社会的な責任を果たすことの重要性。地球環境や性的マイノリティーの人権を脅かすことがないような経済活動の在り方が問い直されていると言えるかもしれません。そうした視点から、自社のマーケティングやブランディングを考え直したいという方は、ぜひ一度、私たちにお声がけください。