2025/05/16

今話題のマーケティングトレンドワード5:2025年5月

環境意識の高まりとともに、ビジネスの現場でも持続可能な社会の実現に向けたさまざまな取り組みが進められています。食べられるのに捨てられてしまう製造過程の廃棄物「隠れフードロス」の削減、鉄の製造時に発生するCO2を抑える「グリーンスチール」、船舶を解体して資源を再利用する「シップリサイクル」など、サーキュラー・エコノミーを通じて環境負荷を軽減する新たな技術や取り組みに注目が集まっています。こうしたトレンドワードに目を向けることで、新たなビジネスのヒントが見つかるかもしれません。この記事では、今話題のトレンドワードを5つピックアップしてご紹介します。

フードロスの陰に潜む問題。対策が求められる「隠れフードロス」

隠れフードロス

世界的な社会課題となっているフードロス。近年はサステナブルな意識の高まりを背景に対策が進み、2020年度には日本でフードロスの量が推計開始以降で最も少なくなるなど、一定の成果が見られています。しかし一方で対策の遅れが指摘されているのが「隠れフードロス」です。これは、食品加工の過程で出る端材や残さ、規格外の農産物といった食品廃棄物を指し、その量は通常のフードロスの約3倍に上るとされています。「隠れフードロス」は、消費者や企業単位の努力では解決が難しく、サプライチェーン全体での取り組みが求められる課題です。最近では、加工時に出る端材を新たな原料としてアップサイクルしたり、規格外野菜や果物などを活用して地域の特産品を開発したりと、新たなアプローチが広がりつつあります。食のサーキュラー・エコノミー実現に向けて、自社でどのような関わり方ができるか、一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。

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鉄鋼業界におけるカーボンニュートラルへの挑戦「グリーンスチール」

グリーンスチール

カーボンニュートラル実現に向けて欠かせないのが、鉄鋼業界の脱炭素化です。日本では、鉄鋼業によるCO2排出が全産業の37%(2020年時)を占めるとされており、大きな社会課題となっています。そこで注目を集めるのが、CO2排出を抑えた方法で製造されたサステナブルな鉄「グリーンスチール」です。CO2は高温に熱した高炉を使用することで大量に発生するため、水素を使った製鉄法などの脱炭素技術に切り替えることで、排出量の削減が進められています。商用化にはまだ課題が残るものの、欧州を中心に供給体制の強化が進んでおり、日本でも複数の大手鉄鋼メーカーが新技術の研究開発を進めるなど、今後の普及が期待されています。国際エネルギー機関(IEA)によれば、2070年には製造される鉄のほとんどが「グリーンスチール」になるとの予測も。鉄鋼業界のGXをけん引する施策として、「グリーンスチール」の今後の動向に注目しましょう。

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2025年6月施行。安全と環境に配慮した船体リサイクルの潮流

シップリサイクル

船舶・海運業界でも高まっているサステナブルの機運。中でも最近注目されている「シップリサイクル」は役目を終えた船舶を解体し、得られた資源を再利用することを指します。「シップリサイクル」に注目が集まる背景には、2025年6月に発効される「シップリサイクル条約」の影響があります。これまで船舶の解体は、労働や廃棄コストの安い開発途上国を中心に行われ、労働災害や環境汚染が深刻な問題となっていました。「シップリサイクル条約」では、こうした状況の改善を目指し、船舶解体をより安全かつ環境に配慮した形で行うことが求められます。この規制強化により「シップリサイクル」の停滞を懸念する声もある一方で、途上国での体制整備と併せて良質な鉄を含む船舶のリサイクルを国内で進める動きもあり、これが環境配慮と資源循環の観点から新たなビジネスチャンスになり得るとも言われています。世界的な潮流の1つとして、注目しておきましょう。

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未活用の壁が広告やアートに。街を彩る「空き壁」活用の可能性

空き壁

3D広告が台頭し、屋外広告の価値が見直されている昨今、新たな屋外広告の1つとして熱い視線が注がれているのが「空き壁」です。「空き壁」とは、その名の通り、街中にある未活用の壁面を指し、それらを活用した広告展開が注目を集めています。例えば、アーティストの作品と連動したウォールアート広告を掲出する取り組みは、広告主の企業だけでなく、壁の所有者は広告収益を、アーティストは作品を発表する場を得ることができる、三方良しのモデルといえます。「空き壁」の活用は、壁面緑化と同様に落書きの防止や街の美化にもつながるほか、ロンドンやベルリンのようにストリートアートが観光名所となるような、地域活性化の効果も期待されています。このように、単なる広告にとどまらず社会的な意義も大きい「空き壁」。シェアリングエコノミーによる新たな屋外広告の形として、活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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DOOHの現在地~その進化と、コロナ禍を超えた展望について~(前編) デジタル時代におけるチラシのポテンシャル。「チラSeeCycle」が変えるメディアプランニングの形

従業員同士のつながりで働きやすい職場をつくる組織「ERG」とは

ERG

「ERG」は、「Employee Resource Group(従業員リソースグループ)」の略で、人種や障害、ジェンダーなど共通の特性や価値観を持つ従業員が自主的に集まり、働きやすい職場づくりを目指して活動する組織です。「女性の活躍推進」や「子育てと仕事の両立」などさまざまなテーマについて意見交換を行い、職場環境の改善や制度に関して企業へ提言するといった活動を展開します。労働組合にも似ていますが、「ERG」は企業との団体交渉権を持たない点などに違いがあり、ダイバーシティ経営の促進、それに伴う従業員の定着率アップなど企業にとっても多くのメリットがあるため、人的資本経営の観点からも注目されています。コロナ禍で希薄化した従業員同士のつながりを補う人事施策としても期待されており、現在、メーカーや金融業などの大手企業を中心に導入が進んでいます。自社に合った活用の形を模索してみてはいかがでしょうか。

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「障がい者雇用」がもたらすもの~パラスポーツのトップランナーが導く共生社会~ 人事は今が変革期。トータルHRソリューション「HUMAnalytics」がかなえる“攻めの人事”(前編)
今月は、“環境”保全にまつわる注目キーワードを中心にご紹介しました。地球環境への配慮だけでなく、労働環境の改善もまた、今企業が向き合うべき重要なテーマの1つです。途上国における労働災害や人権問題への対応、そして多様な価値観を尊重しながら働きやすい職場を築く「ERG」のような取り組みも、これからの企業経営に欠かせない視点となっていくのではないでしょうか。サーキュラー・エコノミーの実現や、企業価値を高めるための仕組みづくりに課題を感じている方は、ぜひお気軽に私たちにご相談ください。