2025/09/17

今話題のマーケティングトレンドワード5:2025年9月

価値観の移り変わりやテクノロジーの進化に伴い、生活者の行動や消費スタイルは大きく変化し、自ら選んだコンテンツや商品・サービスを主体的に楽しむ動きが広がっています。例えば、推しや作品を応援するために自発的につながり、活動や交流を広げる「ファンダム」や、米国で進む動画ストリーミングへの移行を象徴する「コードカット」などがその一例です。こうしたトレンドワードを押さえることは、生活者のインサイトを理解し、効果的なブランディングやマーケティング戦略を立てる上で有効なヒントになります。この記事では、今、注目されるトレンドワードを5つピックアップしてご紹介します。

ファンの熱量が経済を大きく動かす。企業も注目する「ファンダム」

ファンダム

「推し活」が広く浸透する中、あらためて注目されているのが「ファンダム」です。「fan(ファン)」と「dom(領域・集団)」を組み合わせた造語で、アイドルや俳優、スポーツ選手など、特定の対象に強い愛情を持つファンの集まりを指します。最大の特徴は、ファン自身が主体となってコミュニティーを築くこと。SNSを使った情報交換や交流に加え、クラウドファンディングによるセンイル広告の出稿など、新しい手法を取り入れた応援スタイルが広がっています。「ファンダム」は企業にとっても重要な存在であり、二次創作を活用したプロモーションなど、企業と「ファンダム」が共創するファンマーケティングの成功事例が増えています。最近では、動画配信やランキング形式を取り入れたアイドルオーディション番組の盛り上がりを背景に、ますます注目度が高まっている「ファンダム」。この機会に理解を深めてみてはいかがでしょうか。

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変化するテレビの視聴環境。メディア戦国時代を象徴する「コードカット」とは

コードカット

米国のテレビ視聴環境の変化を象徴するキーワードの1つが「コードカット」です。無料の地上波放送が一般的な日本と異なり、米国では多チャンネルを提供するケーブルテレビを有料契約するスタイルが主流でした。しかし、動画ストリーミングの普及により割高なテレビ契約を解除する人が急増し、この解約行動が「コードカット」と呼ばれています。また、そもそも契約経験がない人を指す「コードネバー」など、派生語も誕生。ある調査では、2025年に米国で「コードカット」する人は、5,500万人近くに達すると予測され、こうした潮流を背景に、各動画配信サービスはオリジナルコンテンツや優秀なクリエイターへの投資を強化し、さらなる優位性の確保を図っています。日本でも見逃し配信の利用など、視聴スタイルの多様化が進んでおり、生活者の可処分時間を巡る競争はさらに激しくなるでしょう。米国の動向を参考に、早めの情報収集を進めておきましょう。

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金融の発信者「フィンフルエンサー」がもたらす可能性とリスク

フィンフルエンサー

「フィンフルエンサー」とは、「ファイナンス(金融)」と「インフルエンサー」を組み合わせた造語で、SNSや動画サイトを通じて金融に関する情報を発信し、多くのフォロワーから支持を集める人を指します。扱う内容は、NISAやふるさと納税といった身近なテーマから、暗号資産などの専門的なトピックまで幅広く、海外では既に一定の市場を築いています。難しい金融の話題を分かりやすく解説することで、投資に関心を持つZ世代などの若者層から人気を得る一方、影響力の拡大に伴い、真偽不明の情報の拡散や高リスク商品の推奨など、トラブルや詐欺につながる恐れも指摘されています。こうした状況を受け、証券監督者国際機構(IOSCO)が、実態調査と必要な規制対応をまとめた報告書を公表したことでも注目されました。企業が「フィンフルエンサー」を活用する際は、その適性を慎重に見極め、信頼性の高い情報発信を徹底することが重要です。

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ユーザーを“シェアする”発想。「ポリガマスロイヤルティ」とは

ポリガマスロイヤルティ

近年の研究で、“消費者は特定のブランドに対して長期的に安定したロイヤルティを持つ”という従来の考え方に疑問が呈されています。実際には、多くの消費者が複数のブランドにロイヤルティを持ち、商品やサービスを気分や状況に応じて使い分ける傾向があるとされます。こうした考え方が「ポリガマスロイヤルティ」です。この視点に立つと、マーケティングやブランディングの方向性も見直しが必要になることがあります。例えば、自社ファンを増やすことは必ずしも他社ユーザーを奪うことではなく、むしろユーザーを“共有する”という発想が重要になります。そのため、囲い込み型ではなく、一度離れても再び利用したくなるカテゴリーエントリーポイントの設定や、常連客だけでなく時々利用する層にも使いやすいWebサイト設計などが効果的と考えられます。ユーザーの購買行動を観察し、「ポリガマスロイヤルティ」の視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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失効したドメインが狙われる?巧妙化する「ドロップキャッチ」の手口

ドロップキャッチ

企業や団体が使用していたドメインが失効した後、第三者の手に渡り悪用されることを「ドロップキャッチ」と呼びます。かつて運用されていたドメインは、SEOに強いことで一定のアクセスが見込めるため、広告収入やアフィリエイト目的で転用されたり、ユーザーに個人情報を入力させるなどの詐欺に利用されたりする恐れがあります。「ドロップキャッチ」の手口は年々巧妙化しており、近年ではbotを使い、ドメインの失効直後に自動取得を可能とした業者も存在しています。また、取得後はQRコードを経由して誘導するなど、悪用の発覚を遅らせる手法も見られます。さらに、失効したドメインがオークションで売買される事例もあり、有効な対策が打ち出せていないのが現状です。企業としてはドメインの管理を徹底し、使用しなくなった場合でも安易に手放さず、検索エンジンへの削除を依頼するなど、最後まで責任を持ってドメインの“終活”を行うことが重要です。

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今回は、マーケティングやブランディングのヒントとなるキーワードを中心にご紹介しました。生活者の可処分時間をどう獲得するかが重要性を増す中、「ポリガマスロイヤルティ」に代表されるように、ユーザーを囲い込むのではなく共有するという新しい発想も登場しています。一方で、「フィンフルエンサー」や「ドロップキャッチ」に見られるような、詐欺や個人情報流出といったリスクも無視できません。こうしたリスクを踏まえ、管理体制を強化することも同時に求められます。生活者の変化に即したブランド戦略を検討中の方は、ぜひ私たちにご相談ください。